研究課題/領域番号 |
23K04917
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
東 智弘 宮崎大学, 研究・産学地域連携推進機構, 助教 (80762088)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | グリーン水素 / 光電極 / 光触媒 / 電極触媒 / 薄膜 / 表面修飾 / 水素 / 光電気化学水分解 / 人工光合成 |
研究開始時の研究の概要 |
可視光吸収型の半透明な光電極と太陽電池で構成されたタンデム型セルによるソーラー水素の生成が検討されている。水の分解反応中に半導体光電極と電極触媒が劣化してしまうという問題があり、タンデム型セルの長寿命化には至っていない。本研究では、高い太陽光-水素エネルギー変換効率を維持したまま長期間安定に水素を生成できるタンデム型セルの実現を目標とする。光電気化学水分解における光電極/電極触媒の固液界面での劣化メカニズムを明らかにし、高い光透過率と長期耐久性を両立する表面修飾法を開発する。この研究によって、高効率ソーラー水素生成が実証され、光触媒粉末系などの開発に応用されることが期待される。
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研究実績の概要 |
太陽光エネルギーを輸送・貯蔵が可能な化学エネルギーへ変換する過程の一つに、半導体光電極を用いる水分解反応による水素生成がある。この水分解反応の効率をさらに向上させるためには、反応の舞台である光電極/水溶液からなる固液界面の設計が重要である。本研究は固液界面での水分子や共存電解質イオンの挙動を明らかにし、電子と正孔の移動過程を精査し固液界面での特異な現象に関する知見と理解を深め、それを界面の設計戦略に反映させることで、水分解反応の高効率化および太陽光-水素エネルギー変換効率(STH)の向上を目指している。高いSTH効率でソーラー水素を長期間安定に生成できるタンデム型セルを実現することを目的とする。その出発点として、電極触媒の表面被覆率と触媒層厚みが半透明な半導体光電極の性能へ与える影響を精査する。また、耐久性と高活性を両立する超薄膜型の電極触媒の設計を通じて、タンデム型セル構築の条件を満たした表面修飾法を開発する。 2023年度は600 nmまでの光を吸収して水を分解できる半導体光触媒である窒化タンタル(Ta3N5)に着目し、Ta3N5光触媒を透明基板上に固定化して光電極を作製し、酸素生成反応を検討した。酸素生成反応を促進する助触媒のNiFeOxをTa3N5光電極表面に修飾した。上記研究の過程で、固液界面における抵抗値の増加によって酸素生成反応の効率低下を引き起こしていることが明らかになった。Hall効果測定の結果から、Ta3N5光電極のキャリア濃度は金属並みに高いことを明らかにした。表面およびバルクの欠陥量を低減させる必要性が課題となった。半透明な光電極としてp型のCuBi2O4薄膜の作製を実施しており、高いオンセット電位で光化学反応を駆動させることができた。また、ナノ粒子型の助触媒をベースにしたモデル電極を構築し、その水分解活性の物理化学パラメータを抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半導体光触媒材料を固定化した電極を光電極に用いて、その光電気化学的水分解に与える助触媒の効果を精査した。電解液組成や助触媒の電極触媒性能が光電気化学水分解の反応速度を制限していることを明らかにしている。水素生成用の半透明な光電極として、CuBi2O4薄膜型光電極の開発を並行し、その表面修飾法の開発を進めている。 固液界面での水分解反応を現象論的のみならず実際に定量評価することができるようになった。また助触媒の担持方法やその効果を実際に光電気化学測定によって精査することで、得られた結果を次の材料設計および界面設計にフィードバックすることができるようになったという点においては研究が順調に進捗していると評価できる。 光電極/水溶液界面での水分解反応において、反応種である水分子もしくはプロトンや水酸化物イオンの反応素過程およびバルクからの拡散過程をより詳細に描像する必要がある。光電気化学測定と分光測定を組み合わせてその過程を追跡する予定であり、そのためのセットアップはおおむね完了している。水分解反応中での長期耐久性の実現に向けて、NiFeOx超薄膜型の助触媒モデル電極を作製し、その表面担持量と表面被覆率を最適化することができた。この耐久性はまだ数時間オーダーであるものの、カチオン比やその他金属カチオンとの複合化などの検討を進める予定である。水素生成反応の活性を最大化させることを目的としたナノ粒子型モデル助触媒電極を作製し、このモデル電極が示す水分解活性に係わる物理化学パラメータを抽出することもできている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の成果を踏まえ、半導体光電極への表面修飾法の改良や利用可能な助触媒材料の探索を進め、半導体バルクの特性定量化および固液界面の綿密な設計に基づき、水分解反応のさらなる高効率化と長期耐久性の実現を目指す。光電気化学インピーダンス測定や走査プローブ顕微鏡測定および赤外反射分光測定による多元的な解析によって固液界面における水分解反応の物理化学機序を明らかにする。また酸素生成反応を促進する助触媒(電極触媒)の探索と修飾方法の最適化を推進することで、さらなる酸素生成反応の高効率化を目指す。具体的には、金属複合酸化物であるNiCoFeOxといった三元系の電極触媒の適用およびCoOx/IrOxといった階層的表面修飾によってその機能を最大化させることを狙う。作製した助触媒が光電極の光吸収過程を阻害してはならないため、担持量および被覆率が光透過率に与える影響をin situで電極電位の関数として追跡する予定である。ナノ粒子型電極触媒を用いたモデル電極による検討を継続し、表面担持量を変数として水分解速度と耐久性の相関について明らかにする予定である。
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