研究課題/領域番号 |
23K04926
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
奥野 貴士 山形大学, 理学部, 教授 (80411031)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 細胞膜 / 膜タンパク質 / オンチップ / オンチップ解析 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞膜には様々な種類の膜タンパク質が存在し、細胞機能を調節する大切な役割を担っています。例えば患者さんの僅かな細胞試料から、膜タンパク質の働きを精密に計測できると、疾患の原因解明や新薬開発に役立ちます。しかし、僅かな細胞試料から標的膜タンパク質を医療現場で簡単に調製できるシステムが、まだありません。本研究は、スライドガラス上で、簡単に標的膜タンパク質を精製するシステムを開発し、まだ誰も解析できない膜タンパク質の解析を目指します。
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研究実績の概要 |
本研究は、膜タンパク質の調製過程における可溶化と再構成のボトルネックを経由せずに、ヒト培養細胞膜から脂質膜に埋めこんだ膜タンパク質として直接精製する「オンチップ膜タンパク質調製法」を創生する。本年度は、細胞膜と基板支持膜の融合方法を検討する段階にあった。そこで、ヒト培養細胞由来の細胞試料とガラス基板上の融合する条件検討を行った。膜融合の評価方法の確立と融合条件の検討を行った。その結果、支持基板とその上に固定した培養細胞間の蛍光脂質の交換反応が、PEGと金属イオンで促進できることがわかった。特にPEGの場合、我々の反応条件において、脂質交換が観察される細胞の割合が、非添加の場合の5%からPEG添加により80%まで飛躍的に脂質交換反応が促進されることがわかった。また、カルシウムイオンの添加においても30%まで促進できることがわかった。これら結果から、細胞膜と基板支持間の脂質分子の交換反応ができる条件を見出したと考えられた。PEGはハイブリドーマ作製に一般的に用いられている試薬であり新規性はないが、本研究目標の達成にも適することを確認した。さらに、脂質分子だけではなく、膜タンパク質の細胞から基板支持膜への移行について、GFP融合膜タンパク質を発現した細胞を用いて同様の実験を検証したが、現時点で、膜タンパク質の移行は確認できておらず、引き続き観察等の条件検討が必要であることがわかった。並行してリポソームと超音波破砕で調製した細胞膜試料を基板上で直接融合する実験等も実施している。予定していた研究を順調に進められ、膜学会(11月)にて研究成果の発表に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目標として、細胞膜シートと基板支持脂質膜の融合方法を確立することにあった。細胞膜試料とモデル支持膜(基板支持脂質膜)を融合するために、今回注目したのは、ハイブリドーマ作製に一般的に用いられている PEG試薬を利用する着想に至り、これまで、脂質交換反応が5%であったところを80%まで飛躍的に向上させることができ、膜融合にかなり近づく条件を見出すことに成功した。また、上記の研究がうまくいかない場合を想定し、並行して実施してきた方法にも進展が見られた。培養細胞を超音波処理し、細胞由来の膜小胞を調製し、リポソームと混合後、支持基板上に標的膜タンパク質を固定する方法を検討してきた。本年度の研究において、細胞膜由来の蛍光脂質とリポソーム由来の蛍光脂質が融合した基板支持膜の形成を共焦点レーザー顕微鏡での観察に成功し、細胞膜と基板支持脂質膜が融合したモデル膜調製への手応えを得ることができた。ただ残念ながら、開発を進める両方方法において、膜タンパク質の移行を確認することができておらず、その原因を突き止め、解決する必要があり、引き続き検討を行っている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
基板脂質膜の融合条件はある程度方向性が定まったものの、基板上の膜タンパク質の観察には至っていない。そこで、融合膜の評価に適した細胞試料を調製する必要があると考えており、蛍光標識膜タンパク質の発現量・効率をあげた培養細胞を準備し、評価に用いるなどを計画している。しかしいずれの方法においても、膜タンパク質の移行効率が低いことが想定されるため、本年度確立した方法以外にも効果的に膜タンパク質を基板支持脂質膜に移行する手法についても引き続き開発を進める。そして本年度からは、基板表面への抗体を固定方法の確立と、それら抗体を介した、基板支持膜中の膜タンパク質の固定条件を検討する計画である。具体的には細胞表面側にGFP,His-tag等を付加した膜タンパク質を発現した培養細胞を準備し、細胞膜やモデル脂質膜上の標的分子を基板上の抗体が補足する基板固定方法を確立する。そして、それら反応を観察するために適したマイクロ流路及びその流路への電極の配置と、電場依存的な標的分子の輸送方法を確立していく計画である。並行して、次年度に計画する全反射蛍光顕微鏡、AFM、電子顕微鏡による観察ステージの準備にも取り掛かる予定である。
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