研究課題/領域番号 |
23K04948
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37020:生物分子化学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
近藤 次郎 上智大学, 理工学部, 教授 (10546576)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 核酸医薬品 / X線結晶解析 / RNA / 生物模倣科学 / 構造生物学 |
研究開始時の研究の概要 |
塩基配列という一次元情報のみに頼った従来の核酸医薬品のデザイン手法を刷新し、立体構造という三次元情報に基づいた新しいコンセプトの核酸医薬品およびそのデザイン手法を提案・確立する。 rRNAやtRNA、リボザイムなどの機能性RNA分子を構成するモチーフの安定性と立体構造を分光学的手法やX線結晶解析法を用いて評価し、安定性と構造均一性の高いモチーフを選抜する。そして、mRNAにハイブリダイズすると選抜したモチーフを形成するような核酸医薬品をデザインし、タンパク質合成阻害能力を評価する。 以上の研究によって、分子進化の過程を経て洗練されてきたRNAの立体構造を模倣する新しい創薬手法が提案できる。
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研究実績の概要 |
本研究では、塩基配列という一次元情報のみに頼った従来の核酸医薬品のデザイン手法を刷新し、立体構造という三次元情報に基づいた新しいコンセプトの核酸医薬品、およびそのデザイン手法を提案・確立することを目的とする。 2023年度は、当初の予定通り「リボソームの高分解能結晶構造から立体構造モチーフを探索する」という課題に取り組んだ。Protein Data Bankに登録されているRNA の立体構造情報のうち、特にリボソームの高分解能結晶構造はまさに宝の山であり、そこに含まれる RNA の立体構造モチーフと塩基対の情報の多くが論文で触れられることなく手つかずの状態で眠っている。そこで、最も高い分解能で構造解析された大腸菌リボソーム中の16Sおよび23S rRNA の立体構造を分子表示ソフトウェアPyMOLを使って詳しく観察し、まずは(1)ヘアピンループ、(2)内部ループ、(3)バルジ、の3種類に分類した。さらに、(1)~(3)のそれぞれについてさらに細分化し、既知の構造モチーフと未知の構造モチーフに分類した。次に、(1)~(3)を構成する塩基の特徴を捉えるために、それぞれを構成する塩基の割合や、モチーフの入口と出口にある塩基の割合を調べた。その結果、既知の構造モチーフは、入口にG、出口にAをもつ傾向があることが明らかになった。以上の結果についてはデータベース「NA3DMotif」として公開済である。 上述のモチーフの中から、特に(2)の内部ループに着目し、このうち6種類の立体構造モチーフを核酸医薬品のデザインのベースとして選択した。これらの構造モチーフを形成するように設計したオリゴヌクレオチドを化学合成・精製を完了した。2024年度にはこれらの物性評価と立体構造解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は「リボソームの高分解能結晶構造から立体構造モチーフを探索する」という課題に取り組む予定であったが、これについては予定通り実施することができた。得られた成果についてはデータベース「NA3DMotif」として公開済であり、現在は投稿論文を執筆中である。また、当初は2024年度に行う予定であったRNAの物性評価と構造解析についても、すでにサンプルを調製済であり、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度にリボソームRNAの結晶構造から抽出した6種類の立体構造モチーフについて、二本鎖融解温度などの物性評価と、X線結晶解析による構造研究に取り組む。すでにサンプルは化学合成・精製を完了しており、速やかに実施する予定である。 これに加えて2024年度には、上述の6種類の立体構造モチーフを形成するようにデザインしたトランスフォーマー核酸(ミスマッチ塩基対を含むように設計したアンチセンス核酸)を化学合成し、無細胞翻訳系を用いた翻訳阻害活性の評価を行う予定である。 上述の実験で立体構造の解析に成功した場合には、得られた構造情報に基づいて塩基やリボース環に修飾を導入し、核酸医薬品としての能力(mRNAへのハイブリダイゼーション能、翻訳阻害活性、ヌクレアーゼ耐性)の向上を目指す予定である。
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