| 研究課題/領域番号 |
23K05146
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| 研究種目 |
基盤研究(C)
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| 配分区分 | 基金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
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| 研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉田 護 名古屋大学, 情報学研究科, 招へい教員 (70154474)
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| 研究分担者 |
青木 摂之 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (30283469)
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| 研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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| 配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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| キーワード | 葉緑体遺伝子 / 転写後制御 / 核コード制御因子 / ヒメツリガネゴケ / 日内リズム / 日内発現リズム / 概日リズム / 転写制御 |
| 研究開始時の研究の概要 |
葉緑体遺伝子の日内発現リズムは昼夜の環境下で光合成を最適化する仕組みであり、動的な環境適応の重要なシステムを考えられている。このリズム発現の転写制御因子として葉緑体シグマ因子が知られている。しかし、葉緑体遺伝子のリズム発現制御の包括的理解には葉緑体シグマ因子を介した転写制御だけでなく、転写後レベルでのリズム発現制御について理解する必要がある。本研究では葉緑体遺伝子のリズム発現の制御機構を重層的に解明するため、葉緑体シグマ因子と葉緑体の主要な転写後制御因子であるペンタトリコペプチドリピート(PPR)タンパク質のリズム発現に焦点を当てた研究を行う。
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| 研究実績の概要 |
葉緑体の遺伝子発現は転写後に様々な制御を受ける。しかし、その詳細な分子機構はまだ不明な点が多い。本研究では、葉緑体遺伝子の日内発現リズムの転写後制御機構を解明するため、モデル植物であるヒメツリガネゴケを用い、次の内容の研究を行った。(1)Pentatrico-Peptide Repeat(PPR)タンパク質ファミリーの構成メンバーのうち、日内発現リズムを示すものを選別する。(2)発現リズムを示すPPRが作用する標的葉緑体遺伝子を調査する。(3)明暗サイクル条件下での葉緑体遺伝子の転写後制御の動態を明らかにする。 具体的な成果として、 (i) まず、複数の発現データベース(Mutwilらのdiurnal.toolなど)を活用し、日内発現リズムを示す可能性の高いPPR遺伝子を10程度選抜し、(ii)それらのうちPPR_2、PPR_6、PPR_38は実際に日内発現リズムを示すことをqPCR実験により確認した。(iii)さらに、PPR_2タンパク質が葉緑体に局在することをGFPを用いた一過的発現実験により明らかにした。(iv)また、過去の論文報告でPPR_38の標的葉緑体遺伝子として同定されていたclpP遺伝子(Hattori他, J. Biol. Chem., 2007)のmRNAレベルとスプライシング効率を経時的に測定し、clpPがPPR_38と同じ位相のリズムを示すことを明らかにした。(v)一方で、本計画に関連して採用していただいた学術変革領域「ゲノム支援」による支援を得、コケRNAを明暗条件下でサンプリングし、RNAseq解析を実施していただいた(継続中)。(ii)と(iv)により、特定PPRの発現パターンが標的葉緑体遺伝子のスプライシング効率の日内変化と強い相関を示したため、葉緑体遺伝子の日内発現リズムの制御にPPRが重要な役割を果たす可能性が強く示唆された。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
日内発現リズムを示すか否かを予測するために用いたデータベース(Mutwilらのdiurnal.tool)はコケの茎葉体をサンプリングに用いている一方で、本研究では実験に用いやすい原糸体をサンプリングに使用した。その結果、データベースのリズムパターンとは著しく異なる位相の日内変化が観察された。つまり異なる発生段階ではそれぞれ固有のタイミング制御が行われている可能性を示唆しており、今後の研究の上で重要な知見が得られたと考えている。また、前述のPPR_38が示した日内発現リズムと、その制御の標的である葉緑体遺伝子clpPのスプライシング効率の日内リズムは、非常によく似た位相を示しており、二つの過程に因果関係があることが強く示唆される。qPCRで経時的な発現解析を実施したPPR遺伝子はまだ少数であるが、それにもかかわらずこのような相関の見られる標的遺伝子がみつかったのは、i)転写後レベルで日内発現リズムを示す葉緑体遺伝子が予想より多く、またii)そうした制御にPPRが関わる可能性が非常に高い可能性を示しており、今後の研究の展開については大いに希望が持てる。また、経時的なサンプリングの条件や、スプライシング効率の評価などのコケを用いた実験の結果はいまのところ非常に定量性・再現性がともに高く、実験系としてうまく確立できていると考えられる。現在、ほかのPPR遺伝子群についてもmRNAレベルでの日内変動を確認しているところであり、このような状況から、「おおむね順調に進展している」を選択した。
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| 今後の研究の推進方策 |
昨年度の成果を受け、今後、PPRが葉緑体遺伝子の転写後レベルでの日内発現制御を行う主要因子である可能性を検証していく。最初の段階として、次の2つの戦略にもとづく実験を並行して行う:i)リズム発現を示すPPRのターゲット葉緑体遺伝子を同定し、そ(れら)の転写後制御過程に日内リズムがみられるかどうかを調べる;ii)すでにターゲット葉緑体遺伝子が同定されているPPRについて、PPRとターゲット遺伝子双方についてリズム発現の有無を調べる。これらの解析により、PPRとターゲット遺伝子の転写後制御過程のどちらにも日内リズムが見られた組み合わせに関し(とくに両者のリズムの位相が近い場合を優先的な解析対象として)、PPRにゲノム編集による遺伝子破壊を施し、ターゲット遺伝子の転写後制御の動態への影響を調べる。その結果を解析することにより、PPRの日内発現制御機能を検証する。i)とii)のバランスが重要であるが、i)はそれ自体かなり時間・労力の必要な解析であると予測される一方で、ii)は昨年度の研究においてPPR_38について順調に進んでおり、また現在、そのほかに6つのPPRについて解析をすでに開始している。いまのところ、計画期間内でより大きな成果をあげる必要性も考慮し、効率のよいii)に重心を置いて研究を推進する予定である。さらに、昨年度、学術変革領域「ゲノム支援」により支援をいただいたRNAseq解析は継続中であるので、共同研究として解析を進め、リズム発現を示すPPR遺伝子そして葉緑体遺伝子のカタログ化を進め、その成果を研究内容に組み込んでいく計画である。また、光シグナル伝達系の遺伝子の破壊株を活用し、PPR―葉緑体遺伝子の日内発現リズムの位相調節をおこなう光シグナル伝達系の解析も開始する予定である。
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