研究課題/領域番号 |
23K04818
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
後藤 康夫 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60262698)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | セルロース / 再生繊維 / フィブリル化 / 溶液紡糸 / 力学物性 |
研究開始時の研究の概要 |
セルロースは生分解性・高強度を有する最大バイオマスであり、持続可能社会の構築のため、益々の利用が期待されている。木材から製造されるセルロース繊維(再生繊維)の利用促進は、自然界に大量に放出される合成繊維系廃棄物を大幅に減らす一助となる。本課題では、環境負荷が低く今後の大きな発展が見込まれる“溶剤法”を用いて高強度再生繊維を作製し、実用上大きな課題となる摩擦等による繊維表面の毛羽立ち“フィブリル化”を解決することを目的とする。
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研究実績の概要 |
セルロースは生分解性・高強度を有する最大バイオマスであり、持続可能社会の構築のため、益々の利用が期待されている。木材パルプから製造されるセルロース繊維(再生繊維)の利用促進は、生産量が限られる天然繊維の代替や自然界に大量に放出される合成繊維系廃棄物の削減に大きく貢献する。本課題では、環境負荷が低く今後の大きな発展が見込まれる“溶剤法”を用いて高強度再生繊維を作製し、実用上大きな課題となる摩擦等による繊維表面の毛羽立ち“フィブリル化”を解決することを目的とした。強度・耐久性低下の一因となるフィブリル化を抑制できれば、真にサステナブルなセルロース再生繊維の製造技術の完成となる。本研究では、我々が構築してきた溶液紡糸技術を基盤とし、セルロース溶液の“超”高濃度化と繊維製造プロセスの最適化により再生繊維のフィブリル化抑制の新規方法の開発を目指し検討を進めた。具体的には、高濃度セルロース溶液調製のため、リン酸エステル系イオン液体を溶媒に用いた。通常の溶解機で高濃度セルロース溶液を調製することが困難であったため、少量の非溶媒である水をイオン液体に含ませたパルプ中の繊維間に隈なく含浸させ、加熱減圧下で水を留去・溶解させる方法を採用し、20wt%の高濃度セルロース溶液を得ることに成功した。濃度10、15、20wt%の各セルロース溶液を調製し、紡糸速度や繊維物性(強度およびフィブリル化)を調査した結果、耐フィブリル化性に関しては15wt%溶液から作製された繊維が良好であった。低濃度である10wt%は、フィブリル化試験時のビーズミルにより繊維は破砕しやすい傾向を示し、20wt%溶液からの繊維は顕著なフィブリル化が起こった。以上の結果より、フィブリル化発現の難易はセルロース濃度が大きく影響し、適切な濃度が存在することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験は計画通りに進めたが、耐フィブリル化性向上は、当初目的とした“超”高濃度よりも、ある程度濃度を低めに抑えた方が有効であることが分かった。セルロースは半剛直高分子であるため、高ポリマー濃度においてリオトロピック液晶を発現する傾向があり、液晶相を含む溶液から紡糸した繊維はフィブリル化が起こりやすい。本研究で調製したセルロース溶液に液晶相は確認されなかったが、紡糸した再生繊維は、微細繊維状構造(フィブリル)を形成する傾向が強かったことから、紡糸溶液の吐出・凝固のいずれかの過程で液晶またはそれに近い構造を形成している可能性が示唆された。一方、溶媒組成の変更や紡糸条件の見直しにより、幾分低強度ではあるが、フィブリル化を起こしづらい繊維を得ることに成功した。しかしながら全体として期待した通りの研究結果は達成されておらず、当初の研究方針を修正しながら進めて行く必要であると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
フィブリル化の抑制は、本課題の命題であり、また実用上非常に重要である。そのため、“超”高濃度の方針を修正しつつ、フィブリル化抑制に適したポリマー濃度や紡糸条件の探索を行っていく。また溶媒であるイオン液体に別の溶媒を加えると、繊維強度を多少犠牲にしながらもフィブリル化を抑制できた系も見いだしたことから、新たな溶媒系の探索を推し進めることで目標達成に向けて検討を重ねていく。
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