研究課題/領域番号 |
23K04762
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
武田 亘弘 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80304731)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | PS3S3型配位子 / SiS3S3型配位子 / パラジウム錯体 / ロジウム錯体 / イリジウム錯体 / 白金錯体 / 金錯体 / 七座二階建て配位子 / チオエーテル配位子 / 二核金属錯体 / 触媒 / シリル配位子 |
研究開始時の研究の概要 |
遷移金属-遷移金属結合の化学に関しては,その構造や性質に興味が持たれるだけでなく,クラスターの化学の観点からも注目され,多くの研究が行われている。本研究では,新規ES3PnS3-n ((E = P, Si; n = 0-3) 型七座二階建て配位子を合成し,これらの配位子を用いることにより二核遷移金属錯体を合成することを目的とする。そして,これらの新規錯体の反応性や触媒活性を明らかにする。さらに,目的の錯体がCO2, N2, O2, H2などの小分子と反応することを期待しており,「空気を原料とした有機合成」の実現に大きく寄与するものと考えている。
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研究実績の概要 |
本年度はまず,既に合成に成功しているPS3S3型配位子 P(C6H4-2-SCMe2SPh]3 (1) を有する二核遷移金属錯体の合成について検討を行った。 PS3S3型配位子 (1) と2当量の[Pd(dba)2], [Pd(PPh3)4]との反応によるパラジウム二核錯体の合成を検討したところ,いずれの場合にも,反応混合物の31P NMRスペクトルにおいて20 ppm付近に複数のピークが観測され,複数のパラジウム錯体の生成が示唆された。しかし,生成した錯体の単離・構造決定には至らなかった。また,[RhCl(cod)]2, [IrCl(cod)]2との反応も検討したが,これらの場合にも,反応混合物の31P NMRスペクトルにおいて,ロジウム錯体との反応では60 ppm付近に,イリジウム錯体の反応では85~90 ppm付近に対応する錯体に由来すると考えられるピークが複数観測された。そして,これらの場合にも生成した化合物の単離・構造決定には至らなかった。 さらに,SiS3S3型配位子前駆体 HSi(C6H4-2-SCMe2SPh]3 (2) と金属錯体試薬,[AuCl(SMe2)], [RhCl(cod)]2, [IrCl(cod)]2, [Pd(dba)2]との反応による二核遷移金属錯体の合成について検討を行ったが,いずれの場合にも,混合物の1H NMRスペクトルにおいて,遷移金属ー水素結合を有する錯体が複数生成していることが示唆された。しかし,生成した化合物の単離・構造決定には至らなかった。また,SiS3S3型配位子前駆体 (2)と[Pt(PPh3)4]との反応では,少量のPt-H結合を有する錯体の生成が反応混合物の1H NMRにおいて確認されたが,その単離・構造決定には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,PS3S3型配位子 P(C6H4-2-SCMe2SPh]3 (1)およびSiS3S3型配位子前駆体 HSi(C6H4-2-SCMe2SPh]3 (2) とロジウム,イリジウム,パラジウム,白金,金の錯体との反応により二核遷移金属錯体の合成について検討を行った。いずれの場合においても,複数の遷移金属錯体の生成が示唆されたが,生成した錯体の単離・構造決定には至らなかった。研究計画では,本年度の研究でPS3S3型配位子やSiS3S3型配位子を有する二核遷移金属錯体を合成し,その反応性や触媒活性を明らかにする予定であったため,計画はやや遅れていると考えている。しかし,遷移金属錯体の生成を示唆する結果は得られており,目的の二核遷移金属錯体,またはその前駆体となり得る錯体が生成している可能性があると考えている。 一方,遷移金属錯体はカラムクロマトグラフィー等の分離操作により分解してしまうことが多く,再結晶以外の精製法を用いることは難しい。そのため,複数の遷移金属錯体が生成してしまうと,その単離は極めて困難である。遷移金属錯体の単離・構造決定を行うためには,反応温度や溶媒などの反応条件や用いる遷移金属錯体試薬を検討して,目的の錯体を定量的に発生させる必要があり,さらなる合成条件の検討が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度も引き続き,PS3S3型配位子 P(C6H4-2-SCMe2SPh)3 (1)およびSiS3S3型配位子前駆体 HSi(C6H4-2-SCMe2SPh]3 (2)と種々の金属試薬の反応による二核遷移金属錯体の合成について検討を行う。具体的には,PS3S3型配位子(1)とAgX (X = BF4, OTf, ClO4, etc), [Au(SMe2)]OTfなどとの反応やSiS3S3型配位子前駆体 (2)と[RhCl(coe)2]2, [Rh(cod)2]BF4などとの反応について検討を行う。 また,PS3P3-2Sn配位子P(C6H4-2-SCMe2SPh)n(C6H4-2-SCH2PPh2)3-n (n = 1,2)やSiS3P3-2Sn配位子前駆体HSi(C6H4-2-SCMe2SPh)n(C6H4-2-SCH2PPh2)3-n (n = 1,2) の合成についても検討を行う。これらの配位子では,チオエーテル部位よりも強い配位能を持つと考えられるホスフィン部位をより多く有するため,より安定な錯体の形成が期待できる。
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