研究課題/領域番号 |
23K04855
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
藤本 和士 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (70639301)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 全原子分子動力学計算 / 溶媒和自由エネルギー / PMMA / PMA / 分子動力学計算 / 高分子の溶解 |
研究開始時の研究の概要 |
PMMAやPMAなどの非晶性高分子は、純水にも純アルコールにも溶けないにもかかわらず、80%アルコール水溶液には溶解する。相分離理論での理解は進んでいるが、「なぜ80%なのか?」「なぜ混合溶媒なのか?」に対する疑問には未だ解答できていない。高分子の溶解は、①溶媒分子の高分子への浸透・拡散、②溶媒膨潤状態における高分子鎖の拡散(からみ合いの解け)、③高分子1分子鎖の混合溶媒中での安定化の3つの要素に分解することができる。本研究課題は、化学的性質を取り扱うことができるaa-MD計算を用いて、これら3つの要素を解明することで、高分子の溶解メカニズムの分子論構築を目指す。
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研究実績の概要 |
PMMAやPMAなどの非晶性高分子は、純水にも純アルコールにも溶けないにもかかわらず、80%アルコール水溶液には溶解する。相分離理論での理解は進んでいるが、「なぜ80%なのか?」「なぜ混合溶媒なのか?」に対する疑問には未だ解答できていない。本研究では、分子動力学(MD)計算を用いて、アクリル系樹脂のアルコール水溶液への溶解を分子レベルから明らかにする。 本年度は、PMMA15量体および100量体の0, 20, 40, 60, 80, 100%エタノール水溶液への溶媒和自由エネルギーをMD計算を用いて計算した。自由エネルギー計算手法として、熱力学的積分法を用いた。どちらの長さのPMMAも80%エタノール水溶液の溶媒和自由エネルギーが最も低い値となった。また、高分子鎖が長いほど80%エタノール水溶液とその他の濃度の安定度の差が大きくなった。つまり、PMMAにとって80%エタノール水溶液が最も安定であり、高分子鎖が長いほどより安定であることがわかった。 これらの自由エネルギーをファンデルワールス(vdW)項とCoulomb相互作用に分割した。vdW項は分子が溶解する時に、分子が入り込む隙間を作らための仕事に概ね相当する。一方で、Coulomb相互作用は分子がその隙間に入り込んだ後どれくらい安定化を図れるかに相当する。エタノールの割合が少ないほどvdW項は不利に働き、エタノールの割合が多いほどCoulomb相互作用項は有利に働く事が明らかとなった。これらのトレードオフの関係により80%エタノール水溶液が最も安定となる事がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PMMA15量体および100量体の0, 20, 40, 60, 80, 100%エタノール水溶液への溶媒和自由エネルギーをMD計算を用いて計算することで、80%アルコール水溶液が安定となる要因を特定できた。次年度はPMMAのPMMAへの溶媒和自由エネルギーを計算し、この二つの溶媒和自由エネルギーの引き算として溶解自由エネルギーを評価できれば、高分子が特定の濃度のアルコール水溶液にしか溶けないという理由の全容が分子レベルで解明されるため。
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今後の研究の推進方策 |
高分子がアルコール水溶液に溶ける現象を解明するためにはMD計算を用いて溶解自由エネルギーを計算しなければいけない。溶解自由エネルギーは、PMMA1分子がPMMA材料中からアルコール水溶液に移行する時の自由エネルギー差である。これを求めるためには、PMMA1分子が真空中からアルコール水溶液中に溶ける自由エネルギー(溶媒和自由エネルギー1)と、PMMA1分子が真空中からPMMA中に溶ける自由エネルギー(溶媒和自由エネルギー2)を計算し、その差分から評価する。 本年度は溶媒和自由エネルギー1の計算に成功した。そこで、次年度は溶媒和自由エネルギー2をMD計算から計算し、これら二つの溶媒和自由エネルギーの差分から溶解自由エネルギーを評価する。
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