研究課題/領域番号 |
23K04776
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
菊川 雄司 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (10637474)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ポリオキソメタレート / ホストーゲスト / バナジウム |
研究開始時の研究の概要 |
限りある資源を有効に利用するため、原子効率の高い材料を分子レベルで開発することは重要である。アニオン性バナジウム酸化物クラスターであるポリオキソバナデート(POV)は、分子構造に起因する特異的な特性を持つ。POVの性質をファインチューニングするために、バナジウムの酸化状態制御、金属置換、対カチオン交換、半球の拡張を行う。本研究を通してPOVの化学を発展させるだけでなく、複合酸化物などで機能構造に貢献することが多いバナジウムの役割について分子レベルで知見を増やすこと目指す。
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研究実績の概要 |
限りある資源を有効に利用するため、原子効率の高い材料を分子レベルで開発することは重要である。アニオン性バナジウム酸化物クラスターであるポリオキソバナデート(POV)は、分子構造に起因する特異的な特性を持つ。POVの性質をファインチューニングするために、バナジウムの酸化状態制御、金属置換、カチオン交換、半球の拡張を行う。本研究を通してPOVの化学を発展させるだけでなく、複合酸化物などで機能性構造に貢献することが多いバナジウムの役割について分子レベルで知見を増やすこと目指している。 本年度は、球状POVの金属置換体の合成に世界で初めて成功した。類縁体の間で触媒反応性が異なることを見出した。二つのVO5四角錘の部位を2つのCuO4四角形で置換したPOMは複雑な酸化還元反応を必要としないPOVの新規合成経路の開発により達成された。1-フェニルエタノールの酸化反応において、オリジナルの化合物はアルコールの酸化反応がほとんど進行しないが、銅に置換した化合物は良好に反応が進行し、アセトフェノンを与えることが明らかとなった。類縁体の間で構造の違いは2か所のVO5四角錘がCuO4四角形に置換しただけであるため、銅に置換された部位が活性を示すことが明らかとなった。 また、酸化数が異なるPOVの合成にも成功し、触媒と用いた時の反応性、選択性が大きく異なることが明らかとなった。一つのPOVの中にもたくさんのバナジウムの化学的環境が存在するため、POVの活性に関する知見を得ることは簡単ではなかったが、構造類縁体を用いて詳細に反応性を検討することで、活性点として働くサイトを特定するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ポリオキソバナデート(POV)の①バナジウム酸化数制御、②構成元素の置換、③カチオン交換、④POVの半球入口の拡張について検討している。3年の研究計画のうち、①の酸化数制御と②の構成元素の置換について1報の論文が掲載され、1報の論文が査読中である。POVに関する成り立ちを含め、構造の安定性、内部のゲスト分子との相互作用を含めた重要な知見が得られ、今後の研究が発展的に進めていくことができる準備ができた。 1月1日の能登半島地震により、片づけ、復興が十分には進んでいないため、加速度的に研究を遂行するまでには至らなかったが、おおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は球状POVの酸化数制御まで達成できた。四角錘底面方向の静電相互作用の強さについて酸化数の違いに注目して研究をまとめる。半球状POMの酸化数制御ができれば、ホストーゲスト化学において新しい知見を与えることができると考えられる。半球状POMの反応場としての活用についてもゲスト分子を活性化させた状態を作りだすことで効率的に進行させることができる可能性がある。特異的な反応場としての知見を増やしていくことで有用性を実証していく。 本年度得られたPOMの精密合成に関する知見を活かし、これまでにない発想で新規POVの合成が可能であると考えられる。発展的な研究展開として次年度以降検討を進めていく。具体的にはPOVの合成には、中心に存在するアニオンのテンプレート効果と、POV自体が縮合時に取りやすい(熱力学的に安定な)構造の二つのポイントがあると考えられる。POVの合成メカニズムには不確かなものがあるが、合成条件の精密な制御でPOV合成の核になるような知見を与えることができると考えている。
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