研究課題/領域番号 |
23K04764
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
山口 佳隆 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (80313477)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | ニッケル錯体 / 3座ピンサー型配位子 / コフェイシャル型複核錯体 / 金属錯体触媒 / 3座ピンサー型錯体 / 複核錯体反応場 |
研究開始時の研究の概要 |
金属錯体触媒の開発は有機合成化学の持続的な発展に必要不可欠な研究課題である。本研究課題では,高活性な3座ピンサー型ニッケル錯体を基盤として用い,近接した位置に配置されたコフェイシャル型複核錯体の開発を目的としている。近接した二つの金属間での有機基質との相互作用により,単核錯体では実現不可能な基質変換反応が期待できる。本複核錯体を触媒として用いた不活性結合の切断を伴う炭素-炭素結合生成反応やヒドロメタル化反応を利用したカルボン酸や二酸化炭素の還元反応の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
3座ピンサー型ニッケル(II)錯体は平面4配位構造の16電子錯体を形成し,3座型配位子のキレート効果による高い熱安定性と配位不飽和性に基づく反応場創出が期待できる。申請者らはこれまで,アセチルアセトンと配位部位を有する第1級アミンから合成できる3座ピンサー型配位子を開発し,そのニッケル(II)錯体に関する系統的な研究から触媒反応における配位子骨格が与える影響を明らかにしてきた。そこで本研究では,剛直なスペーサーに対して二つの3座ピンサー型ニッケル(II)フラグメントが結合した複核錯体を創製し,二つの錯体平面が創り出すコフェイシャルな金属空間における基質との特異的な相互作用による複核錯体反応場の構築を目的としている。 目的の複核錯体を合成するため,スペーサーとして9,9-ジメチルキサンテンを出発原料として用い,2段階の反応によりジメチルキサンテンの4位と5位にアセチルアセトンが結合した配位子原料を合成した。続いて,配位部位を有する第1級アミンとの反応により,配位子前駆体の合成を検討したが,目的の配位子を得るには至らなかった。今後,種々の第1級アミンを用いるとともに,反応条件等の更なる検討を行う予定である。 3座ピンサー型配位子における置換基修飾が触媒活性に及ぼす影響を検討するため,新規単核錯体を合成した。その結果,電子供与性置換基を有するジケトン骨格を用いることで,ビアリールクロスカップリング反応において高い触媒活性を示した。さらに,ピンサー型配位子の3座目の配位部位であるホスフィノ基の置換基を検討したところ,電子的な要因よりも立体的な要因が触媒活性に大きく影響することがわかった。これらの知見を複核錯体合成にフィードバックすることを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
複核錯体を構築するために必要な配位子前駆体の合成を検討した。スペーサーとして9,9-ジメチルキサンテンを用いて4,5-ジホルミル体に誘導した後,トリメチルホスファイトとジアセチルから得られる2,2,2-トリメトキシ-4,5-ジメチル-1,3-ジオキサホスホレンとの反応によりビス(アセチルアセトン)体の合成に成功した。次に,3座目の配位部位として機能するアミノ基やホスフィノ基を有する第1級アミンとの反応による配位子前駆体の合成を検討したが,目的配位子の合成には至らなかった。そこで用いる第1級アミンや反応条件等,種々検討したが,期待される生成物は得られなかった。これらの反応において目的生成物が得られない要因を調査したところ,スペーサーとして用いたジメチルキサンテン骨格の分解を示唆する結果が得られた。 スペーサーとしてジベンゾフランを用いて配位子前駆体の合成を検討したが,目的配位子の合成には至らなかった。今後はスペーサーとして用いる化合物の検討を行うとともに,反応条件等についても検討を行い,配位子が合成でき次第,複核錯体合成を行う。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画を遂行するためには,コフェイシャル型複核核錯体を構築するための配位子合成の達成が必要不可欠である。初年度の検討では,スペーサーとしてジメチルキサンテンやジベンゾフランを用いた場合,第1級アミンとの反応でスペーサー骨格の分解が示唆された。そこでより温和な条件での反応を行うため,トリメチルオキソニウム試薬を用いたカルボニル基の活性化による目的配位子の合成を検討する。さらに,スペーサーとしてアントラセン類を用いた配位子合成を検討する。 本研究課題では,3座ピンサー型配位子骨格を活用した複核錯体反応場の構築に主眼に置いているが,初年度の検討から目的配位子の合成が困難であることも想定される。そこで3座ピンサー型配位子骨格に限定するのではなく,2座配位子骨格を導入したコフェイシャル型複核錯体の合成も視野に入れて研究を進める。2座型配位子であっても,二つの金属フラグメントがスペーサーにより連結されることで,二つの金属に挟まれたコフェイシャル型の反応場空間を構築することが可能であると考えられる。コフェイシャル型複核錯体を触媒として用いた基質変換反応を検討し,単核錯体とは異なる効率的・選択的な基質の結合切断・形成反応へと展開する。
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