研究課題/領域番号 |
23K04780
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
神谷 昌宏 北里大学, 理学部, 講師 (40758447)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 鉄錯体 / 触媒 / シラン / 脱水素カップリング / シリレン / 反応中間体 / 触媒活性種 / スピン禁制 / ヒドロシリル化 / C-H活性化 / スピン禁制反応 |
研究開始時の研究の概要 |
当グループで独自に開発したPNNピンサー配位子は低スピン、高スピン両方の低原子価鉄錯体を安定化し、両スピン状態を含む触媒反応であるスピン禁制反応に対して高い触媒性能を示す。本研究では、上記配位子による安定化を利用し、反応系中に生じる鉄錯体(中間体)を合成、単離する。これまで単離例の少ない鉄錯体の構造、電子状態、反応性を実験・計算の両面から明らかにし、電子状態の変化と触媒作用との関係性を推定する。最終的にはマンガン、コバルト等の3d遷移金属錯体についても調査を行い、スピン禁制反応の学理構築を目指す。
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研究実績の概要 |
化学反応の前後で反応に関与する化学種のスピン状態が変化する反応過程はスピン禁制反応と呼ばれる。本研究では、申請者が開発したキノリン骨格PNNピンサー配位子を有する鉄錯体(以下ピンサー鉄錯体)を用い、これまで研究がほとんど進んでいないスピン禁制反応に対する調査を行う。 申請段階で、上記のピンサー鉄錯体が触媒活性を示す反応において、触媒反応を構成する各素反応にスピン禁制反応が含まれることを明らかにしている。初年度は、これら触媒反応の各素反応について化学量論反応を行い、生じる鉄錯体の構造、電子状態の推定を試みた。 前記の触媒反応の一つであるアルケンのヒドロシリル化における活性種を調査するため、触媒前駆体である鉄錯体と基質の一つであるシラン化合物との化学量論反応を行った。反応の進行は用いるシラン化合物に依存し、室温ないし加熱条件下で新しい鉄錯体を生じた。いずれのシラン化合物からも極めて空気、熱に敏感な鉄の化学種が生じ、単離が困難であったため、これら化学種の直接的な分析を断念した。一方で、重溶媒中での反応追跡から生じる化学種の推定を進めたところ、上記の反応においてシランの脱水素カップリング反応が同時に進行していることを見出した。この反応は触媒的にも進行し、1級シランからはポリシラン、2級シランからはジシランが選択的かつ効率的に得られた。反応系中に生じる鉄の化学種については、重溶媒中での反応追跡とDFT計算の結果から、鉄とケイ素との二重結合を持つシリレン錯体が生じているものと考えている。また、当初調査を進めていたアルケンのヒドロシリル化においても、想定していた反応機構とは異なり、同様のシリレン錯体が活性種となって反応が進行している可能性が示唆された。 これらの研究成果については、国内外の学会および学術論文を通じて公表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度計画に基づき、各種分析により触媒反応における活性種、中間体および反応機構に関する調査に取り組んだ。前述の検討により、鉄触媒前駆体と基質から生じる重要な化学種について知見が得られた。また、予期せず新しい触媒反応であるシランの脱水素カップリング反応を見出した。当初予定していた二反応に加え、新規触媒反応に関する実験データが得られたことでスピン禁制反応に関するより包括的な調査が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、申請段階で予定したとおり、初年度に得られた情報をもとに DFT 計算による反応機構、遷移状態解析を試みる。既に実験面で大幅な進展があるアルケンのヒドロシリル化およびシランの脱水素カップリング反応について優先して検討を進め、触媒前駆体からの開始過程、活性種などの共通する情報を別の触媒反応の解析にもフィードバックし、効率的に検討を進める。
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