研究課題/領域番号 |
23K05151
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
山本 幸子 杏林大学, 医学部, 講師 (70434719)
|
研究分担者 |
櫻井 拓也 日本薬科大学, 薬学部, 准教授 (20353477)
須賀 圭 杏林大学, 医学部, 准教授 (30306675)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 乳がん / Ca2+ポンプ / SPCA / 相互作用 / 相互作用分子 |
研究開始時の研究の概要 |
女性の癌罹患率 第1位を占める乳がんにおいて、分子標的薬が有望な治療薬として注目を集めている。より効果的な分子標的薬の開発には、乳がんの発生や増殖、悪性化の分子機構を理解し、標的として利用できる乳がんに特有の分子を明らかにしなければならない。本研究では、この解明を目指し、予後不良な乳がんで高発現するCa2+ポンプSPCA2に着目する。乳がんの悪性化にはSPCA2の細胞内の局在変化や蓄積が直結するため、この制御に関わるSPCA2の相互作用分子を同定し、これによって乳がんの増殖と悪性化の機構を解明したい。ここで得られる知見は、乳がんの分子標的薬の新規ターゲットの発見に繋がると期待される。
|
研究実績の概要 |
乳がんの悪性化において、ゴルジ体局在のCa2+ポンプSPCA2の細胞内蓄積と局在変化が重要な役割を果たすことが示されている。申請者はSPCA2の細胞内蓄積や局在変化の機構解明を目指し、「これらを媒介する相互作用分子はなにか?」という着想に至った。これまでに、申請者はSPCA2の相互作用分子の候補を複数単離した。そこで、これら相互作用分子が乳がん悪性化に関わるのかを明らかにするため、2023年度は以下の研究を行った。 (1)SPCA2と相互作用分子の相互作用部位の解析: SPCA2側の相互作用部位は、細胞質ドメインであり、相互作用分子側は、他の分子との相互作用を担うドメインがSPCA2との作用部位であることが分かった。この情報は、本研究の推進にだけでなく、相互作用メカニズムの解明などにも有用な情報となる。また、解析過程で、複数の相互作用分子が、SPCA2のホモログSPCA1とも相互作用する事を明らかにした。SPCA1は乳がんの悪性化においてSPCA2と相反する役割を担うと考えられており、SPCA1と相互作用分子の解析も本研究に加える必要性が示された。 (2) SPCA2と相互作用分子の物理的相互作用の解析: 乳がんモデル細胞MCF7を用いて、SPCA2と相互作用分子の物理的相互作用を解析した。その結果、1つの相互作用分子とその類縁タンパクで、SPCA2との相互作用が認められた。さらに、ある相互作用分子では、MCF7を乳がん悪性化に近い環境にしたときに、SPCA2と細胞内で近接して局在する事が分かった。これらの解析で、乳がん細胞において、SPCA2が相互作用する分子を初めて明らかにし、その相互作用が乳がん悪性化と関連する可能性も見出した。 (3)相互作用分子の網羅的解析: SPCA2の相互作用分子を酵母Two-Hybrid法により探索し、新たに候補となる分子を複数単離した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、申請者が見出したSPCA2の相互作用分子が、「SPCA2とどのように相互作用するのか」、「乳がんモデル細胞で相互作用がみられるのか」に主に焦点をあてて検討を行った。その結果、SPCA2-相互分子間の作用部位や、乳がんモデル細胞中での相互作用を、初めて明らかにする成果を得ている。したがって、これらの点については、おおむね順調に進展したと考えている。 しかし、乳がんモデル細胞中でのSPCA2と相互作用分子の相互作用は必ずしも強くなく、相互作用は一過性のものであるか、あるいはそれを仲介する新たな分子がある可能性もある。これを確実に捉えるには、相互作用の解析において、新たな手法を検討に加える必要を考えており、このことも含めて、2023年度に実施する予定であったSPCA2の新規相互作用分子を質量分析を使って網羅的に解析する試みは実施せず留めておいた。このような状況であるため、進捗状況は「やや遅れている」と判断した。 さらに、研究実績の概要に示したように、SPCA2の相互作用分子は、ホモログSPCA1とも相互作用する事が分かった。かねてから、SPCA1は、乳がんの悪性化において、SPCA2と相反する役割を担う可能性が示されており、SPCA1との相互作用の解析を本研究に加える必要性が明らかとなった。そこで、SPCA1の強制発現ベクターを構築し、この強制発現を乳がんモデル細胞で試みたところ、予期せぬ副産物が生成する事が分かった。2023年度は、SPCA1の計画の追加とこの副産物生成への対処から、当初の計画より遅延したため、「やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度 ①SPCA2と相互作用分子の物理的相互作用の解析:前年度に続き、乳がんモデル細胞を用いて、SPCA2とその相互作用分子の物理的な相互作用を解析する。ここで相互作用が弱いという課題がでてきたため、SPCA2の近傍タンパク質に化学標識を導入する新たな手法を解析に加えたい。また、SPCA2相互作用分子がホモログSPCA1と相互作用したことは重要な事実であり、乳がん悪性化におけるSPCA2の制御機構の解明において、SPCA1-相互作用分子の相互作用を照らし合わせて議論する必要がある。そこで、今年度は、SPCA1と相互作用分子との相互作用の解析もSPCA2と並列して行う。 ②SPCA2と相互作用分子の生理的相互作用の解析:これまでに見出したSPCA2-相互作用分子の相互作用が、乳がんの悪性化にどのように関与するのか、特にSPCA2の細胞局在移行に注目して解析する。 ③SPCA2相互作用分子の網羅的解析:SPCA2を介した乳がん悪性化の理解には、申請者が見出したSPCA2の相互作用分子に注目するだけでは足らない。そこで、乳がんモデル細胞を用いて、SPCA2の相互作用分子の網羅的解析を実施する。ここでは、新たな計画として、SPCA2の近傍タンパク質に標識を導入する手法を併用した質量分析解析で行なう。 2025年度:2024年度に得た研究結果をさらに発展させ、SPCA2とその相互作用分子の相互作用が、乳がんの悪性化に直接関与するのかを、乳がんモデル細胞のCa2+動態の追跡や細胞内応答の変化に注目して、Ca2+イメージング法やウェスタンブロッティング法などで解析する。さらに、前年度に見出した新たなSPCA2の相互作用分子について、相互作用部位の解析や、両者の相互作用の生理的意義の解明にも取り掛かる。そして、本研究を通して得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
|