研究課題/領域番号 |
23K05049
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
藤原 憲秀 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (20222268)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 有機合成化学 / 天然物の全合成 / 人工類縁体の合成 / 構造活性相関 / 天然物全合成 / 人工類縁体 / 作用機序解明 |
研究開始時の研究の概要 |
生命を脅かす疾病としての「がん」について、効果的な化学療法を探索するため、その候補となる強力な細胞毒性を持つポーチミンを対象として、合成法を確立し、構造活性相関と作用機序を解明する。ポーチミンは渦鞭毛藻から単離された強力なアポトーシス誘導活性天然物である。本研究では、特に、その構造中の5員環と8員環および9員環のトリシクロ構造をとる特異なアセタールの空間配置が活性発現に関わると推定し、空間配置を模倣した複数の類縁物質を合成して構造活性相関を調査してその仮説を検証する。これはポーチミンの活性中心構造の同定につながり、中心構造を用いる抗体薬物複合体抗がん剤の開発にも展開できる。
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研究実績の概要 |
生命を脅かす疾病としての「がん」について、効果的な化学療法を探索するため、その候補となる強力な細胞毒性を持つポーチミンを対象として、その合成法を確立し、構造活性相関と作用機序を解明することを目的に本研究を企画した。ポーチミンは渦鞭毛藻から単離された強力なアポトーシス誘導活性天然物であり、5員環状イミンとシクロヘキセンによるスピロイミン構造と、5員環と8員環および9員環のトリシクロアセタール構造が組み込まれたマクロ環骨格を持つ。本研究では、ポーチミンの持つ特異なマクロ環構造が細胞毒性発現に重要であると推定し、特に複数の置換基を空間的に適切に配置する骨格、すなわちスピロ構造に接続する特異な8員環アセタールが重要という仮説を立てた。この仮説を検証して、ポーチミンの構造活性相関を解明するため、ポーチミン本体を合成するほか、空間配置を保持した部分構造としてトリシクロアセタール部分構造(A構造)と、スピロイミンから8員環アセタールに至る部分構造(B構造)、さらにスピロイミンを「軸ねじれを誘起する芳香環」で代用したモデル構造(C構造)を合成して、それぞれの細胞毒性を調査しようと計画した。これはポーチミンの活性中心構造の同定につながり、中心構造を用いる抗体薬物複合体抗がん剤の開発にも展開できると期待した。令和5年度は、A構造として、スピロイミン構造を省略したトリシクロアセタールモデル化合物の合成を進め、環上の水酸基の立体化学のみ異なる類縁体の合成に成功した。さらに、B構造の合成のため、スピロイミン構造の構築法も検討し、比較的短段階でスピロイミンを構築する合成経路を見出した。C構造については、「軸ねじれを誘起する芳香環」部分に相当する部品を合成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「最初に比較的単純なA構造とC構造を合成し、次にB構造を合成する」という当初の計画に従い、令和5年度の研究を進めた。A構造として、スピロイミン構造を省略したトリシクロアセタールモデル化合物を設計し、その構造下部の不斉中心の導入法と骨格伸長を比較的短段階で実施する方法を開拓できた。さらにマクロ環の閉環とその閉環箇所に新たな不斉中心を導入する経路のプロトタイプを開発した。結果的に1箇所の水酸基の立体化学のみ天然物とは異なる、5員環-8員環-6員環のモデル・トリシクロアセタール構造の合成に成功した。ここで開発した方法論は、ポーチミン本体の合成にも適用が期待される。C構造については、「軸ねじれを誘起する芳香環」部分に相当する部品を合成したので、今後下部構造との連結を検討する。B構造の合成のため、スピロイミン構造の構築法を検討したところ、比較的短段階でスピロイミンを構築する合成経路を見出すことができた。現在、スピロイミン構造をマクロ環に組み込むための工夫を検討している。これらの合成を通じて、ポーチミン本体のトリシクロアセタール部とスピロイミン部の合成に関する知見を蓄積できたため、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、次の(1)~(3)のようにポーチミンの部分構造と模倣構造を合成し、細胞毒性を評価する。 (1) スピロイミンから8員環アセタールに至る部分構造(B構造)の合成を検討し、スピロイミンに接続しているシクロヘキセン部分を天然型の立体構造に変換する方法を開拓する。そして、8員環アセタールをエーテルで模倣した短縮型スピロイミン構造をB構造として合成し、その細胞毒性の有無を評価して、構造活性相関の知見を得る。また、ポーチミン本体の全合成の部品としてシクロヘキセンを含むスピロイミン部分を合成する。 (2) A構造として設定した「スピロイミン構造を省略したトリシクロアセタールモデル化合物」の合成のため、課題となった1箇所の異なる立体化学を天然型に揃える工夫を開発する。そして、天然型と非天然型のA構造ともに細胞毒性を評価する。 (3) C構造の「軸ねじれを誘起する芳香環」部分とA構造の下部の不斉中心を含むセグメントを連結して、スピロイミンを芳香環で代用した5員環と8員環および9員環のトリシクロアセタール構造の構築に取り組む。 以上のように、ポーチミンの構造活性相関の調査に向けて研究を推進する。同時に、ポーチミン本体の全合成にも取り組む。
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