研究課題/領域番号 |
23K05063
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
石神 健 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (70292787)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 天然物化学 / 有機化学 / 有機合成 / 環状ペプチド / 疎水性タグ / Surfactin / Fusahexin / 有機合成化学 / 環状ポリペプチド / 生物活性物質 / 疎水タグ法 |
研究開始時の研究の概要 |
医農薬の開発分野では、コンフォメーションが固定された環状ペプチドは種々の薬効を示す化合物群として期待され、候補物質の合成においては効率性や簡便性が求められる。従来の液相合成と固相合成の利点を併せ持つ「疎水性タグ法」に着目し、本手法の環状ペプチド合成への応用を検討する。合成標的として二種の環状ペプチドを選択し、本化合物群の合成を通じて「疎水性タグ法」の有効性を示す。Surfactinに関しては天然からは入手困難な単一類縁体の選択的な作り分けによる活性試験への試料供給を行い、Fusahexinに関しては提唱される異常な縮環構造の新奇合成法開発と天然物の構造決定を試みる。
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研究実績の概要 |
医農薬の開発分野では、コンフォメーションが固定された環状ペプチドは種々の薬効を示す化合物群として期待され、候補物質の合成においては効率性や簡便性が求められる。従来の液相合成と固相合成の利点を併せ持つ「疎水性タグ法」に着目し、合成標的として微生物の成育に関わる二種の環状ポリペプチドを選択した。疎水性タグを用いたペプチド合成は2010年以降に報告があるが、環状ポリペプチド合成への応用例はほとんどなく、最適な疎水性タグの選択と、本法を応用した天然由来環状ポリペプチドの効率的かつ簡便な合成を目指した。疎水性タグとしては千葉らにより報告された化合物を基盤に検討したが、環状ペプチド類への応用例は知られておらず、本分野への汎用へ向けた知見の蓄積も目指した。 Surfactin類は、抗生物質として利用され強力な界面活性剤として古くから知られる環状リポペプチドであり、天然からは入手困難な単一類縁体の選択的合成と活性試験への供給を最終目標とするが、疎水性タグ法を用いた環状ポリペプチド合成に関する知見の蓄積を最優先し、まずはタグからの切り出し後に環化させる手法を検討した。その結果、疎水性タグ法によるペプチド鎖の伸長と椎名法によるマクロラクトン化によりSurfactin B2の合成を達成したが、マクロラクトン化の収率が悪く部分的なエピ化も観測された。環化位置を検討した結果、マクロラクタム化による環化収率の改善とエピ化の抑制に成功した。また各種異性体の合成も視野に入れ、光学活性な各種脂肪酸部分に関する汎用性の高い合成法も並行して検討した。 Fusahexinに関しては、提唱される異常な縮環構造の新規合成法開発と天然物の構造決定を最終目標とするが、スレオニンとプロリン残基に由来する異常なピロロオキサジン骨格の構築を最優先とし、モデル化合物を用いた検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由:Surfactin類の合成に関しては、タグからの切り出し後に環化させる手法を十分に検討することができたと考えている。すなわち、疎水性タグ法により様々な環化位置に対応したペプチド鎖の伸長を検討し、ペプチド鎖合成に関する知見を十分に収集することができた。更に環化反応に関しても、複数の環化位置においてマクロラクトン化もしくはマクロラクタム化により成功し、収率や効率に関する多くの情報も蓄積できた。また、各種脂肪酸部分に関しても汎用性の高い光学活性体合成法が確立できたので、類縁体ごとの脂肪酸部分を必要に応じて調製することが可能となった。
Fusahexinに関しては、安価なアミノ酸を原料にしたモデル実験に留まっているものの、用いる保護基の選択や合成経路の妥当性を確認することができたので、本年度以降は実際の基質となるallo-threonineを用いた検討への移行を考えている。 以上の成果よりおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Surfactin類に関しては、タグからの切り出し後に環化させる手法を十分に検討することができ、疎水性タグ法によるペプチド鎖の伸長に関する知見と、環化反応における収率や効率に関する知見を十分に蓄積することができた。そこで、確立した合成経路を基本とし、環化位置の更なる検討に加え、タグを保持した状態での環化反応に関しても検討する。特に、タグ上でのペプチド鎖伸長における酸性アミノ酸残基の存在や、タグからの切り出しにおける保護基の影響を吟味したい。具体的にはL-Glu またはL-Asp の側鎖にタグを導入し、ペプチド鎖伸長とマクロラクタム化により環状ペプチドを構築し、最後にタグを外すことでsurfactinを合成する計画である。 Fusahexinに関しては、実際の基質となるallo-threonineを用いた検討へ移行し、天然物が有する異常な縮環構造に関して形成反応と構造解析を目指す予定である。部分構造の合成と天然物の構造の検証までを本年度の目標とし、疎水性タグ法を用いた天然物合成はその後に実施する予定である。
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