研究課題/領域番号 |
23K04856
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
鳥飼 直也 三重大学, 工学研究科, 教授 (70300671)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 高分子コンポジット / フュームドシリカ / ガラス転移温度 / 非相溶高分子ブレンド / 上限臨界相溶温度 / ドロップレット相 / 質量フラクタル次元 / 粘弾性特性 / 相分離構造 / 架橋構造 / 接着特性 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,軽量かつタフな材料として多様な用途に利用される高分子コンポジットの機械的強度や電気・熱伝導性などの材料特性や機能は,高分子中に添加された固体粒子の分散状態や凝集構造の形成に大きく依存する。 本研究では,高分子の物理的な絡み合いの代わりに,1)高分子ブレンドが相分離して形成するマクロな共連続構造および,2)熱硬化性樹脂が化学結合により形成するミクロな架橋構造,をマトリックスとすることで,それら構造が固体粒子の分散・凝集状態に及ぼす影響を調べ,高分子コンポジットが示す材料特性との関係および脆性に対する軽減効果を明らかにする。
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研究実績の概要 |
近年,軽量かつタフな材料として多様な用途に利用される高分子コンポジットの機械的強度や導電性・熱伝導などの材料特性や機能は,高分子中に添加された固体粒子の分散状態や凝集構造の形成に大きく依存する。高分子コンポジットは,固体粒子の添加により材料特性が向上する一方,その添加量が増えると,マトリックス高分子鎖の物理的な絡み合い形成が阻害され脆性が顕著になる。本研究では,高分子鎖の物理的な絡み合いに代わり,1)高分子ブレンドが相分離して形成するマクロな共連続構造および,2)熱硬化性樹脂が化学結合により形成するミクロな架橋構造,をマトリックスとすることで,それら構造が固体粒子の分散・凝集状態に及ぼす影響を調べ,高分子コンポジットが示す材料特性との関係および脆性に対する軽減効果を明らかにする。 初年度は,まず,1)高分子ブレンドが相分離して形成するマクロな共連続構造をマトリックスとする高分子コンポジットについて検討した。ガラス転移温度が低い約35℃のポリ酢酸ビニルPVAcをガラス転移温度が約100℃のポリスチレンPSに組成比1:9および3:7で混合した上限臨界相溶温度を示す高分子ブレンドをマトリックスとして,親水性フュームドシリカを添加した高分子コンポジットを調製した。透過型電子顕微鏡観察により,初年度に調べたブレンド組成の範囲内では,PVAcがPS中でドロップレット相を形成し,添加した親水性フュームドシリカはPVAc相に選択的に局在することが明らかになった。また,超小角および小角X線散乱測定により, PVAc/PSブレンド中の親水性フュームドシリカの凝集状態を,質量フラクタル次元を指標として定量的に比較した。これらコンポジット試料に対して,150℃での動的粘弾性測定により,角周波数が低い領域における貯蔵弾性率がブレンド組成に応じて異なることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに研究代表者が実施した高分子コンポジットの研究では,ガラス転移温度が高い高分子を用いることで,室温においてマトリックスがガラス状態にあるコンポジット試料を対象としてきた。しかし,本研究では高分子コンポジットの脆性の問題についての検討に取り組む必要から,一方のブレンド成分として,ガラス転移温度が低いポリ酢酸ビニルPVAcを選択した。初年度は,PVAcの組成が比較的低い,ポリスチレンPSとのブレンド系について検討することで,これまでガラス転移温度が高い成分の高分子コンポジットの研究で確立した測定手法を適用できることを確認し,今後の研究展開の見込みを立てられた点から,おおむね順調に順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
高分子ブレンドをマトリックスとする高分子コンポジットについては,ガラス転移温度が低いポリ酢酸ビニルPVAcの組成がさらに高いブレンド系に展開することで,目的とするマクロな共連続構造がコンポジット特性に及ぼす影響を調べる。 一方の2)熱硬化性樹脂が化学結合により形成するミクロな架橋構造をマトリックスとするコンポジット試料については,熱硬化性樹脂として,計画段階で予定していたエポキシ樹脂より,分子鎖長の選択肢が広いポリジメチルシロキサンPDMSを用いることで,分子量が異なるPDMSの熱架橋により作製した異なる網目サイズの中での親水性フュームドシリカの分散・凝集状態への影響を調べる。動的粘弾性測定では,PDMSコンポジットの熱架橋過程における弾性率の変化を,試料を変形させない低ひずみでの線形領域でその場観測する。PDMS架橋構造中の固体粒子の分散・凝集状態の観察は,透過型電子顕微鏡観察,超小角および小角X線散乱測定により行う。さらに,PDMSコンポジットについて,引っ張りによる変形下でのフュームドシリカの凝集状態の変化をX線あるいは中性子のその場小角散乱測定で評価する。
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