研究課題/領域番号 |
23K04914
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
付 哲斌 神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (70897967)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 電子スピン磁気共鳴 / ペロブスカイト型光触媒 / 反応中間体 / 水中赤外分光 / ペロブスカイト構造 / 水分解反応 |
研究開始時の研究の概要 |
世界最高の量子収率で水を水素と酸素に分解する、ペロブスカイト型構造をとるチタン酸金属酸化物(AlドーブSrTiO3)を紫外光で励起し、電子スピン共鳴(ESR)・液中全反射赤外分光(ATR-FTIR)スペクトルを測定する。ESRスペクトルに現れる超微細構造線幅・ATR-FTIRスペクトルに現れる反応中間体の振動構造の情報を利用し、金属ドーピングによる長寿命電子励起状態のしくみ、水中実働環境で光触媒反応の反応中心・反応中間体を同定し最終生成物にいたる反応過程を明らかにする。これらの知見を統合して、ペロブスカイト型構造の共通点を絞って解析し、人工光合成触媒材料の設計に分子論的な指針を提供する。
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研究実績の概要 |
ペロブスカイト型結晶構造をとる半導体触媒が水を水素と酸素に分解できる。このような半導体触媒の性能は、規則的に整列した結晶構造ではなく、構造が金属カチオンドーピングにより少し歪まれた方は優れ、世界最高の量子収率(96%)を実現した。なぜ結晶構造に少し歪みのある方は量子収率が向上され、水分解反応の最終生成物にいたる量子収率を100%にまで向上させるために、ペロブスカイト結晶構造がどのような歪みをとることが最善だろうか、その構造分子論的な理解は依然として明らかでない。 本研究は、電子スピン磁気共鳴(ESR)スペクトルに現れる超微細構造線幅・全反射型赤外分光スペクトルに現れる反応中間体の振動構造の情報を利用し、金属ドーピングによる電荷空間分布、および水中実働環境で光触媒反応の反応中心・反応中間体を同定し、最終生成物にいたる反応過程を明らかにする。 初年次の2023年度は、以下の(1)および(2)に注力した。(1)金属ドーピングによる電子励起状態の空間構造変化の情報抽出;(2)水中実働環境で光触媒の反応を進行させながら反応中心の特定および反応中間体の観測。(1)について、光励起により生成された電荷(正孔および電子)は酸素原子とチタン原子付近に局在することを見出した。また、予測外の結果として、チタン酸金属酸化物の励起前に、不対電子によるESR信号を有し、この信号は、光励起により、一部は増加し、他は減少することを見出した。現在、励起前に存在するESR信号分析を進めている。(2)については、スピントラップ法を利用し、反応中間体の観測ができた。また、金属ドーピング有無によって反応中間体の生成量が異なり、金属ドーピング(あるいは結晶構造歪み)が反応過程に大きく影響を寄与することを見出した。上記2点に加えて、可視光領域における全反射型計測法の構築にも進め、2件の学会発表をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年次の2023年度では、所属機関の変更により、使用予定の旧所属機関が所有する光触媒の表面評価・構造解析に必要なEDX、電子顕微鏡といった大型装置、吸収分光装置などの汎用機器を用いる計測ができなかった。実施内容を調整し、光触媒の合成から光励起により生成された電荷の空間分布の電子スピン磁気共鳴測定・データ解析、並びに水中実働環境で光触媒の反応を進行させながら反応中心の特定・反応中間体の観測まで、電子スピン磁気共鳴を用いる当初最初2年間の計画内容を完了した。よって、当初の計画はおおむね順調の進展が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
光触媒の表面評価・構造解析に必要なEDX、電子顕微鏡といった大型装置、吸収分光装置などの汎用機器の計測は、分子科学研究所施設利用制度を使うことまたは民間受託分析機関に依頼分析をすることに予定変更し、2023年度分の未実施の計画内容は、2024年度分と同時並行に実施して計画どおりに進める。 また、(1)金属ドーピングによる電子励起状態の空間構造変化の情報抽出に得られた予測外の結果について、空間構造における電荷密度の量子化学シミュレーションを用いて解析を進める。(2)水中実働環境で光触媒の反応中間体を同定するために、次年度に予定する中間体の振動吸収の赤外分光法計測に進める。
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