研究課題/領域番号 |
23K04932
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
長尾 聡 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 散乱・イメージング推進室, テニュアトラック研究員 (30452535)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | タンパク質 / 多量体 / 協同性 / 分子デザイン / 構造解析 / 時分割測定 / X線小角散乱 |
研究開始時の研究の概要 |
天然ではアロステリーや協同性と呼ばれるリガンド結合能を変調させる巧妙な分子機構が備わっているタンパク質が数多くある。一方で、分子デザインにより上述の機能をもつ人工タンパク質を自在に構築するには全く至っていない。本研究では、一酸化炭素ガスの結合において協同性を示したミオグロビンのヒンジ領域変異型の二量体を足がかりとし、リガンド結合の協同性を高める変異体ライブラリを構築し、それらの多量体構造の結晶・溶液構造解析を行う。協同性発現に関わるサブユニット内・サブユニット間相互作用を抽出し、分子デザインにフィードバックすることでタンパク質にリガンド結合の協同性を付与する分子設計指針を得る。
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研究実績の概要 |
本研究では、ミオグロビンをモデルタンパク質として用い、ドメインスワッピングによるミオグロビンの多量体形成を分子進化させ、その多量体の構造と機能解析を通じて、協同性をタンパク質に付与するための分子設計原理を見出すことを目的としている。ミオグロビンは単量体のタンパク質であるが、研究代表者はこれまでにループ領域に3つのAla変異導入を行うと二量体となることを見出している。2023年度はまず、この三置換変異体を初期型変異体として、その多量体の酸素結合特性および分子形状解析を行うためのX線小角散乱(SAXS)測定系の構築を行った。 初期型変異体の酸素結合特性はミオグロビンの酸素結合型と解離型の平衡状態を酸素分圧の制御により変化させる酸素結合曲線の測定により調べた。その結果、初期型変異体の二量体は単量体や野生型ミオグロビンよりも高い酸素親和性を有しており、測定装置の検出限界により正確な親和性を測定できないことが明らかとなった。そこで、酸素親和性を下げるための追加の変異導入が必要となり、四置換変異体の作製を行った。 また、酸素結合前後の分子構造変化のダイナミクスを測定するため、時分割測定が可能なSAXS/紫外可視吸収(UVVis)測定セルの構築を行った。その結果、標準タンパク質として用いたヘモグロビンにおいて、酸素結合型ではマイクロ秒の時間領域、一酸化炭素結合型ではミリ秒の時間領域で時分割UVVisスペクトルを測定することに成功した。また、時分割SAXSについてもミリ秒の時間領域での測定を行い、リガンド結合前後のSAXS曲線を観測することが出来た。次年度は酸素親和性を下げたミオグロビン四置換変異体の多量体に対して時分割SAXSおよびUVVis測定を行い、構造と機能の相関について解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度はミオグロビン多量体の酸素結合特性の評価を行うための時分割測定系の構築を主に行った。モデルタンパク質として四量体の酸素結合タンパク質であるヘモグロビンを標準試料として用いて、時分割SAXS測定を行うためのセルを用いてSAXSと同時計測が可能なUVVisスペクトル測定系を構築した。酸素結合型ヘモグロビンのTR-UVVis測定により、マイクロ秒でおこる酸素結合過程の観測に成功したことから、酸素結合特性の評価のための計測系構築が進展したため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は「リガンド結合による構造変化」の観測が可能な時分割SAXS測定系の構築を進め、2023年度に構築を進めた機能測定系と連動させ、構造と機能の同時計測系の構築を進める。試料については、初期型変異体の酸素親和性が想定よりも高く酸素結合曲線の測定が装置の検出限界により困難なことが分かり、対策として親和性を1桁ほど低下させる変異導入をミオグロビン初期型変異体に対して行った四置換変異体を調製した。この四置換変異体を用いて進化型変異体の多量体を作製し、それらの構造と機能の計測を行い、リガンド結合の協同性が発現する分子機構の理解に取り組む。
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