研究課題/領域番号 |
23K04831
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
大島 賢治 熊本高等専門学校, 生産システム工学系BCグループ, 教授 (00377227)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | オレフィンメタセシス反応 / 1,4-シクロヘキサジエン / 水素化 / 魚油 / 水産加工残滓 |
研究開始時の研究の概要 |
水産加工残滓か得られる魚油を利用して1,4-シクロヘキサジエン(CHD)を製造できることを以前に提案した。このCHDはより安定な分子になるとき水素分子を失うことから、水素化剤としての用途が期待できる。 従来の水素化に使われる水素ガスは、石油の熱分解により得られる合成ガスの一成分であったり、水の電気分解により得られるものであり、高いエネルギーを消費して製造される。これに対し、本研究のCHDは、生物が生産した産物の廃棄物から変換して得られ、水素分子を与えるまでのエネルギー収支は発熱過程である。 このようなCHDを利用する新しい化学プロセスを開発し、廃棄物からの有用な化学原料の調達と利用を提案する。
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研究実績の概要 |
魚類残滓に含まれる不飽和脂肪酸に、不飽和結合の組み換えを行うオレフィンメタセシス反応を適用すると、六員環構造で炭素間の二重結合を二つ持つ1,4-シクロヘキサジエン(CHD)を製造できることを既に報告している。また、CHDを得るための不飽和脂肪酸は本来海洋の微細藻類が生産し、食物連鎖を通じて魚体に蓄積されるものであることから、微細藻類の培養条件の確認と不飽和脂肪酸の獲得、CHDへの変換も検討している。 CHDは従来別の反応で製造できることが知られていたが、特殊な条件を必要としたので、CHD自体の用途もあまり注目されてこなかった。CHDをこれまでよりも容易にバイオマスから得る方法を見出すことができたので、このCHDを用いる新しい反応の開発を目的とした。 CHDは水素分子を放出して安定な分子になることから、CHDを水素源として用いる水素化反応を検討した。水素ガスを使う反応でよく用いられる貴金属触媒存在下での水素化反応を検討した。一般的な水素ガス分子を用いる水素化反応に用いられる触媒には、不均一系触媒(懸濁して用いる触媒:パラジウム炭素、ニッケル触媒等)と溶媒に解ける均一触媒がある。これらの触媒を網羅的に検討した結果では、特に二価のパラジウム錯体やパラジウム‐炭素が、CHDを水素源とするアルケンの還元反応には有効であることが確認できた。同じ条件で、カルボニル化合物の水素化は進行せず、キノン骨格を持つ化合物はそれぞれ対応する1,4-ジヒドロキノン型に水素化(還元)できることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CHDを用いる新しい反応の開発として、当初から初年度の検討事項としていた貴金属触媒存在下での水素化反応を検討した。一般的な水素ガス分子を用いる水素化反応に用いられる不均一系触媒と不均一系触媒を網羅的に用いて,CHDを水素源とする還元反応を検討し、その結果、特に二価のパラジウム錯体やパラジウム‐炭素を触媒としたときに、CHDを水素源としてアルケンの還元反応が可能であることが確認できた。同じ条件で、カルボニル化合物の還元は進行せず、キノン骨格を持つ化合物はそれぞれ対応する1,4-ジヒドロキノン型に還元できることが確認でき、今後の研究につながる基礎的な情報が得られた。 また、不飽和脂肪酸からCHDを得るオレフィンメタセシス反応に適したロジウム触媒を既存の化合物から探索し、適切な触媒を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討でアルケンの水素化に有効な触媒となった二価のパラジウムを、シクロデキストリンやシクロファンといったカゴ型分子に結合させ、その中に取り込まれる分子を、CHDによって水素化反することを試みる。このことによって、種々の化合物の中から反応に関わる分子を選んで反応するといった基質選択的な水素化反応の可能性を追求する。カゴ型化合物と触媒がCHDも取り込んで活性化することが可能であれば、水素分子を用いる従来の反応では実施できない反応が可能になると期待できる。 また、不飽和脂肪酸からCHDを得るオレフィンメタセシス触媒の再利用法を導入し、バイオマス(魚類残滓、魚油、微細藻類)からのCHDの製造の効率化を図る。
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