研究課題/領域番号 |
23K04918
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岡澤 厚 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (30568275)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
|
キーワード | レドックスフロー電池 / 溶解度 / 金属錯体 / 活物質 / 多成分化 / 非水溶媒化 / 電解液 / 有機ラジカル |
研究開始時の研究の概要 |
再生可能エネルギー貯蔵システムとして期待されるレドックスフロー電池の電解液について、有機元素・コモンメタルによる新規活物質を開発し、分子への置換基効果・非対称性導入によって「高濃度化」=「高エネルギー密度化」を目指す。これまでの安定有機ラジカルの研究から、錯形成による安定化を適用することで活物質のサイクル耐久性向上を目指す。加えて、類似した活物質や支持電解質を複数混合させることによる「高エントロピー電解液」の概念によって、溶解度の飛躍的な向上を目指す。また、実験と量子化学計算で求まる記述子を使った機械学習によるモデル化によって、分子論的な溶解度の解釈を試みる。
|
研究実績の概要 |
再生可能エネルギー貯蔵システムの有力候補であるレドックスフロー電池の高エネルギー密度化を目指し、活物質を「有機元素・コモンメタルのみで構成」し、「いかに高濃度溶液にするか」について、分子への置換基効果・非対称性導入と高エントロピー電解液の創製によって解決を試みた。 ポリピリジン系鉄錯体による活物質開発では、ターピリジン鉄錯体の溶解度を改善する手法の開発を進めてきた。(1)配位子上にポリエチレングリコール系置換基を導入、および(2)分子の非対称化および活物質の混合によって鉄錯体の溶解度を、無置換体のターピリジン鉄錯体の0.16 M(アセトニトリル溶媒)から最大で0.68 Mまで向上させることに成功した。これは、活物質の「多成分化」によって溶解度を向上させる新規手法であり、活物質に依存しない普遍性の高いものだと期待される。ポリエチレングリコール系側鎖による溶解度向上はDFT計算などから溶媒和エネルギーが大きく影響していることが示唆された。現在は、水系電解液に適用可能なターピリジン鉄錯体として、PEG系置換基を付けた誘導体の開発や、塩化物塩と硫酸塩を用いた異種イオン効果による溶解度の向上を現在行っている。 その他、水系レドックスフロー電池用の活物質デザインとして、高配位数のアミノポリカルボン酸キレート剤を用いた鉄錯体の高サイクル安定性や、アルキル側鎖長を変化させることでアントラキノン系誘導体の電気化学的安定性およびサイクル特性向上を目指して物質開発を進めている。 一方で、電解液デザインとしては、非水溶性のTEMPO誘導体やフェロセン誘導体をLiTFSI水溶液に高濃度に溶かす研究を進めてきた。これは、高濃度LiTFSIによって水の活量を極端に減らした「水の非水溶媒化」技術であり、予備的な実験結果として、4-位がケトン基のTEMPO誘導体では20 mol/Lを超える溶解度を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ターピリジン鉄錯体系では、非水系で溶解度を3倍程度向上する多成分化の手法を新たに開発してきた。現在、水系への適用を行っており、当初の予定よりも進んでいる。一方で、配位溶媒中に金属イオンを溶かす”metal ion-in-ligand solvent”を目指して、含窒素芳香族分子を配位性溶媒として鉄イオンの溶解性を調べてきたが、良い条件を見つけるに至っていない。このコンセプトによる研究は、当初の計画よりもやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
非水系ターピリジン鉄錯体で得られた結果は、現在論文投稿準備中である。ここで得られた他成分化による溶解度向上の知見は、水系にも適用可能であると考えられるため、現在精力的に研究を進めている。ターピリジン鉄錯体で1 mol/Lを超す濃度はいまだ報告はされていないが、非水系の無置換体と異なり水に溶ける塩化物塩や硫酸塩は溶解度0.5~0.6 mol/L と元から高いため、今後の研究によって他のレドックスフロー活物質用活物質として遜色ない溶解度を示す系が見つかる見込みは高い。対イオンの複合化:「異種イオン効果」による溶解度向上や、活物質の多成分化による溶解度向上を推進し、1 mol/Lを超える溶解度の水系ターピリジン鉄錯体正極液を目指す。 電解液デザインでは、引き続きLiTFSI水溶液を用いたwater-in-saltsの原理に基づく、非水溶性活物質の高濃度電解液の開発を推進していく。また、より安価な酢酸カリウム等への代替が可能も検討する。一方で、”metal ion-in-ligand solvent”のコンセプトとの融合を図って、鉄イオンを高濃度化する手法の開発も目指していく。 これら開発した電解液でフローセルを構築し、サイクル安定性・レート特性・出力特性といった電池特性を調べていく。
|