研究課題/領域番号 |
23K05148
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
片山 将一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 助教 (60779049)
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研究分担者 |
山崎 哲男 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (90330208)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | CDKL5 / プロテインキナーゼ / 細胞内シグナル伝達 / 神経細胞分化 / ゼブラフィッシュ |
研究開始時の研究の概要 |
Cyclin-dependent kinase-like 5 (CDKL5)は神経系に発現するタンパク質リン酸化酵素であり、その遺伝子変異はCDKL5欠損症を発症させる。CDKL5欠損症は出生後早期に発症する難治性てんかんを伴う重度精神発達障害であり、有効な治療法は存在しない。また、CDKL5の変異は神経機能の異常を導くが、その異常が引き起こされるメカニズムは全く不明である。そこで本研究では、初期神経発達に着目し、神経分化を制御するメカニズムを、動物モデルによる解析と、CDKL5の新規基質探索の両面から明らかにする。
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研究実績の概要 |
Cyclin-dependent kinase-like 5 (CDKL5)は神経系に発現するタンパク質リン酸化酵素であり、その遺伝子変異はCDKL5欠損症を発症させる。CDKL5欠損症は出生後早期に発症する難治性てんかんを伴う重度精神発達障害であり、有効な治療法は存在しない。また、CDKL5の変異は神経系の機能異常を導くが、その異常が引き起こされるメカニズムは全く不明である。一方、研究代表者らはCDKL5欠損症患者に見られる変異体がその酵素活性を失っていること、CDKL5 が神経分化を制御することを明らかにしている。そのため、CDKL5の失活による基質リン酸化の破綻が神経分化の不全を引き起こし、神経機能の異常および疾患発症を導くと示唆される。そこで本研究計画では、神経分化を制御するメカニズムを、動物モデルによる解析と、CDKL5の新規基質探索の両面から明らかにすることを目的と定めた。 CDKL5欠損症では出生後早期よりその症状が現れるため、CDKL5の変異は神経分化の異常を介して初期神経発達に影響を及ぼすと示唆される。そこで、本研究計画では初期神経発達の解析に適した動物モデルとしてゼブラフィッシュを選択した。ゼブラフィッシュは体外で発生し、胚が透明であることから、初期神経発達の解析に有用である。現時点でCRISPR-Cas9法によってCDKL5ノックアウトゼブラフィッシュの作出を試み、ゲノム編集された個体が得られたことを確認している。また、それら個体を成魚へと育成しつつ、アンチセンスモルフォリノオリゴを用いたノックダウン実験により表現型を確認している段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、初年度にCDKL5のノックアウト操作に着手し、ノックアウトゼブラフィッシュ個体を得ることを目標と定めている。この目標に到達すべく、CDKL5ノックアウトに向けて、ガイドRNAとCas9タンパク質を受精卵へマイクロインジェクションによって導入した。その後、インジェクション操作後のゼブラフィッシュ個体よりゲノムDNAを抽出し、CDKL5の塩基配列を確認することでターゲット配列がゲノム編集され、フレームシフトが起きていることを確認したため、これら個体を成魚へと育成中である。やや成魚への育成、子世代の獲得に時間を要しているため、以下のノックダウン実験も同時に実施した。 CDKL5ノックアウト系統を樹立する間に、おおよそ予測される表現型の目星をつけるため、アンチセンスモルフォリノオリゴを用いたノックダウン実験を実施した。その結果、CDKL5のノックダウンによって非常に早期に発生異常を示す胚が観察された。研究代表者らのこれまでの研究結果ではCDKL5が発生早期より発現していることを見出しており、本研究結果はCDKL5が初期発生時に発現するだけではなく、実際に機能しているという重要な研究成果といえる。 これらの研究成果を踏まえて、「(2)おおむね順調に進展している」と進捗状況の評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の研究計画に則り、CDKL5ノックアウトゼブラフィッシュの表現型解析と、CDKL5の基質探索に着手する。 CDKL5ノックアウト系統を樹立後は、ノックダウン実験と同様に初期発生の異常が見られるかを解析する。また、運動神経マーカーであるアセチル化チューブリン抗体および中枢神経マーカーであるHuC抗体による免疫染色を行い、CDKL5ノックアウトによる神経分化への影響を解析する。また、神経機能の異常によって得られる表現型を解析するために、触刺激応答や、ペンチレンテトラゾール誘発性のてんかん発作を測定する。 研究代表者らのこれまでの研究によって、神経分化に伴いCDKL5の基質が変化する可能性が見いだされているため、神経分化過程に応じて変化するCDKL5の基質群を同定する。ゼブラフィッシュ胚発生各段階の抽出液よりCDKL5を免疫沈降し、結合タンパク質群を取得する。その中で、各発生段階に特異的な結合タンパク質が神経分化に関与すると予測されるため、それらのタンパク質をLC-MS/MSで同定する。同定したタンパク質はin vitroのキナーゼアッセイを行い、CDKL5によってリン酸化されるか確認する。基質となったタンパク質はリン酸化されるアミノ酸を探索し、リン酸化の意義について培養細胞を用いて解析する。また、部位特異的リン酸化抗体を作製し、神経分化過程における基質のリン酸化状態を確認する。
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