研究課題/領域番号 |
23K04760
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
吉田 雅紀 旭川工業高等専門学校, 人文理数総合科, 教授 (30322829)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 有機触媒 / 不斉合成 / アルキル化反応 / 有機合成 |
研究開始時の研究の概要 |
基質としてα位分岐型アルデヒドおよびケトンを用い,第一級α-アミノ酸触媒によるエナミン型有機触媒反応を行う。反応系中で発生したエナミンに対する求電子剤としてハロゲン化アルキルを作用させ,シンプルなベンジル基やメチル基,エチル基をはじめ,官能基を持つアルキル基なども導入し,アルキル化生成物を高収率(収率85%以上)で得るとともに,不斉四級炭素を高エナンチオ選択的(95% ee以上)に合成する計画である。
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研究実績の概要 |
不斉四級炭素の高エナンチオ選択的な合成は,有機合成において今なお開発が必要な技術であり,不斉触媒反応の開発が望まれている。その一つの方法として,光学活性なアミンを不斉触媒として用いα位分岐型アルデヒドやケトンからエナミンを発生させ,求電子剤と反応させてα-アルキル化を行う不斉有機触媒反応があげられるが,求電子剤としてハロゲン化アルキルを用いることはこれまで困難であった。この反応が実現できれば,既知法と合わせてさらに多様な構造の不斉四級炭素の合成が可能になる。令和5年度は,筆者らの経験からα位分岐型アルデヒドの中でも第一級アミノ酸およびその塩を触媒として用いたイミン-エナミン型の不斉求核付加反応が進行しやすいことが分かっている2-フェニルプロピオンアルデヒドを基質とし,臭化ベンジルへの求核置換反応によるアルキル化反応を試みた。これまでに筆者らはハロゲン化アリルを用いた同様のアルキル化反応を報告しており,様々なα位分岐型アルデヒドとハロゲン化アリルからアルキル化生成物を高収率(~87%)かつ高エナンチオ選択的(~96% ee)に得ることに成功している。まずは同様の条件を用いて反応を試みたところ,幸先よく目的生成物を高エナンチオ選択的に得たものの,収率は中程度に留まることが分かった。以降,収率およびエナンチオ選択性を向上させるべく,詳細に条件検討を行ってきたが,これまでのところ結果の大幅な改善には至っていない。この条件検討が本研究課題を成功に導くもっとも重要なステップであると考えているため,現在,さらに詳細に条件検討を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基質として2-フェニルプロピオンアルデヒドを用い,臭化ベンジルへの求核置換反応によるアルキル化反応を試みた。触媒としてL-セリンから誘導した嵩高いアミノ酸を合成し条件検討に用いた。このアミノ酸はハロゲン化アリルを用いたアルキル化反応において優れた不斉有機触媒となることが分かっている。水-t-ブタノール混合溶媒中,塩基として炭酸水素カリウム,添加剤としてヨウ化カリウムとヨウ化テトラブチルアンモニウムを加え,0℃で24時間反応させたところ,目的のベンジル化生成物が収率40%,エナンチオマー過剰率89% eeで得られた。さらに収率およびエナンチオ選択性を向上させるべく,触媒であるアミノ酸のスクリーニング,溶媒や塩基,添加剤,反応温度,反応時間等の反応条件を変化させ詳細に検討してきた。本課題の研究計画では,令和5年度中に2-フェニルプロピオンアルデヒドを用いた臭化ベンジルによるアルキル化反応の条件検討の後,様々なα位分岐型アルデヒドの基質検討を終え,他のハロゲン化アルキルを用いたα位分岐型アルデヒドのアルキル化反応を開始する予定であったが,収率の改善に時間を要しており,現在はまだ,最適な反応条件を探索している途中である。したがって,研究の進捗状況は計画よりやや遅れていると判断した。ただし,収率が中程度ではあるものの臭化ベンジルを用いた2-フェニルプロピオンアルデヒドのエナミン型有機触媒反応によるアルキル化反応がエナンチオ選択性に進行したことは注目に値するため,その成果を第16回有機触媒シンポジウムにて報告した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで研究を続けてきたところ,反応時間を延ばしていっても基質が完全に消費しないケースが多くみられることから,反応系中で触媒が失活している可能性があると考えている。また,反応混合物を薄層クロマトグラフィーで分析すると多数の生成物によるスポットが確認されている。今後はガスクロマトグラフィーを活用した反応の追跡により,反応基質の消費速度と目的生成物の生成速度を測定すること,令和5年度に導入した低温恒温反応装置が備える自在な調温機能を利用することなどにより,反応速度の改善と目的生成物の収率向上に取り組んでいく。全体的な研究の進行状況は当初の計画よりもやや遅れているものの,目的の反応を進行させることには成功していることから,今年度も計画に沿って実験を行い研究を進めていく。得られた結果をもとに今年度後半には様々なアルデヒドやハロゲン化アルキルを用いた基質検討へと展開する予定である。また,令和7年度の研究期間終了までにα位分岐型ケトンを用いたアルキル化反応まで計画通りに行う予定である。
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