研究課題/領域番号 |
23K04975
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38010:植物栄養学および土壌学関連
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
渡邊 芳倫 福島大学, 食農学類, 准教授 (30548855)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | サブサハラアフリカ / ナミビア / 水田 / 土壌 / 有機物 / 塩類集積 / 持続的な農地利用 / 水田土壌 / 土壌有機物の比較 / 塩類集積の評価 |
研究開始時の研究の概要 |
貧栄養なサブサハラアフリカの土壌のうち氾濫原や季節性湿地の低地土壌は比較的肥沃度が高く水田利用が検討されているが、南部アフリカにおいて土壌劣化が発生するかは不明である。そこで本研究では半乾燥地のナミビアの低地氾濫原における水田利用が土壌化学性に与える影響の解明を目的に、作付け年数の異なる水田と手つかずの湿地(自然湿地)において、持続的な農業生産に不可欠な土壌有機物含量と塩類集積の進行を比較検討する。研究の方法としては、土地利用ごとの有機物含有量を求め、安定同位体により残渣の土壌有機物への寄与率を明らかにする。土壌の塩類化(ECe)とアルカリ化(SAR)の程度を分析することで塩類集積を評価する。
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研究実績の概要 |
半乾燥地のナミビアの低地氾濫原において、水田利用が土壌化学性に与える影響を評価する為、稲作栽培をしていない区(0年)、5年継続区、10年継続区、15年継続区の4地域を選定し、その土壌サンプルを採取した。また、各試験区より、稲わらサンプル、雑草サンプルを採取した。 調査地の雨量は冬に集中し、年間降水量は約300~600mm程度に推移する半乾燥地であるが、ザンベジ川の氾濫原に位置し、サンベジ川は年間を通して水か流れていた。土壌は表層が砂質であり、深度10~20cmにおいて粘土が含まれる層が見られた。調査は、Kalimbeza Rice Projectの試験圃場で実施した。試験圃場のイネは、天水とザンベジ川の水をポンプアップして灌漑された水を利用しており、水田として栽培されていた。調査した2023年度は、2024年1月~2月にかけて例年になく雨が降らず、ポンプが故障してしまったことも重なりコメを収穫することはできなかった。このため、日本において同様の状況の作成を試み、土壌水分の変化を測定しつつ、イネの収量調査を実施した。また、土壌・稲わら・雑草サンプルの化学性分析の仮実験を実施した。また、現地試験圃場において収量調査が実施できる体制を構築した。 本研究の目的である、①水田の利用が土壌有機物に与える影響について、イネの収穫後に水田には家畜が放牧され、稲わらと共に家畜糞尿による有機物供給がある事、水田雑草はそのまま放置され、それによる供給もあることが考えられた。また、②水田使用による土壌の塩類集積への影響に関しては、聞き取り調査より、イネの栽培年数が0~15年の間で、塩害によるイネの生育阻害は出ていないことが解った。しかし、一部で、栽培年数とは関係なく、塩害によりイネが育たない水田が存在し、局所的に塩類集積がみられることが解った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、申請時に予定していた、試験圃場の基礎的な情報の収集とサンプリングポイントの選定、1回目の土壌・稲わら・雑草の採取であった。主要な研究拠点となるKalimbeza Rice Projectの試験圃場の土壌状態、栽培管理方法、試験栽培継続に必要な資材や課題を調査・判定することができた。また、Kalimbeza Rice Projectから西に位置するナミビア大学においてイネの栽培試験が継続されていることが解り、ナミビア大学と水田利用による土壌化学性への影響を共同で研究することを現地研究者と結ぶことができた。 本研究の目的、①水田の利用や管理が土壌有機物に与える影響 については、現場の観察より有機物供給が稲わらとそれを供給源とした家畜の糞尿の供給があること、雑草は持ちだされておらず現場に放置されている事より、雑草からの供給もあることが解り、これらのサンプリング(糞尿は除く)をすることができた。2024年度に、これらサンプルを分析することで、水田の利用により土壌有機物が増えるのか減るのか?また、有機物共有源として何がどの程度影響を与えているのか?、これらを分析・考察する予定である。 もう一つの目的である、②水田利用による塩類集積の発生・軽減の有無と塩害回避適地の判定については、現場の観察より塩害の影響はほとんど出ていない事が解った。しかし、一部の水田において、栽培年数とは関係なく塩類集積によるイネの生育阻害が発生していることが発見された。これより、特定の土壌において塩類集積があり、その地点を回避して水田を作成する必要があることが解った。 以上より、本年度の研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に採取した土壌・稲わら・雑草において、炭素・窒素含有量を分析予定である。また、これらの安定同位体を分析することにより、土壌有機物の供給源が稲わら由来であるのか、雑草由来であるのかを推定する。同様に持ち帰ったサンプルの塩類集積をEceやSARの判定基準を用いて評価する予定である。 ナミビアでは、Kalimbeza Rice Projectとナミビア大学の圃場でイネの栽培試験を継続し、その収量を求めると共に、土壌・稲わら・雑草を再度サンプリングする予定である。また、2023年に実施できなかった、家畜糞の影響について調査を試みると共に、特異的に発生する塩類集積の水田の発生要因について調査を進める予定である。 以上より、ナミビアの半乾燥地において、水田の利用の継続により、土壌有機物や塩類集積がどのように変化するのかを明確にし、持続的な農業(水田)のための農地管理方法について検討する。
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