研究課題/領域番号 |
23K05099
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
熊谷 日登美 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20225220)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 米アルブミン / グルコース負荷試験 / 血糖値上昇抑制 / 雌雄差 / ジェンダード・イノベーション / 穀物アルブミン / 糖尿病予防 |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者はこれまでに,無味・無臭・水溶性の食品成分が様々な機能を有することを,雄の実験動物を用いて明らかにしてきた。16 kDaの米アルブミンについては,分解により生成する14 kDaの高分子ペプチド(HMP)によるグルコースの吸着・排出促進および2 kDa以下の低分子ペプチド(LMP)によるグルコーストランスポーター(SGLT1)の発現抑制という新たな作用機序で,食後血糖値上昇を効果的に抑制することを明らかにしている。本研究では,LMP中の機能性ペプチドの同定とSGLT1発現抑制メカニズムの解明を行うと共に,食後血糖値上昇抑制作用と糖尿病予防作用における性差の影響について検討する。
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研究実績の概要 |
糖尿病は世界中で深刻な疾患の一つであり,2021年の時点で約5億4000万人と推定されている。糖尿病患者の9割以上は,非インスリン依存性の2型であり,この予防と治療には,食後の血糖値上昇を穏やかにする食品の摂取が有効である。我々はこれまでに,16 kDaの米胚乳アルブミン(REA)が,哺乳類のα-アミラーゼを阻害しないにも関わらず,血糖値の上昇を抑制し,その作用機序は,消化酵素による分解で生成した14 kDaの難消化性ペプチドがグルコースを吸着し排泄を促進すると共に,2 kDa以下の低分子ペプチドが,小腸のグルコーストランスポーターの発現を抑制するというダブルの効果によるものであることを明らかにしている。しかし,これまでの実験はすべて雄ラットを用いた実験であった。近年、薬の作用が雌雄によって異なるという研究結果が報告されているが,食品素材の摂取時における性差の検討は未だ事例が少ない。そこで本研究では,グルコース共にREAをラットに摂取させ,血糖値およびインスリン値の変化に性差による違いがないか検討した。その結果,グルコースのみを投与した場合では,雌ラットでは,雄ラットよりも,投与後30分から45分での血糖値が有意に低下した。また,インスリン値は,雄ラットが投与15分後にピークを示したのに対し,雌ラットでは投与30分後にピークが見られた。一方,グルコースと共にREA投与した場合には,雄雌間で,血糖値の変化にほとんど差がみられなかった。このため,グルコースのみを投与した場合と比較すると,雄ラットでは,REA投与により有意な血糖値低下が見られたが,雌ラットでは,REA投与による血糖値の値に有意差は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グルコース負荷試験を雄と雌で比較したことはなかったが,グルコースのみを投与した際に,雄と雌で,血糖値の変化の曲線に大きな違いが見られ,さらに,インスリン値の変化の曲線も,ピークとなる時間が雌雄で異なった。16 kDaの米胚乳アルブミン(REA)投与により,雄では,これまで通りに血糖値上昇抑制作用が見られたが,雌では,コントロールのグルコースのみを投与した群で,雄よりも血糖値が有意に低くなったため,REA投与では,ほぼ同じ値となった。血糖値上昇曲線が,雌雄で大きく異なることは,これまで知られていなかったことであり,新たな発見があった。研究は,概ね,計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,同じ系統のラットを用いたものの,親が同じという訳ではなかった。次年度は,親が同じである雄雌のラットでの比較を行い,グルコース投与のみでの差が家系の違いではなく,雌雄差であることを確かめる。また,16 kDaのアルブミンを消化酵素により分解し,ゲル濾過クロマトグラフィーにより2 kDa以下の低分子ペプチドを分画する。この低分子ペプチド画分をさらにHPLCにより分画し,得られるペプチドをマウス小腸上皮由来のSTC-1細胞に添加し,グルコーストランスポーター(SGLT1)の発現抑制効果をウェスタンブロッティングにより調べる。そして,SGLT1発現抑制効果の高いペプチドの配列を,nano LC-MS/MSにより同定する。さらに,同定した機能性ペプチドが,小腸に発現している甘味受容体T1R2/T1R3からGタンパク質であるガストデューシンを介してSGLT1発現までの経路のどこを阻害しているのかを,経路中のタンパク質のウェスタンブロッティングやその遺伝子のPCR増幅等により調べる。
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