研究課題/領域番号 |
23K04981
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38010:植物栄養学および土壌学関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
江藤 真由美 大分大学, 理工学部, 講師 (40725701)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ケイ酸 / 重合挙動 / ケイ酸集積植物 / 錯形成 / ケイ素 / バイオミネラリゼーション / 重合反応 |
研究開始時の研究の概要 |
イネに代表されるケイ酸集積植物内での特異的なケイ酸の化学に関して、本研究では、根から吸収したケイ酸を道管を通して輸送する機構に焦点を当てる。道管溶液中では、ケイ酸は過飽和状態であるにもかかわらず、ほぼ重合せず単量体として存在している。この重合が抑制されている事に対して、道管溶液中の溶存成分に着目(特に二酸化炭素や炭酸水素イオン)し、ケイ酸との相互作用の可能性を探る。 具体的には、まず実験室ベースで炭酸成分がケイ酸の重合やシリカ及び粘土鉱物の溶解反応に与える影響を確認する。さらにイネの道管溶液の分析を実施し、結果を組み合わせることで、その相互作用の有無を明らかにしていく。
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研究実績の概要 |
イネ科植物に代表されるケイ酸集積植物中での特異的なケイ酸の輸送に関する基礎研究として炭酸水素イオン及び二酸化炭素に着目し, 研究を行っている。初年度(2023年度)は, 基礎研究としてラボにて非晶質シリカの溶解及びケイ酸の重合過程に与える炭酸水素イオン, 二酸化炭素の影響を調査した。 まず, 炭酸水素イオン共存下では, 非晶質シリカの溶解は対照溶液と比較し, 促進されることが明らかとなった。溶解実験では、明確な炭酸水素イオン濃度依存性が確認され、実験を行ったいずれの濃度域でも非晶質シリカの溶解が促進された。加えて、pHを変化(中性から弱アルカリ性)させた場合、いずれのpHにおいても非晶質シリカの溶解が確認された。また, 過飽和ケイ酸溶液に対して, 炭酸水素イオンを共存させると, ポリケイ酸の一部が分解されることが明らかとなった。実験結果より、ケイ酸と炭酸水素イオンが1 : 1錯体のみを形成すると仮定した場合の条件付き生成定数は19 mM-1と見積もることができた。 二酸化炭素の効果に関しても, 同様に研究を行った。過飽和ケイ酸溶液に対して, 二酸化炭素を吹き込んだ場合, ケイ酸の重合が同一条件で窒素ガスを吹き込んだ場合よりも抑制される可能性が示唆された。しかしながら, 二酸化炭素(gas)を用いた実験では, 一部結果のエラーバーが大きく, 現在, 再実験を進行中である。 溶解及び重合実験と並行して, DFT計算を用いたケイ酸-炭酸水素イオン(or 二酸化炭素)錯体の安定化エネルギーについても, 現在, 計算を進行中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は, 主に炭酸水素イオン, 二酸化炭素共存下での非晶質シリカの溶解挙動及びケイ酸の重合過程を調査した。実験については, 大まか完了し, 炭酸水素イオン共存下において非晶質シリカの溶解が促進されるという結果を得ることができ、概ね予定通りに進んだ。 一方、ケイ酸の重合過程に与える二酸化炭素の影響については、実験の再現性に乏しい実験があり、現在、実験条件等を再確認して、検証を進めているところである。 DFT計算による二酸化炭素(or 炭酸水素イオン)とケイ酸間の安定性の評価に関しては、Gaussianの準備等で遅れ、開始時期は予定よりも遅れてはいるが、検討を進めている段階である。 以上の結果から、2023年度の進捗状況に関しての区分を(3)やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究予定からやや遅れ気味である次の2点, (1) 二酸化炭素共存下でのケイ酸の重合実験, (2) DFT計算については, 以下のような予定で2024年度の6月から7月の完了を予定している。(1)については, CO2分圧, 温度をはじめとする各種条件を再検討し, 現在実験を進めている. この内容については2024年度6月をめどに結果をまとめる予定である. (2)についても, 現在計算条件を再検討し, 同じく6-7月をめどに結果をまとめることができると考えている。 2024年度より予定しているイネを用いた導管溶液中のケイ酸及び共存物質に関する調査については, 2023年度中にイネの提供先の確保は予定通り終了した。今後, 時期を見てイネを採取, 導管溶液の分析を実施する予定である。加えて、入手した苗を利用して、二酸化炭素(or 炭酸水素イオン)が共存する場合のケイ酸の取り込みについても調査を開始する予定である。2年目となる2024年度では、まず[研究B]として取り上げる「イネの成長過程での導管溶液の調査」を優先する。水田より採取した各成長段階の導管溶液を採取する際に、溶存CO2濃度を併せて測定する。加えて、可能であれば溶存炭酸水素イオン濃度の測定も試みる予定である。さらに、水田土壌を採取し、水田土壌の炭酸水素イオン共存下での溶解実験も併せて行い、土壌間隙水中へのケイ酸の溶解に与える二酸化炭素及び炭酸水素イオンの影響を追跡する予定である。
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