研究課題/領域番号 |
23K04921
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分36020:エネルギー関連化学
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
茂木 俊憲 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主任研究員 (00780602)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
|
キーワード | 粉体抵抗測定装置 / 酸化物触媒担体 / 放射線グラフト重合反応 / 高分子電解質 / 溶解度パラメータ / アイオノマー / 固体高分子形燃料電池(PEFC) / 電極触媒 / 放射線グラフト重合法 / 原子間力顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
本課題では固体高分子形燃料電池電極に用いる触媒担体表面の分子修飾により均一で触媒被毒のないアイオノマー被覆を達成し、その界面構造が電極の酸素還元活性や膜電極接合体(MEA)の発電性能に及ぼす影響を明らかにする。放射線グラフト重合法によって窒素含有分子をPt/C表面と強固に結合させ、アイオノマー被覆した後の触媒層断面をイメージ計測する。MEAの電気化学インピーダンス測定に基づく構造との比較を行い、電極反応機構を明らかにする。様々な電池の電極材料界面の設計に役立つ、階層構造データから性能を予測可能な機械学習モデル構築を目指す。
|
研究実績の概要 |
本課題ではPEFC発電性能の向上に必要な高い触媒活性と低い界面抵抗を同時達成するためには、どのようにアイオノマーが触媒担体表面を被覆するべきなのか、原子間力顕微鏡(AFM)による直接計測ならびに電気化学計測から明らかにする。また、アイオノマーが被覆する触媒担体の表面構造を制御する方法として、様々な分子種を共有結合的に修飾することができる放射線グラフト重合法に基づき、スチレン誘導体モノマーからなる窒素含有分子層を触媒担体表面に均一に形成することを目指している。 研究開始年度では、AFMと相補的に行う電気化学計測方法として、粉体抵抗測定装置の開発に着手した。コントロール実験として分子修飾前の導電性カーボンブラック(CB)や酸化物であるTiO2, NbドープTiO2, Ti4O7などの粉末を圧縮し、一定電流下における電圧測定から電気伝導度(抵抗)を見積もることを達成した。特にTi4O7は酸化物でありながらも100 S/cmほどの高い伝導度を示したことから、今後高温耐久性の求められる電極触媒材料としての活用が期待できる。また、触媒担体としての使用を想定しているCBは低抵抗であるが、そのままの状態ではグラフト重合反応が進行しにくいことが分かった。そのため、CBに対して硝酸浸漬や電子線照射などの処理を行い、酸素導入を行うことで放射線グラフト重合反応が進行することを見出した。さらに、放射線グラフト重合反応の際に用いるスチレンモノマー溶液の溶解度パラメータ(SP)を計算し、CB自体のSPと比較することで、グラフト重合度の予測を行った。エタノールやジオキサン、トルエンなどの種々の溶媒を使用した場合のグラフト重合度を見積もったのち、系統的にアイオノマー被覆構造を調べる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始年度では、研究実施計画に記載した、①触媒担体への分子表面修飾法確立、および② 電気化学計測ならびにアイオノマーと触媒担体との界面構造計測について、研究を進めた。まず①について、放射線グラフト重合反応においては一定のグラフト率を達成する反応条件を絞り込むことができた。また、②に関連して、これまで電極性能を評価する際には、電気化学計測におけるORR反応評価や膜電極接合体のインピーダンス測定を行ってきたが、電気伝導度測定によって簡便に材料性能を評価できるようになったことは、研究課題遂行の加速につながった。上記の2つの観点から判断し、「(2)おおむね順調に進展している。」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
進捗状況に記載した項目のとおり、まず①に関しては、今後は窒素含有モノマーを使用して放射線グラフト重合反応を行い、実際に分子修飾された触媒担体のXPS測定を行う。また電極材料として使用する際にはホモポリマーを除去する必要があるため、溶媒洗浄した場合とソックスレー抽出をした場合とで、分子修飾担体の熱容量測定からホモポリマー含有量が少ない最適な精製方法を決定する。また、②に関連して、熊本県産業技術センターの研究員に協力していただき、粉体抵抗測定のテスト測定において開発すべき装置の仕様を決定したため、部品の発注、組み立てを行う。今後はアイオノマーと混合したインク作製、および塗布方法について、そのノウハウを東京都立産業技術研究センターの研究員に協力を得て習得し、なるべく早い段階でAFMによる構造測定を行う予定である。
|