研究課題/領域番号 |
23K04920
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
立川 直樹 香川高等専門学校, 一般教育科(高松キャンパス), 講師 (20838221)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 熱電変換 / 温度差電池 / イオン液体 / 電解液 / 電気化学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、体温と外気温の温度差など、わずかな温度差でも電気エネルギーに変換することが可能な電池系について研究する。この電池系は、2つの電極と電解液で構成されるシンプルな電池系であるため、メンテナンスフリーのシステムになり得る。本研究の目的は、新規の電解液を用い、基礎的データを収集し、変換効率に与える影響について検討する。
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研究実績の概要 |
IoTや電力スマートグリッドを実現するためには, いたるところに電源が必要とされる. 本研究では, Fe(III)/Fe(II)のようなレドックス対を含む電解液と異なる温度の2つの電極から構成される電池系である温度差電池を研究対象としている. これまでの温度差電池は, レドックス対を溶解した水系電解液が検討されている. 本研究で, イオン液体を電解液に用いる. イオン液体を電解液に用いることにより, 適用できる熱源の温度域の拡大が期待される. イオン液体の実用化を妨げる要因は高い粘性である. 本研究の最大の特徴は, レドックス活性を有するイオン液体を温度差電池の電解液に用いる点である. これにより, 反応に関与する物質の濃度が高い電解液を実現し, 高い粘性に起因する物質輸送の課題解決を目指す. 1年目は, プロトン濃度が高い電解液の電極電位の温度依存性を検討した. 硫酸水素アニオンを構成イオンとするイオン濃厚電解液について, 電極電位の温度依存性を調べたところ, 0.8 mV/Kであり, 硫酸中での電極電位の温度依存性よりも大きい値を示すことがわかった. この電極電位の温度依存性から, 反応エントロピーを算出することができ, エントロピーの値から, 電解液中では, 水溶液中と同程度に発達した水素結合ネットワークを有している可能性が考察された. 2年目以降も引き続き, 様々な電解液について電極電位の温度依存性を検討し, 温度差電池に適した電解液を探索する. さらに, 今回の科研費で, 高い入力インピーダンスを有する電気化学測定装置の購入が決まっている. この電気化学測定装置を用いて, 様々なレドックス反応の速度論的なパラメータを明らかにする計画である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り, 電気化学測定系を構築し, イオン液体電解液および水溶液系電解液について, レドックス対の熱力学パラメータを明らかにしてきた. 硫酸イオンを含む水溶液系電解液について, 電極電位の温度依存性を検討したところ, 0.005 V/Kであることがわかった. また, 硫酸水素アニオンを含むイオン濃厚電解液について, 電極電位の温度依存性を調べたところ, 0.008 V/Kであった. この値は水溶液系に比べて, 大きい値を示すことがわかった. 熱力学的な関係式に基づき, 電極電位の温度依存性から, 反応エントロピーを計算したところ, 電解液中のミクロな構造は水溶液中と同程度に発達した水素結合ネットワークを有している可能性が考えられる. このことから, 電解系の構造形成性から, 電極電位の温度依存性に関する傾向を推測できる可能性あることがわかり, 今後, 温度差電池への応用を考えた場合, 構造性を有する電解液の適用も研究方針のひとつになり得る. 2年度以降は, 購入を予定している高い入力インピーダンスを有する電気化学測定装置を用いて, 上述の熱力学パラメータに関する測定に加え, 電荷移動速度定数などの速度論的パラメータについても解析する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画から変更なく, 様々な電解液系について, 熱力学パラメータおよび速度論パラメータを明らかにしていく. 今年度, 高い入力インピーダンスを有する電気化学測定装置が納品予定のため, 特に速度論的パラメータに関する検討を加速させていく. 具体的に, 熱力学パラメータでは, 引き続き, イオン液体電解液, 水溶液系電解液, 混合電解液について, 電極電位の温度依存性や濃度依存性を検討する. 測定結果に基づき, 電解液の構造性と電極電位の温度依存性との関係性を考察し, 温度差電池に適した電解液の選定をする予定である. 速度論パラメータでは, 高い入力インピーダンスを有する電気化学測定装置を用いて, 電池適用に必要な電気化学的な情報を測定する予定である.
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