研究課題
基盤研究(C)
現在、即時療法として利用可能なOff-the-Shelfとしてのがん免疫療法の開発が海外において急速に進んでいる。いずれのがん免疫療法も治療奏功に至るには、前提として、患者がん細胞において標的抗原が実際に提示されていることが重要である。しかし、技術的律速もあり、治療時における抗原提示情報は未検証であることが多い。治療標的となる抗原の提示をがん細胞で後押しするような“ブースター薬”の開発は、がん免疫療法の併用薬として非常に価値の高いものであると考えられる。本研究は最新の質量分析法と分子生物学的手法を駆使し、がん免疫療法における抗原提示ブースター併用薬の可能性について探索するための研究である。
申請者は当該年度までにより多くのイムノペプチドの配列種の同定のための網羅的イムノペプチドミクス分析系と、目的の配列種の同定を集中的に行うための標的型イムノペプチドミクスの分析系を確立した。初年度は網羅的イムノペプチドミクス分析手法を用いることでKRAS変異を有するがん細胞株のスクリーニング分析を行い、KRAS変異を有するネオ抗原を提示している細胞株の選定を行った。これらの結果については一部先行して学会等で報告済みである。また、PROTACによる抗原提示増強作用の解析のため、レンチウィルスを用いて目的のKRAS変異を安定発現する細胞株の樹立を行い、この細胞に網羅的・標的型イムノペプチドミクスを用い目的抗原が提示されていることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
申請者は当該年度までに複数種のがん細胞株を用いたイムノペプチドミクス解析の結果から、KRAS変異種(G12D、G12V、G12Aなど)を有するネオ抗原候補配列を提示する細胞株を同定することに成功した。G12C配列種を内在性に提示する細胞株についても現在分析を進めている。また、KRAS-G12Vを有するネオ抗原配列を内在性に提示することを確認済みの細胞株Colo-668に、レンチウィルスベクターを用いてKRAS-G12Dの安定発現株を確立し、G12Vに加え、G12Dのネオ抗原配列種も抗原提示されうることを確認し、安定発現株が分析モデルとして有用であることを確認した。次年度は予定通り、PROTACによる抗原提示増強作用についての検証に移行する予定である。
引き続きG12Cのネオ抗原配列の同定とモデル細胞株の作製・樹立を行う。PROTAC試薬については受注後生産品で納期まで長時間必要であったため、すでに合成依頼をし、試薬が届き次第、KRASタンパク質の分解亢進と抗原提示量の関係について、標的型質量分析をもちいたイムノペプチドミクス分析により、その効果について検討を行う予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Cancer Science
巻: 115 号: 4 ページ: 1048-1059
10.1111/cas.16118