研究課題/領域番号 |
23K04797
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34020:分析化学関連
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
壷井 基裕 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (60411774)
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研究分担者 |
小原 一朗 徳島文理大学, 香川薬学部, 講師 (60581775)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | ラマン分光分析 / 風化 / 花崗岩 / ラマン分光 / 岩石風化作用 |
研究開始時の研究の概要 |
顕微ラマン分光法、顕微ラマンイメージングの鉱物学への新展開を目指し、各種鉱物が風化により変質する過程を鉱物の組織と対応させながら明らかにする。特に大陸地殻を構成する主要な岩石であるとともに、風化により土砂災害等の発生を引き起こす要因ともなる花崗岩について研究を行う。岩石を構成する鉱物が風化変質する過程について、顕微ラマンイメージング技術を駆使し、鉱物の組織と対応させながら詳細に分析と解析を行う。また、従来法では見ることのできなかった水の形態についても解析を行う。これら一連の研究から得られたデータを統合して、新たな岩石化学風化モデルの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、顕微ラマン分光法を駆使し岩石の風化過程について鉱物の組織と対応させながら分析解析を行い、従来の風化モデルを検証するとともに新しい化学風化モデルを構築することである。2023年度はその基礎データの収集を目的とし、野外調査と分析化学実験を行った。野外調査については、広島市北部の花崗岩類について、風化花崗岩ならびに新鮮な花崗岩について調査を行い、露頭におけるそれぞれの岩石の産状について詳細な観察を行った。また、さまざまなレベルに風化した岩石試料について蛍光X線分析法により全岩化学組成分析を行い、風化過程の進行に伴う元素組成の変化についての考察を行った。また、花崗岩類について人工的環境下における風化進行実験を行い、元素の溶出についての検討を行った。さらに風化した岩石について顕微レーザーラマン分光分析を行い、風化に伴い生成した鉱物について検討した。また、火成岩との対比という観点から堆積岩についての風化に関する研究も実施した。特に堆積岩の風化に対して、風化に耐性があると考えられる硬質の球状コンクリーションについて顕微レーザーラマン分光分析を行い、構成物質の同定を行うとともに、そのデータについて解析を行った。その結果コンクリーション中には有機物が残存していることを明らかにした。また、風化した花崗岩を対象にラマンイメージング分析を行い、岩石を構成する各鉱物について、風化に伴う化学的変化を中心に検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、風化した花崗岩類の野外調査ならびに顕微ラマン分光分析実験を行った。露頭における観察から現地において必要な情報については収集することができた。また、分析試料の調整方法等も問題がなく、ラマンスペクトルのデータは順調に取得できている。このことから、実験手法についてはほぼ確立できたと考えている。また、スペクトルデータ解析方法については、堆積岩類に含まれているコンクリーションについてのラマンイメージングデータのケモメトリクスを用いた解析を行ったことにより、各構成鉱物の分布等に関する解析のノウハウを会得した。また、風化した花崗岩の顕微ラマンイメージング分析と解析により、マイクロメートルオーダーでの鉱物の分布を確認することができた。これにより、本研究の主目的である岩石組織と対応させた鉱物風化過程の解明において、実験手法を確立し、それにつづくデータ解析とモデルの構築に対して一定の道筋をつけることができたと考えている。今後、風化程度の異なる花崗岩類についてさらに本方法を適用し、データ数を増やしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度にひきつづき、広島市北部に分布する花崗岩類について現地における詳細な野外調査を実施する。特に露頭における新鮮な岩石と風化した岩石の調査とともに、コアストーンとなっている試料についても調査を行う。これまでコアストーンについては、露頭ではなく転石であることもあり、本研究においてもあまり注目してこなかった。しかし、コアストーンは土砂災害における大きな要因のひとつであり、それについて調査分析を行うことにより、新たな視点から情報を得ることができる可能性がある。また、2023年度に島根県の雲南地域に分布する花崗岩類について、一部試験的に行った風化花崗岩についてのラマンイメージング分析について、他の試料についても同様の分析を行い、そのデータについて詳細に解析する予定である。さらに、今後は新たに神戸市周辺の六甲山地に分布する花崗岩類についても調査研究を行う。六甲山地に分布する花崗岩類は新鮮な岩石から風化した岩石まで幅広く分布している。また、過去に花崗岩の風化に起因した大きな被害を伴う土石流災害が発生している。特記すべきこととして、この地域には花崗岩類として花崗岩(六甲花崗岩)と花崗閃緑岩(布引花崗閃緑岩)の二種類が分布している。先行研究により、この二種類の花崗岩類は同じ花崗岩類であってもその斜面崩壊の程度には大きな違いが認められる。両岩石の新鮮な岩石とさまざまなレベルの風化した岩石について、蛍光X線分析法による全岩化学組成分析、ICP質量分析法を用いた希土類元素組成分析を行う。また、ラマン分光法を用いて特に黒雲母と斜長石に着目して風化により生成した鉱物の同定とその形態について分析する。さらに岩石の組織と対応させながら、風化の進行状況と風化生成物についての解析を行う。
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