研究課題/領域番号 |
23K05072
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
美藤 友博 鳥取大学, 農学部, 准教授 (20776421)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | ビタミンB12 / うつ病 / セロトニン / 酸化ストレス / 線虫 / 産卵行動 |
研究開始時の研究の概要 |
ビタミンB12(B12)欠乏症は,高齢者のQOLを著しく低下させる神経障害などの重篤な症状を誘発する.近年,新たなB12欠乏モデル生物・線虫において,神経伝達物質であるセロトニンにより制御される生体機能(産卵行動)に異常を示すことを見出した.①セロトニンはうつ病治療における標的分子でもあること,また,B12欠乏患者が高頻度でうつ病を併発するとの報告が少数ながら存在することから,これまでの研究結果は高齢者で多発するB12欠乏症とうつ病の発症の因果関係を窺わせる.本研究ではB12欠乏がセロトニン伝達機構に及ぼす影響を解析し,B12欠乏とうつ病発症の分子機構の解析に挑む.
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研究実績の概要 |
本研究はビタミンB12欠乏症がうつ病の発症要因になるのかどうかをモデル生物・線虫Caenorhabditis elegansを用いて解析することを目的とする。令和5年度は、ビタミンB12欠乏線虫にヒトのようなうつ病様の症状を呈するのか、様々な表現型を探索した。その結果、線虫の社会行動の一つである飢餓時のコロニー形成の割合が、コントロールと比較してビタミンB12欠乏線虫で著しく低下することを見出した。また、ビタミンB12欠乏線虫にビタミンB12を供給した回復線虫では、飢餓時のコロニー形成の割合がコントロールと同等まで回復を示したことより、線虫ではビタミンB12欠乏症を呈すると社会行動(集団行動)を行うことが減少すると示唆された。 また、これまでにビタミンB12欠乏線虫ではヒトのうつ病の発症要因の一つと考えられているセロトニンの伝達機能障害を見出しており、ビタミンB12欠乏線虫にセロトニントランスポーター阻害剤フルオキセチン(ヒトのうつ病治療薬)を供与したところ、飢餓時のコロニー形成の割合が回復を示した。線虫におけるセロトニン伝達系の役割の一つに摂食行動の制御が挙げられる。しかし、ビタミンB12欠乏線虫とコントロールで摂食量の変化は示されなかった。これらの結果より、線虫の社会行動である飢餓時のコロニー形成はセロトニン伝達系が関与していることが示唆され、また、ビタミンB12欠乏ではその社会行動を低下させることが明らかになった。さらに、線虫がヒトのうつ病モデルとして利用が可能であることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線虫を用いたヒトのうつ病の発症機構の解析において、線虫とヒトのセロトニン伝達機構の役割の違いに焦点がいくことが多い。そのため、令和5年度は線虫がヒトのうつ病様症状を呈するのかどうか詳細に検討したところ、ヒトと同じく社会行動の一つに違いが見出せた。そのため、令和5年度の評価を(2)おおむね順調に進展している、と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ビタミンB12欠乏線虫で見出した飢餓時の社会行動の変化がセロトニン伝達系の異常で引き起こされているのかを分子レベルで解析していく予定である。主にセロトニン受容体・トランスポーターの遺伝子、タンパク質発現の解析をはじめ、セロトニン伝達系の遺伝子破壊線虫を用いてビタミンB12欠乏線虫と同様の表現型が示されるのか解析を進めていく。
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