研究課題/領域番号 |
23K04787
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
金 継業 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (40252118)
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研究分担者 |
鈴木 保任 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (20262644)
高橋 史樹 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (40754958)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 電気化学発光 / バイポーラ電極 / 活性酸素 / 抗酸化能の評価 / 抗酸化能分析 |
研究開始時の研究の概要 |
電気化学発光(Electrogenerated chemiluminescence, ECL)は,電気化学反応に伴う発光現象であり,励起光源を必要としないため,高感度な検出法として注目されている。本研究では,バイポーラ電極(bipolar electrode, BPE)をプラットホームとする新規ECL反応場の設計を行い,食品の抗酸化能を評価するための新しい検出原理を確立するとともに,分析装置の実用化も視野に入れた研究を推進する。
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研究実績の概要 |
抗酸化物質は人間の健康に重要な役割を果たし,生体内で生じる活性酸素種(ROS)を消去し生体成分の酸化を防ぐ観点から,食品の抗酸化能についてはこれまで数多くの研究が行われ,抗酸化物質に対して迅速かつ簡便な抗酸化能測定法の開発が求められている。本研究開発は,バイポーラ電極(bipolar electrode, BPE)を用いる小型電気化学発光(ECL)デバイスの開発を行い、抗酸化能を総合的に評価できる新しい分析原理の確立を目指している。 BPEは導体が駆動電源と接触せずに電解液の中で電気化学反応を扱っており、駆動電極によって生じた電場中に置かれた電導体が分極され、界面に対する過電圧が溶液中にある化学種の式量電位を超えると陽極端(anodic pole)に酸化反応、陰極端(cathodic pole)上に還元反応がそれぞれ起こる。R5年度は、目的成分の電気化学反応とECL反応を別々の溶液条件で行うことが可能な分離型BPE電気化学セルを作製し、デバイス性能評価に重点を置いて、基礎検討を行った。その結果、BPE一端上の電気化学反応をもう一端のECLシグナルとして検出できることが確認され、Wirelessセンシングデバイスのプラットフォームとして期待できることが分かった。また、ルミノールとルシゲニンをECLのプローブとしてそれぞれ陽極端と陰極端に添加した場合、過酸化水素の酸化または溶存酸素の還元により電極表面にin situ生成したROSに由来したECL信号がそれぞれ観測されて、特にシゲニンのECL信号はスーパーオキシドアニオンラジカル(O2・-)に対する選択的であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ポテンショスタットを試作し、小型ECLセンシングシステムの構築を成功した。試作したポテンショスタットの仕様は分析化学誌に投稿した論文に掲載される予定である。 BPEの陰極端のセルに溶存酸素が電極表面で還元されてO2・-を生じ,中性のpH条件下においてルシゲニンの(カソーディック)ECL反応を引き起こす。この系にO2・-の不均化反応を触媒する酵素であるSODを加えることでほぼ完全に消光したことから、この発光はO2・-に特異的であると考えられる。また、この系に抗酸化物質を添加するとECLが減少した。ECLの阻害率から抗酸化能をSODのユニット等量として求めたところ、ケルセチン > カフェイン酸 > ルチンとなり、ジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH法)と概ね一致した傾向を示した。 一方、BPEの陽極端のセルにルミノールと過酸化水素(H2O2)を添加すると,陽極端上でH2O2が酸化され,・OH,O2・-またはHOO・などの活性酸素種の生成により電極表面からの(アノーディック)ECLが観測された。ただ、発光強度はカフェイン酸やケルセチンなどの抗酸化物質の濃度に明確な依存が示されておらず、アノーディックECLによる抗酸化物質の全ROS消去活性評価には課題が残っている状況である。アノーディックECLは弱アルカリ性の溶液中で測定したため、電極表面にあるケルセチンの酸化中間体は自動酸化反応に関与して電極表面にO2・-またはH2O2を生成したことが示唆されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の研究を進めていく。
1.pH中性条件でのECL反応により全抗酸化能評価法の確立。界面活性剤によるミセル構造の界面領域のミクロ環境を利用することや、微量Co2+イオンの添加によって、pH中性条件下でもルミノールのECL反応を起こりうる反応場を構築し、検討を進める。 2.既存な分析法との比較検討を行う。BPEのアノーディックECL とカソーディック-ECLから、抗酸化物質の全ROS消去活性とO2・-に対する特異的消去活性をそれぞれ評価できると考えられ、フラボノイドであるケルセチン,ルチン,カテキンとフェノール類化合物であるカフェイン酸,カテコール,プロトカテク酸,サリチル酸,安息香酸,2,3-ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)、2,4-DHBA、2,5-DHBAおよびアスコルビン酸などの化合物質を用いて、抗酸化能の差異及び従来のORAC活性酸素吸収能力法(ORAC)や化学発光法(CL)との相関を実証する。
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