研究課題/領域番号 |
23K04773
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
亀田 恭男 山形大学, 理学部, 教授 (60202024)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 分子間相互作用 / 分子内構造 / 液体・溶液 / 中性子回折 / X線回折 / 液体 / 分子内電子分布 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、高精度のX線および中性子回折データを組み合わせた解析を行う事により、溶液化学分野で現在未解決問題の以下の2点について明らかにする。 ① 分子間相互作用が分子内電子分布に及ぼす影響を実験から直接明らかにする。 ② 分子間相互作用が分子内原子間距離、結合角に及ぼす影響を実験から明らかにする。
|
研究実績の概要 |
令和5年度は、液体、溶液中の分子間相互作用が有機溶媒分子の分子内構造に及ぼす影響を実験から直接明らかにする目的で、メタノール、アセトニトリル(AN)およびジメチルホルムアミド(DMF)の純粋な液体およびリチウム塩を含む濃厚溶液に対して中性子回折実験を実施した。中性子回折実験は、高強度パルス中性子を線源とする飛行時間法により実施し、広い散乱ベクトル空間にわたる散乱データを取得した。観測された全干渉項の高Q領域のデータに注目して最小二乗法解析を行う事により、リチウムイオンとの相互作用に関わるメタノール分子の水酸基(O-D)、アセトニトリルのニトリル基(CN)およびDMFのカルボニル基(C=O)の各原子間距離rijを精密に決定する事に成功した。これ等の分子内の結合に対応する伸縮振動数νijは原子間距離rijと密接な関係があり、気体、純粋な溶媒結晶、各種金属錯体中で観測されている文献値とともにプロットする事により、dνij/drijの値を初めて求める事ができた。メタノール分子についてdνOH/drOD = -(17000 ± 3000) cm-1Å-1、アセトニトリル分子についてdνCN/drCN = -(7000 ± 3000) cm-1Å-1、DMF分子についてdνCO/drCO = -(3400 ± 1600) cm-1Å-1を実験から直接求める事に成功した。水溶液中におけるNi2+の第1水和殻に存在する水分子の酸素-水素伸縮振動数は非常に低い事が報告されている。Ni2+の第1水和殻に存在する水分子の酸素―水素原子間距離が実際に長い事を中性子回折実験により本研究で初めて明らかにした。これ等の研究成果は、国内楽器および国際学術誌に論文として既に公表している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画どおり、中性子回折実験およびX線回折実験を実施、分子内構造を精密に解析するためのデータ解析システム(分子構造をZマトリクス座標で表し、最小二乗法解析を実施するプログラム等)を開発し、純液体および溶液中における分子内構造の精密決定法を確立した。既に、重水、メタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド溶液について構造解析を実施し、その結果は国内学会、査読付き国際学術誌で既に公表している。当初の計画以上に研究は進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、飛行時間法中性子回折実験により得られた、広い散乱ベクトル範囲にわたる高精度の散乱データの解析により、数/1000Åの精度で液体中の分子内構造を決定可能である事が示された。各種液体アルコール中における分子間水素結合が分子内構造、特に水酸基のO-H(D)原子間距離に及ぼす影響を、実験から直接明らかにする。既に、重水素化メタノール、重水素化エタノール、重水素化2-プロパノール、重水素化t-ブタノール、重水素化エチレングリコールの中性子回折実験は完了しており、現在データ解析中である。さらに、X線回折データも取得して分子間水素結合構造に関する新しい構造情報を得る。前年度に中性子およびX線回折データを取得した液体シクロヘキサンについて、液体中における分子内電子分布に関する情報を得るためのデータ解析を進める。
|