研究課題/領域番号 |
23K04769
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
林 実 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (20272403)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | ホスフィン / 環状化合物 / 大環状ホスフィン / ホスフィン錯体 / 立体特異的合成 / 大環状化合物 / 配位子 / 錯体 / 触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
大環状ホスフィン化合物は、環状の特定位置・方向に配位元素であるリン原子を配することで特異な配位環境を構築でき、その環状構造と併せて、錯体化学・触媒化学・分子認識・超分子化学への応用などが期待できる興味深い化合物であるが、立体選択的な合成が困難で僅かな例しか報告がなかった。 本研究では、申請者らが開発した有機ホスフィンの汎用合成法および立体選択的合成法を駆使して、これまでに合成が困難であり研究対象とならなかった様々な分子骨格構造・側鎖置換基を有する大環状ホスフィン化合物を効率的に合成し、錯体化学・触媒化学・超分子化学への応用を通して未開拓の大環状ホスフィンの化学を確立を目指す。
|
研究実績の概要 |
本年度の研究計画に従い、大環状ホスフィン化合物の連結部位の芳香環の構造を変えた誘導体の設計と合成から研究を開始した。連結部位にも配位可能な元素を配置すべく、ピリジン環の3,5位(モデル化合物同様のメタ配置に相当)で連結した大環状ホスフィン化合物の合成を目指して検討した。まず、我々の研究室で確立された大環状ホスフィン化合物の立体特異的合成手法を適用すべく、合成に必要な5-ブロモ置換ピリジル基を有する光学活性環化前駆体の合成を検討した。その結果、5-ブロモ置換ピリジル基を有するホスフィンスルフィドのリパーゼ触媒不斉アセチル化は高い選択性で進行し、合成に必要な光学活性前駆体を問題なく得ることに成功した。こうして得られた前駆体からの環化反応をモデル化合物と同様の条件で行うと、残念ながらほとんど環化生成物が得られないという予想外の事象に遭遇した。この事象の原因を追求すべく、同等の前駆体のラセミ体からの環化反応を同条件下で行うと、問題なく環化生成物が(ジアステレオマー混合物として)得られることを確認した。すなわち、このPd触媒P-Cクロスカップリングによる環化反応では、連結部位の配位元素の影響により、同一の立体配置を持つリン前駆体の環化が不利であることが明らかとなった。一方、立体特異的合成において、わずかに得られた大環状ホスフィン化合物については、環サイズ毎のGPCによる分離精製に成功し、その31P NMRスペクトルにおいて、ほぼシングレットピーク1本のスペクトルを示したことから、期待通り対称性の高い構造の大環状ホスフィン化合物が得られていることが明らかとなった。本年度の研究により、連結部位の構造によって合成に支障が出ることが明らかとなったため、今後の分子設計と目指す大環状ホスフィン化合物の構造設計を見直し、適切な構造の分子を用いた応用展開を行うための準備にとりかかっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初計画通り、複数の配位座を有する大環状ホスフィン化合物の分子設計と合成に着手し、必要な前駆体の合成に成功している他、予想外の困難に遭遇したとはいえ、大環状環化反応でわずかに得られた大環状ホスフィン化合物の単離精製に成功し、極めて対称性の高い化合物が得られていることを見出している。また、設計した分子の立体特異的合成の大環状環化反応がうまくいかないにも関わらず、ラセミ体からのジアステレオマー混合物合成は問題なく進行することを明らかにしており、これが立体特異的合成の基質依存的な本質的問題であることを明らかにしている他、来年度以降の検討に必要な解決策と今後の展開方向を導き出すに至っており、概ね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
連結部位に配位可能な元素を配置すべく、ピリジン環の3,5位(モデル化合物同様のメタ配置に相当)で連結した大環状ホスフィン化合物の合成を目指して検討した結果、合成に必要な5-ブロモ置換ピリジル基を有する光学活性環化前駆体の合成には成功したものの、この前駆体からの環化反応をモデル化合物と同様の条件で行うと、ほとんど環化生成物が得られないという予想外の事象に遭遇した。すなわち、連結部位の構造によって合成に支障が出る可能性があることが明らかとなった。 本年度の検討により、ピリジル連結型大環状ホスフィン化合物の立体特異的合成に問題があることが明らかとなったため、この問題を回避すべく、(1)連結部位を変えた化合物の合成、(2)モデル大環状ホスフィン化合物のホスフィン上への配位置換基の導入、(3)立体異性体のない対称ホスフィン酸型化合物への変換、の3点を考慮して検討を続けていく予定である。 (1)では、環の大きさを変えた2,7-ナフチル連結型大環状ホスフィン化合物、及び、ベンゼン環メタ位連結型分子のベンゼン環上に水酸基を有するフェノール連結型大環状ホスフィン化合物を設計しており、今後前駆体合成から立体特異的合成について検討する。 (2)では、既に合成済みの、リン原子上が変換可能な置換基を有するモデル大環状ホスフィン化合物に対して、我々が開発したP-Cクロスカップリング等の変換反応を行って配位置換基を導入する方法で新分子への誘導を狙い、新たにプロジェクトに参加する学生が担当する。 (3)については、立体特異的合成が必要ない形の化合物への変換を通して、新たな大環状ホスフィンの化学を展開する予定である。
|