研究課題/領域番号 |
23K04844
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35010:高分子化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
田代 健太郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子・バイオ材料研究センター, 主幹研究員 (40332598)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ゲル化 / キラル対称性の破れ / 攪拌 / 巨視的なキラル対称性の破れ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は申請者が見出した「ゲル化による巨視的なキラル対称性の破れ」現象(Scheme 1)が実は多様な不斉化合物のゲル化で生じる普遍的事象ではないか?との作業仮説に基づいた提案である。不斉化合物両エナンチオマーの等量混合物をゲル化すると、一方のエナンチオマーが過剰となったゲルが自発的に得られるという「ゲル化による巨視的なキラル対称性の破れ」が生じる「化学種の構造多様性」「発現の鍵となる化学/物理的パラメータ」「現象の詳細メカニズムと光学分割手法としての可能性」各項目について3年間の予定で検討を進め、仮説の実験的証明を通じて不斉化合物の集合化における従来の常識の一新を目標とする。
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研究実績の概要 |
複数のアミノ酸誘導体のゲル化において申請で提唱した仮説の実験的検証を行った結果、1)検討されたすべてのケースにおいてラセミ体混合物のゲル化の際にはホモキラル選択的自己集合化が進行し、この現象はキラルな小分子のゲル化において一般則として成立する蓋然性が高い、2)ホモキラル選択的自己集合化が進行しながらも、ゲル化の際に巨視的なキラル対称性の破れが発現する・しない双方のケースが存在する、の二点が明らかとなった。同時にこれらの検討の過程で、ゲル化において巨視的なキラル対称性の破れを発現するための因子として、申請時には想定外であった「溶液の攪拌」の重要性を見出した(攪拌方向によるキラリティーの制御という意味ではなく、ゲル中に濃縮されるエナンチオマーの選択性はランダムである点を誤解を避けるため強調しておく。)。ゲル化のプロセスに攪拌操作を適宜組み込むことにより、静置環境では発現しなかった巨視的なキラル対称性の破れを容易かつ普遍的に生じさせることが可能となり、ゲル化においてはきわめてありふれた現象となり得ることを実証した。以上の成果は、キラル対称性の破れが結晶化においては例外的にしか起こらないというこれまでの経験則と極めて対照的な傾向を示しており、地球上におけるキラル対称性の偏りの起源についての新たな視点を与える(従来提唱されていた結晶化ではなくゲル化を介した偏りという新たなシナリオの提案)とともに、何故ゲル化と結晶化で対照的な傾向を示すのか、という分子集合体形成に関する新たな謎・研究命題を生み出しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度に注力予定であった小分子が形成する物理ゲルの範囲において概ね仮説を実証する実験結果を得ることができた。また、巨視的なキラル対称性の破れを発現する上で重要な基本的因子として、「ゲル化を行う溶液を攪拌する」という研究の開始前には全く想定していなかった知見を見出すに至っており、当初の計画以上に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
1年目は低分子物理ゲルにおける巨視的なキラル対称性の破れの発現に焦点を当てたのに対し、2年目は共有結合性ポリマーからなる物理ゲルにおける同様の現象について検討を行う。特に、一年目の取り組みで見出した「攪拌によるキラル対称性の破れの発現の促進」効果が高分子物理ゲルにおいても存在するのか否か、について重点的に調べる。
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