研究課題/領域番号 |
23K05014
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
赤沼 元気 学習院大学, 理学部, 助教 (30580063)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | Mgs1 / G4 / グアニン四重鎖 / DNA複製 / S. cerevisiae |
研究開始時の研究の概要 |
ゲノムDNA上に形成される高次構造であるグアニン四重鎖(G4)は、テロメアの安定化や転写・翻訳制御など、細胞機能に重要な役割を果たす。その一方でG4構造はDNA複製時の障壁になるため、DNA複製フォークはG4を認識し、解除した上で複製を再開させる必要があるが、そのメカニズムの詳細は不明である。出芽酵母の多機能性タンパク質であるMgs1は、DNA複製フォークとG4の双方に結合することから、G4を形成するDNA配列の適切な複製に重要な役割を果たしていると予想した。そこで本研究では、G4配列の複製に関与する機能のみを失ったMgs1変異体を用いてG4配列を適切に複製するためのメカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、ゲノム上に形成されたG4構造に対応するためのMgs1の機能を明らかにし、G4配列を適切に複製するためのメカニズムを理解することを目的としている。そこでMgs1の変異体ライブラリーからG4構造の正確な複製に影響を及ぼすような変異体の発掘を予定している。しかし、G4構造を形成するDNAの複製精度・効率を簡易的にモニターできる実験系は確立されていなかった。そこで本年度は主にこの実験系の構築に取り組んだ。 G4配列を含むプラスミドを作製し、酵母内でのプラスミドの複製効率にG4構造が影響するのかを検証したが、G4配列の有無でプラスミドの保持率に大きな変化は見られなかった。そこで、酵母ゲノムにG4配列を導入し、G4配列周辺の複製精度を評価するための実験系構築を試みた。CAN1遺伝子内にG4配列を導入した株を作製し、カナバニン耐性を指標に突然変異頻度をモニターしたところ、G4構造導入による突然変異頻度の有意な上昇が認められ、Mgs1の過剰発現によってこの変異頻度はさらに増加した。また、ゲノムの複製起点近傍にG4配列を導入した株を作製し、増殖速度への影響を観察した。この株ではG4安定化剤を培地に加えた際に増殖速度の低下が認められた。さらに、この株を用いてin vivoにおけるMgs1のG4構造への結合をChIP-qPCRでモニターできる実験系の構築に成功した。その一方で、精製Mgs1を用いた実験にも取り組み、Mgs1のC末端がDNA結合に重要な役割を果たしていることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
G4構造の複製精度や効率を簡易的にモニターするための実験系の構築に取り組み、比較的容易にin vivoでG4配列の影響を検出することに成功した。これらの実験系を活用してG4構造を含むDNAの正常な複製に影響を及ぼすMgs1の変異を探索するのは今後の課題であるが、精製タンパク質を用いた実験ではC末端変異体のDNA結合能が低下することを見出しており、おおむね順調であると言える。 CAN1遺伝子内にG4配列を導入した株において、突然変異頻度の上昇が確認されたが、Mgs1を過剰に発現させることでさらに突然変異頻度が増加することが明らかになった。CAN1遺伝子内に導入したG4配列と変異部位との位置関係を調べたところ、G4配列中に1~8塩基の欠損が多く認められた。この結果は、Mgs1が過剰に存在するとG4配列の正常な複製が阻害されることを示唆している。 ゲノムの複製起点近傍にG4配列をタンデム(4回繰り返し)に導入した株の増殖はG4の安定化剤であるPhenDC3によって抑制された。強固なG4構造が複製開始点近傍に構築されることで、複製の開始、あるいは伸長が阻害される可能性が考えられる。この株を利用して、細胞内でMgs1がG4構造に優先的に結合するのかをChIP-qPCRで検証した。その結果、Mgs1の結合量はゲノムの任意の領域と比較してG4配列付近の方が有意に高いことが示された。 精製Mgs1を用いてDNA結合親和性を評価した実験では、通常のssDNAと比較してG4構造を含むDNAに対するMgs1の結合親和性が高いことが確認できた。さらに、DNAに対する結合親和性は、Mgs1のC末端に変異を導入することで低下することが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に確立したG4構造を形成するDNAの複製精度・効率を比較的容易にモニターできる実験系を用いて、G4配列の複製に影響を及ぼすMgs1の変異を探索する。 CAN1遺伝子にG4を導入した株ではMgs1の過剰発現がG4配列周辺の欠失を促進するような結果が得られているので、この変異導入効果に影響を及ぼす変異体を探索する。ゲノムの複製起点近傍にG4配列をタンデム(4回繰り返し)に導入した株については、Mgs1の過剰発現や欠損が増殖速度に及ぼす影響を検証する。有意な効果が認められた場合、Mgs1への変異導入の影響も精査する。これらの解析からG4配列の複製に影響を及ぼすMgs1の変異候補が見出された場合、ChIP-qPCRやEMSAによるG4 DNAへの結合親和性への影響についても調査する。その一方で、Pif1やHrq1 G4ヘリカーゼ、Kem1 G4ヌクレアーゼなどのG4構造解消に関わるタンパク質をコードする遺伝子変異株において、Mgs1の過剰発現と欠損の影響を観察することで、mgs1と遺伝的に相互作用する因子を探索する。
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