研究課題/領域番号 |
23K04861
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | カチオン重合 / ラジカル架橋 / ハイドロゲル / 温度応答性 / 下限臨界溶液温度 / アクチュエータ / ポリマー構造 / 温度応答性ハイドロゲル / ネットワーク設計 / 直交の反応 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、直交型架橋剤を用いた温度応答性ハイドロゲルの高精度な構造制御の 影響を調べ、ソフトロボット用アクチュエータへの応用を目指している。カチオン重合 でユニークなポリマーを合成し、カチオン重合で反応しやすいモノマーとラジカル 重合で反応しやすいモノマーを直交架橋剤で架橋することにより、温度応答性ハイ ドロゲルの微細構造を制御することが可能である。直交重合の様々な構造設計により、下限臨界溶液温度 (LCST)ハイドロゲルの物性 にどのような影響を与えるのを研究する。そしてハイドロゲルを利用し、ソフトロボット用アクチュエータへの応用を目指している。
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研究実績の概要 |
2023年度に提案された研究は、①ラジカル反応が可能な直交架橋剤を含むリビングカチオン重合により、様々な低臨界溶液温度(LCST)の温度応答性高分子構造を合成し、②これらの高分子を使用し様々な温度応答性ハイドロゲルを作製することである。前の研究では、メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)またはエトキシエチルビニルエーテル(EOVE)と直交架橋剤のランダムコポリマーが合成した。EOVE、MOVE、及び直交架橋剤を全部含むいくつかのランダムコポリマーも調査した。そこで、より多くのポリマー構造を研究するため、去年度はMOVE及びEOVEと直交架橋剤を様々に組み合わせたブロックコポリマーを合成した。直交架橋剤が1つのブロック内にのみ配置されていると、ダングリングゲルが得られる。重合は良好に進行したが、ブロックポリマーは予想外に水に不溶性であり、ハイドロゲルを形成出来なかった。溶解性を改善するために、より親水性の高い新たな直交架橋剤を使用する研究が開始した。より親水性の高い直交架橋剤をMOVEまたはEOVEとともに使用してランダム共重合体を合成し、重合の品質は同等でも、LCST温度に基づくと、明らかに親水性が高いことが分かった。より親水性の高い架橋剤により、幅広い温度応答性温度を有する追加の温度応答性ポリマーの形成が可能になる。直交架橋剤を含むEOVEとMOVEのブロックコポリマーの研究はまだ進行中だが、新しい架橋剤とMOVEを使用し1つのダングリングハイドロゲルの形成に成功した。このダングリングハイドロゲルは、今までのハイドロゲルと対照的に、元のポリマーと同等かそれよりも低いLCSTが可能になり、そして、より大きなサイズ変化を達成した。これらのハイドロゲルはソフトロボットのアクチュエーターとして非常に有望であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初提案された研究では、最初の年は主に様々なポリマー構造を重合し、これらのポリマーを使用し、ハイドロゲルを形成することに焦点を当てる予定だった。一般に、この助成金の初年度に実施された研究は、提案された研究計画に従って行われた。したがって、研究はほぼ予定通りに進んでいる。しかし、様々なポリマー構造を形成する際、一部のポリマー構造、特にブロックコポリマーでは水への溶解性に問題がいくつか観察された。水に溶解するのではなく、様々な自己集合構造が形成され、これらはハイドロゲルの作成に対応できなかった。この予期せぬ結果を克服するには、何らかの問題解決が必要であり、これにより、新規ポリマー構造の形成とその結果得られるハイドロゲルに関する提案された研究にわずかな遅れが生じた。溶解性を高めるために、より親水性の高い直交架橋剤が開発された。この架橋剤を効果的に使用するために、メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)またはエトキシビニルエーテル(EOVE)と親水性直交架橋剤とのランダムコポリマーの合成の研究が行われた。これにより、例えばダングリングハイドロゲル用のブロックコポリマーなど、当初計画されていたポリマー構造の合成の一部が遅れたが、実際にはこの研究プロジェクトの進行には有益だった。重要なのは、より親水性の架橋剤を組み込むことで、調査できる可能性のあるポリマーの種類が2倍になったことである。したがって、当初考えられていたすべてのポリマーが形成されたわけではないが、より広範囲のポリマー構造とハイドロゲルの研究が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)とエトキシエチルビニルエーテル(EOVE)及び直交架橋剤の組み合わせを含む様々なポリマー構造の研究は、当初、2025年度まで継続することが提案されており、初年度の結果に基づいて、それが不可欠であると考えられている。研究のこの部分を継続する。まず、より親水性の高い新しい架橋剤の導入により、より疎水性の高い直交架橋剤を使用し、以前に形成されたすべてのポリマー構造との相関関係を作成し、これらの系の熱特性に対する構造の影響を比較することが重要である。第二に、この研究が開始されたとき、ダングリングハイドロゲルの形成にはいくつかの困難があったが、初期結果は、これらが効果的なアクチュエータを実現するための非常に有望なタイプの温度応答性ハイドロゲルであることを示しており、これらの材料のより徹底的な研究を実行することが不可欠である。2024年度開始予定の第3期プロジェクトについては、ロボット研究専門の共同研究者と連携する予定である。これらの非常に興味深いハイドロゲルのアクチュエーター特性をさらに徹底的に調査していく。今まで合成したハイドロゲルを使うと、ユニークで有益な温度応答性アクチュエータシステムを形成できると考えている。2025年度には、温度応答性以外の機能を付加する研究を開始する予定。引き続き2025年度の多機能材料の実現を目指していきたいと考えておりますが、2024年度末に再評価を行い、今後の研究の方向性を決定すると考えている。ポリマー構造の形成と、その結果として生じるハイドロゲル、特にダングリングゲルなどは、当初の予想よりもはるかに有益な研究経路であることが証明されている。
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