研究課題/領域番号 |
23K04930
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大澤 昂志 大阪大学, 大学院薬学研究科, 助教 (00783226)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 核酸化学 / 人工核酸 |
研究開始時の研究の概要 |
核酸医薬の活性向上と毒性低減を論理的に両立するには、多種類の架橋型核酸を効率的に供給できる方法論を確立し、核酸医薬の構造と機能性の相関関係を詳細に明らかにする必要があると考えた。そこで本研究では、S-アルキル化されたチオアミドとアミン類からアミジン類が簡便に合成できることを利用して、オリゴ核酸中の架橋型核酸をピンポイントで化学修飾する方法を開発し、誘導化したオリゴ核酸の薬効と肝毒性を評価する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、架橋型核酸の化学構造と核酸医薬の薬効・肝毒性の相関関係を詳細に明らかにするためのオリゴ核酸中の架橋型核酸のピンポイント化学修飾法の開発を目指して研究に取り組んだ。具体的には、チオイミダート構造を有する架橋型核酸を導入したオリゴ核酸を種々アミン類で処理することでアミジン架橋型核酸に変換できないかと考え、種々の検討を行った。その過程で、チオイミダート架橋型核酸はpH6以下の弱酸性条件下で開環し、4'位にチオエステルを有する2'-アミノDNA(開環体)に変換すること、得られた開環体はpH8以上の弱塩基性条件下でアミンとチオエステルが反応して分子内環化が進行し、アミド架橋型核酸(AmNA)に変換されることを突き止めた。 我々はこの一連の反応に興味を持ち、チオイミダート架橋型核酸やその開環体の性質について深く追求することにした。はじめに、得られたオリゴ核酸の相補鎖DNAやRNA結合能を融解温度(Tm)測定により評価した結果、チオイミダート架橋型核酸やAmNAで修飾したオリゴ核酸が形成する二重鎖は、天然のDNA/DNA、DNA/RNA二重鎖と比較して非常に安定である一方、開環体を含むオリゴ核酸は二重鎖の安定性を大きく不安定化することが明らかになった。これはチオイミダート架橋型核酸が、オリゴ核酸の二重鎖形成能をpHにより制御可能な人工核酸スイッチとしての機能を有していることを示唆する結果である。さらに興味深いことに、Tm測定の結果を解析する中で、チオイミダート架橋型核酸の開環体は相補鎖核酸との二重鎖形成をトリガーに分子内環化が進行しAmNAへ変換する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたチオイミダート架橋型核酸からアミジン架橋型核酸への変換は未達成であるが、チオイミダート架橋型核酸が、オリゴ核酸の二重鎖形成能をpHにより制御可能な人工核酸スイッチとしての機能を有している可能性があるという、研究開始当初は期待していなかった非常に興味深い性質を見出すことができた。このように当初計画とは異なる形ではあるが、順調に研究成果を挙げることができている。
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今後の研究の推進方策 |
チオイミダート架橋型核酸からアミジン架橋型核酸への変換検討と並行して、チオイミダート架橋型核酸のpH応答性人工核酸スイッチとしての機能を実証するための実験を行う。現状は、チオイミダート架橋型核酸で修飾したモレキュラービーコン型ヘアピン二重鎖の合成と蛍光スペクトル測定を計画している。また、相補鎖核酸との二重鎖形成をトリガーにするチオイミダート架橋型核酸開環体のAmNAへ変換も興味深いので、相補鎖存在下での分子内環化反応についても検討を行う。一方で、チオイミダート架橋型核酸の弱酸条件下での開環、弱塩基性条件下での分子内環化はそれぞれ24時間程度要する遅い反応であることから、チオイミダート架橋型核酸をより有用なpH応答性人工核酸スイッチにするための分子設計と合成も行う。
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