研究課題/領域番号 |
23K04833
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分34030:グリーンサステイナブルケミストリーおよび環境化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
日隈 聡士 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70714012)
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研究分担者 |
岩佐 豪 北海道大学, 理学研究院, 助教 (80596685)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 一酸化二窒素 / N2O / 触媒 / 分解 / 温室効果ガス |
研究開始時の研究の概要 |
N2O分解触媒を開発し合成条件を最適化する。低い反応温度でN2Oを分解しする新規触媒を開発する触媒成分の組成と合成方法を制御して目標性能を維持させる。得られた触媒の構造・物性を評価し、触媒活性・選択性に影響を及ぼす因子を明確にする。調製した触媒の構造と物性を評価し、N2O分解活性や生成物選択性との相関を明確にする。N2O分解反応の反応中間体や共存ガスの効果を調べ、分解反応機構を明らかにする。分解活性・生成物選択性に影響を及ぼす触媒上のN2Oの吸着種や反応中間体や反応速度等を調べる。燃焼炉から排出されるN2Oと共存するH2O/CO2等の阻害効果など、フロー反応のモデル化設計を行う。
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研究実績の概要 |
様々な担持Ru触媒のN2O転化率の温度依存性を比較した。いずれの触媒もNOの副生を示さなかったことから、N2OはN2とO2に分解されたと推定された。Ru/SnO2およびRu/ZrO2では、N2Oのlight-off温度は約200 °Cであったが、Ru/Nb2O5はほとんど活性を示さなかった。触媒活性はN2Oの50%転化を達成したlight-off温度(T50)で比較している。T50は、SnO2 < ZrO2 < Al2O3 < CeO2 < Ta2O5 < TiO2 < Nb2O5の順に増加した。このT50の順序は、H2-温度プログラム還元(TPR)実験で測定した還元温度の順序Al2O3 < SnO2 < ZrO2 < CeO2 < Ta2O5 < TiO2 < WO3 < Nb2O5とほぼ一致している。これは低い反応温度におけるRu(RuO2)の酸化還元特性がN2O分解活性と関係していることを示唆している。還元温度の低い担持Ru触媒ほど、金属分散度が高い(粒子径が小さい)傾向にあることから、高分散のRu(RuO2)粒子がN2O分解反応に機能していると考えられる。Ru/CeO2は高い金属分散性(18%)を示したが、活性は中程度であった。Ru (RuO2)の還元性が低い反応温度でのN2O分解活性と関連していることが示唆された。以前の報告によれば、N2Oの分解メカニズムはN2Oが活性部位(配位不飽和な表面金属イオン)に吸着してN2と表面Oが形成され、その後、表面Oと他の表面Oが結合して脱着すると報告されている。担持された配位不飽和な表面Ru (RuO2)サイトもN2Oの吸着(活性化)とその後の表面Oの形成に必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
N2Oはオゾン層を破壊する温室効果ガスであり、約100年の長い寿命を示す。特に、その地球温暖化係数はCO2の約300倍である。世界中の国や国際機関が適切な緩和方法を導入しない場合、N2O排出量は2050年までに約2倍になると推定されている。N2Oの排出起源は主にエネルギー産業(燃焼プラントや化学プラント)・農用地・自然界であり、エネルギー産業の燃焼炉からの排出は局所的で高濃度である。これらの問題を解決するために、N2OをN2とO2に分解する触媒は、排出削減のための経済的な技術の一つである。これまで、N2O分解のための担持金属酸化物、貴金属、金属酸化物または複合酸化物触媒が研究されてきた2)。担持触媒に関しては、N2O 分解に対する活性は Ru, Rh, Ir > Pd > Cu > Fe > Pt > Ni > Mn の序列であることが報告されている2)。そのため、Ru種はN2O分解の有望な触媒になる可能性がある。現在までAl2O3, CeO2, TiO2, Nb2O5, ZrO2, Ta2O5, WO3 およびSnO2などの様々な金属酸化物をRu触媒の担体材料とした。担持Ru (5.0wt%)触媒はRuCl3の水溶液を含浸、乾燥後、空気中600 °Cで3時間焼成することによって調製した。担持Ru触媒は粉末X線回折(PXRD)、蛍光X線(XRF)、H2による昇温還元法 (H2-TPR)、Brunauer-Emmett-Teller(BET)表面積測定、NH3ならびにNOによる昇温脱離法(NH3-, NO-TPD)、CO pulse化学吸着法およびフーリエ変換赤外(in-situ FT-IR)分光法で評価した。N2Oの触媒分解は大気圧の流通反応装置を用いて昇温法で評価した。
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今後の研究の推進方策 |
N2O触媒分解反応に対して担持Ru触媒の影響を包括的に評価した。様々な担体材料に担持されたRuの相は、PXRDによってRuO2に帰属された。担体Ru触媒のN2O分解反応のT50の順序とH2-TPRにより求められた還元温度(Tred.)の順序とに相関が認められた。すなわち、低温域の反応温度でのRu (RuO2)の還元特性が、N2O分解活性に関連していることが推定された。得られたNO-TPDプロファイルやin-situ FTIRスペクトルから、N2O/NOx吸着特性と触媒活性の間の相関関係が明らかになった。担持Ru (5.0wt%)触媒の中でも、特にRu/SnO2がN2O触媒分解反応に高性能を示した。5.0~20wt% Ru/SnO2のlight-off温度とT50はほぼ同じであったことから、最適なRu担持量は約5.0wt%であることがわかった。H2Oの存在によって、5.0wt% Ru/SnO2の不活性化、あるいはN2O吸着の阻害が誘導されたと考えられる。今後も低温からN2Oを分解できる新規触媒の開発を進める。加えて、農用地や自然界からもN2Oが多く排出されているため、農業分野のN2O排出抑制技術と協力関係を築き共同研究や開発を検討したい。
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