研究課題/領域番号 |
23K05031
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
岡野 圭子 関西医科大学, 医学部, 講師 (90454610)
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研究分担者 |
伊藤 久美子 (三輪久美子) 名古屋大学, 理学研究科, 特任助教 (30444368)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | シアノバクテリア / 概日時計 / タンパク質 / リン酸化 / 翻訳後制御 |
研究開始時の研究の概要 |
シアノバクテリアの概日時計では、3つのKaiタンパク質とATPのみで試験管内でも化学的振動を示し、その振動機構の理解が進んできた。一方、細胞内でこの振動体は様々な環境的外乱に晒されるが、24時間振動を頑健に刻み続ける機構は明らかではない。これまでに細胞内KaiCの複数の機能未知分子との相互作用、さらに新規のKaiCリン酸化部位を同定し、新規翻訳後制御の可能性を見出した。本研究では、KaiC複合体および新たなKaiCリン酸化の時刻変動による翻訳後制御に着目し、変異体による機能解析をin vivoとin vitroで行い、細胞内で時計を安定的に維持する機構を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
シアノバクテリアの概日時計では、3つの時計蛋白質とATPだけで試験管内でも化学的振動を示し、分子レベルでその振動機構の理解が進んできた。一方、様々な環境的外乱に晒される細胞内で、この振動体が正確な24時間振動を頑健に刻み続ける機構は明らかではない。我々は、これまでに定量的生化学と質量分析装置を組み合わせ、細胞内で時計タンパク質KaiCが複数の機能未知分子とそれぞれ異なる時刻に相互作用していること、さらに新規のKaiCリン酸化部位を同定し、未知の翻訳後制御の可能性を見出してきた。本研究では、KaiCを足場にした細胞内複合体および新たなKaiCリン酸化の時刻変動による翻訳後制御に着目し、変異体による機能解析を行い、細胞内で時計を安定的に維持する機構を明らかにすることを目的としている。 KaiC新規結合因子の解析においては、15の候補遺伝子の破壊株、過剰発現株を作成しその変異体の概日周期、温度補償性への影響、生育への影響などを確認した。しかし、顕著な影響がある遺伝子は現在までに得られていない。 KaiCの新規のリン酸化部位、3カ所については、アミノ酸置換により、リン酸化、脱リン酸化を模倣した変異体を作成し、リズム周期、生育、暗パルスへの応答などへの影響を確認した。その結果から最も顕著な表現型を示す新規リン酸化部位について、さらに詳細に解析を行なった。研究協力者の高尾敏文博士(大阪大学)と、量や時間依存的なリン酸化の変化の詳細を質量分析により解析することを試みたが、in vivo、in vitroのどの時間においてもS320のリン酸化ペプチドを同定出来きず、このリン酸化はかなり不安定であることが示唆された。S320変異体の詳細解析において、S320のリン酸化により既知のリン酸化部位S431,T432のリン酸化の制御、KaiCの分解、環境応答との関与などが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究は、KaiC新規結合因子の解析においては、15の候補遺伝子の破壊株、過剰発現株を作成し、表現型の解析を行ったが、現在のところ概日振動に顕著な影響を及ぼす遺伝子が得られず、新規結合因子の同定が進んでいない。これまでに、KaiCに直接結合する因子を候補因子とするためにKaiCの免疫沈降物の質量分析(IP-MS法)を行ってきたが、さらに候補因子を多角的に同定するため、IP-MS法以外でのKaiC複合体構成因子の同定方法を検討し、その準備も進めている。 新規リン酸化部位の機能解析では、量や時間依存的なリン酸化の変化の詳細を質量分析により解析することを試みたが、in vivo、in vitroのどの時間においてもS320がリン酸化ペプチドを同定することが出来なかった。その為、概日周期内でこのリン酸化がどのように機能しているかを示すことが出来なかった。そこで、このリン酸化が概日周期内での機能する可能性以外に、環境ストレスやよるリン酸化や分解シグナルなども考慮した上での解析を進める必要があった。そのため、計画よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
時計蛋白質と結合する因子の探索においては、KaiC新規結合因子については、IP-MS法により解析を進めてきたが、概日時計に影響を与える新規因子の同定には至っていない。 しかしながら、局在変異体の解析により新たに同定されたKaiCと結合する因子Rbp(McKnight et al., 2023)も我々がMSによって得た候補因子のリストに挙げられていた。この因子は結合が弱いため我々は解析を進めていなかったが、このリスト内にまだ時計に影響を与える因子が含まれている可能性があると考えており、さらなる因子について解析を行う予定である。この為、候補因子を多角的に同定するため、IP-MS法以外にも、ビオチンか酵素によるKaiC複合体構成因子の同定方法を検討し、その為の株の準備も進めており、次年度にこの方法による候補因子も同定し、IP-MS法の結果と合わせて候補因子の絞り込みを行う予定である。 新規リン酸化部位のうち、詳細な解析を進めている一箇所については、環境応答とリン酸化についての議論をまとめて次年度中に発表したい。残りの2カ所についても、更に詳細な解析を進める。
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