研究課題/領域番号 |
23K04865
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
野崎 浩二 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (80253136)
|
研究分担者 |
貞包 裕加 (堀川裕加) 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (10589039)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
|
キーワード | ボトルブラシ高分子 / ポリオレフィン / 直鎖型分子 / n-アルカン / 相挙動 / 高次構造形成 / X線散乱 / 熱分析 / ボトルブラシ分子 / 高次構造 / X線回折 |
研究開始時の研究の概要 |
ボトルブラシ高分子は主鎖に高密度に直鎖状の側鎖が付加した分子である。本研究では、ボトルブラシ高分子、および、ボトルブラシ高分子と直鎖型低分子をブレンドした混合系について、それらが示す特徴的なナノスケール構造形成を明らかにする。 この研究では特に分子の幾何学的な特性のみに注目する。種々の実験手法を用いて高次構造を観察し、「ボトルブラシ型」という幾何学的特性を起源とする高次構造形成メカニズム、さらに「ボトルブラシ型」に「直鎖型」という幾何学的特性の異なる分子を混合することによる高次構造形成の変化のメカニズムの基礎理解を目指す。
|
研究実績の概要 |
令和5年度はボトルブラシ高分子として平均炭素数20と29のアルキル側鎖が付加した立体規則性のないアタクチックポリα-オレフィン(aCLP20F、aCLP29F)を用いた。この中でaCLP20Fについては側鎖長分布を有するもの(そのままaCLP20Fと表記)と側鎖長分布のないaCLP20FPを準備できた。 広角X線回折(WAXD)と走査示差熱量分析(DSC)によってaCLP20FおよびaCLP20FPと炭素数22, 26, 28のn-アルカンとの混合系の相挙動を把握した。併せてすでに測定を終えていたaCLP29Fとn-アルカン(炭素数24-36)との混合系のWAXDプロファイルの温度変化とDSC曲線を精査し、相挙動を再整理した。その結果、本研究に用いたaCLP20F, aCLP20FP, aCLP29, aCLP29Fとn-アルカンのすべての混合系では、ポリα-オレフィンが多い組成では両者は固溶体を形成し、n-アルカンの含有量が増加すると固溶体とn-アルカンが相分離することが明らかとなった。 これらの混合系における固溶体へのn-アルカンの固溶限界濃度は、ポリα-オレフィンの側鎖長とn-アルカンの分子鎖長に関係しており、両者の鎖長差が小さいほど固溶限界濃度が高い傾向を示す。側鎖長分布をもつaCLP20Fと側鎖長分布のないaCLP20FPを用いた混合系を比較したところ、後者の方が鎖長差の小さい組み合わせにおいて高い固溶限界濃度を示すことが明らかになった。 固溶体相では、おそらくポリα-オレフィンの側鎖とn-アルカンが相互に固溶して結晶相を形成していると考えられ、今後、固溶限界濃度の鎖長差依存性や側鎖長分布依存性を説明する固溶体相の構造を解明する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度までに3種類のアタクチックポリα-オレフィンaCLP20F, aCLP20FP, aCLP29Fとn-アルカン混合系の相挙動を明らかにする目的の研究を進めた。その結果、予定していた混合系試料のうち、ほとんどの試料について相挙動を明らかにできた。 その一方で、特にaCLP20FとaCLP20FPについては、側鎖長との鎖長鎖が小さい鎖長をもつ炭素数18と20のn-アルカンとの混合系の相挙動を明らかにするに至っていない。これは測定温度域の関係で、当初予定していた測定手法が適用できなかったためである。 令和5年度までに明らかにしたaCLP20F, aCLP20FP, aCLP29Fとn-アルカンの混合系の相挙動については、すべて降温過程である。これは昇温過程のDSC曲線からは相転移開始温度を明確に決定できないためである。降温過程においては準安定相が観測される場合がある。相挙動を明らかにすることは、熱力学的に安定な相の出現挙動を調べることがその本質であると考えられるので、今後はWAXDプロファイルの温度変化から昇温過程における相挙動を明らかにすることが課題である。 混合系が形成する高次構造形成については、研究室の装置を使用して測定したWAXDプロファイルから、固溶体領域の分子配列(結晶構造)の推測はできた。さらに放射光X線を用いた小角X線散乱実験を行った。一方で、これらを解析することによる結晶構造の最終決定や結晶相と非晶領域の相分離による高次構造の決定には至っていない。 研究成果の発表については、令和5年度は一部の検討が計画通りに進まなかったことにより、全国規模の学会発表を断念し、研究会での発表に留めた。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度は測定温度域の関係で、当初予定していた測定手法が適用できなかったaCLP20F, aCLP20FPと炭素数18と20のn-アルカンとの混合系の相挙動について、早急に測定方法を改善し、実験を実施する。さらに、ボトルブラシ高分子として用いるポリα-オレフィンを立体規則性の異なるiCLP30に変え、引き続きWAXDとDSCで相挙動を調べる。最終目的である昇温過程の相挙動について明らかにする。 一方、令和6年度以降は高次構造の実態を明らかにすることに本研究を徐々に移行させる。それぞれの相状態における高次構造を小角X線散乱法(SAXS)、軟X線顕微鏡法(SXM)、原子間力顕微鏡法(AFM)を用いて決定する。決定した高次構造を、ボトルブラシ高分子の側鎖長と混合するn-アルカンの鎖長との関係、ボトルブラシ高分子の立体規則性の観点で整理し、高次構造形成メカニズムを明らかにする。 まずは令和5年度に実施した放射光X線を用いたSAXS実験の結果を解析し、結晶相と非晶領域の相分離による高次構造を推測する。その後、実験方法が本研究の目的を達成するために十分に機能するかを確認し、次のSAXS実験の方法にフィードバックする。SXMについては、今まで実施経験がない手法であるので、使用する予定の実験設備の担当者との綿密な打ち合わせを行った後に具体的な実験計画を作成して実験に臨む。AFMについては試料調製方法の検討をする。その後、これまでに別の研究を通してすでに蓄積している測定のハウハウを適用し、高次構造の観察を試みる。 研究成果発表については、本課題申請時の計画から多少の遅れが生じているので、少し加速し、令和6年9月に全国規模の学会での発表をする。また、令和6年度中には論文投稿の準備を開始できるように結果の整理・考察を加速させる。
|