研究課題/領域番号 |
23K04925
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
与那嶺 雄介 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (50722716)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ラマンイメージング / カロテノイド / 微細藻類 / 安定同位体 / ラマン分光法 / 藻類色素 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、微細藻類が蓄積する色素に対して、光合成によって安定同位体を取り込ませて多色化する。これらの色素を微粒子に封入し抗体等と複合化して、ラマン分光法に利用できる高感度な検出剤を開発する。この検出剤でガン細胞を多色で染色し、薬剤投与による効果をラマン顕微鏡およびフローサイトメーターで評価する。
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研究実績の概要 |
細胞の機能を包括的に解明するためにはマルチカラーでの測定が重要となり、検出色素のさらなる多色化が望まれる。ラマン分光法は蛍光分光法に比較して容易に多色化できる。本研究では、微細藻類が蓄積するカロテノイド色素のアスタキサンチン(AXT)色素に対して、光合成代謝によって様々な比率で13CO2や2H2Oを取り込ませて安定同位体(SI)置換し多色化する。これらの色素を微粒子に封入し、生体分子と複合化して、高感度な多色ラマン検出剤を作製する。これらの検出剤でガン細胞表面の複数種のタンパク質を染色し、薬剤投与による発現パターンの変化を、ラマン顕微鏡およびフローサイトメーターによるマルチカラー測定で追跡することを目的とした。本年度の成果として、(i)ヘマトコッカス細胞からのSI置換AXT([13C/12C +2H/1H]-AXT)の抽出・精製を達成した。具体的にはヘマトコッカス細胞を、SIおよび通常の光合成基質(13CO2/12CO2および2H2O /1H2O)を様々な比率で混合した培地で培養し、6種の[13C/12C +2H/1H]-AXTを誘導した。その後、細胞を破砕してAXTを有機溶媒で抽出し、逆相HPLCで4種のSI-AXTを精製できた。またラマンイメージングのピーク分離成分として利用する6種のSI置換AXTの共鳴ラマンスペクトルを得た。続いて、(ii)SI置換AXTのPS微粒子への封入を達成した。具体的には、通常のAXT とPS微粒子(直径 20 nm)を水-有機溶媒の混合液で混合し、水の比率を上げることでAXTを疎水的なPS微粒子内部に封入した。限外濾過で精製後、得られたAXT封入PS微粒子のUV-Vis吸収スペクトルを測定し、AXTの封入を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は下記の2項目を達成した。 ①ヘマトコッカス細胞からの安定同位体(SI)置換AXT([13C/12C +2H/1H]-AXT)の抽出・精製 ヘマトコッカス細胞(H. lacustris, NIES-144)を、SIおよび通常の光合成基質(13CO2/12CO2および2H2O /1H2O)を様々な比率で混合した培地で培養し、6種の[13C/12C +2H/1H]-AXTを誘導した。その後、細胞を破砕してAXTを有機溶媒で抽出し、逆相HPLCで4種のSI-AXTを精製できた。質量分析で精製を確認した結果、SI置換率の増加に伴いAXTのピークが高分子量側にシフトすることが分かった。また6種のSI置換AXTの共鳴ラマンスペクトルを測定した。得られたスペクトルを今後、ラマンイメージングのピーク分離成分として利用する。 ②SI置換AXTの親水性ポリスチレン(PS)微粒子への封入 AXTがPS微粒子に封入可能か検討した。通常のAXTを用いて、水-有機溶媒(THF)の混合液に溶解し、PS微粒子(表面がカルボン酸修飾されたもの;直径 20 nm)と混合した。続いて水の比率を上げることで、AXTを疎水的なPS微粒子内部に追いやり、同時に膨潤していたPS微粒子を収縮させてAXTを封入した。限外濾過スピンカラム(分画分子量100 kDa)で精製後、得られたAXT封入PS微粒子(AXT@PS)のUV-Vis吸収スペクトルを測定し、AXTの封入を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、(i)本年度に確立したPS微粒子へのAXT封入法を利用して、6種のSI-AXTを封入したSI-AXT@PSを調製し、(ii)微粒子表面のカルボキシル基に対してアミンカップリング法を用いて、ガン細胞の膜タンパク質を特異的に認識する生体分子(抗体/DNAアプタマー)を修飾する。(iii)この抗体/DNAアプタマー修飾AXT@PSを用いてガン細胞を染色し、ラマン顕微鏡で検出可能か検証する。
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