研究課題/領域番号 |
23K05153
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
笠原 浩司 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (40304159)
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研究分担者 |
志波 優 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (00647753)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 転写 / リボソーム / リボソームタンパク質遺伝子 / FKBP / 出芽酵母 / 真核生物 / 転写制御 / 酵母 |
研究開始時の研究の概要 |
真核生物のリボソームの機能は、その構成因子の働きも含めて高度に保存されているが、それぞれの構成因子の発現・合成の仕組みは酵母と動物で大きく異なることが明らかになりつつある。そのため、酵母と動物のリボソーム構成因子の産生の仕組みを詳細に理解することで、ヒトには無害で病原性酵母の生育を特異的に阻害する薬剤の開発に繋がると期待される。本研究ではこれまで多くを明らかにしてきた出芽酵母に加え、それと進化的に近縁である病原性酵母カンジダ・グラブラータ、及びヒト培養細胞を対象に加え、これらの生物におけるリボソーム合成の仕組みや、それに関連する因子の機能を分子レベルで明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
Fpr1のアラニンスキャン変異体の機能解析の結果、タンパク質の安定性に影響がなく、その機能がほぼ失われた変異体を複数同定した。その内のいくつかは自身のRPGプロモーターへの結合が著しく低下していた。各種解析からFpr1はRPG転写の主要転写因子Rap1依存的にRPGプロモーターに結合することを明らかにしており、これらの変異はRap1との相互作用に影響を与える可能性が高い。その他のRPGプロモーターへの結合に影響のない変異体はプロモーター結合以降の機能に欠損があると考えられる。 RPG転写制御に関わるFhl1は好栄養条件下では生育に必須な転写因子Ifh1をリクルートし転写を促進する一方、飢餓時には抑制因子Crf1がIfh1と競合的にFhl1に結合することで転写を抑制すると考えられているが、我々はIfh1やCrf1との相互作用を担うFhl1のFHAドメインが、Ifh1の解離、あるいは欠損により露出し、それが何らかの仕組みで生育を阻害することを示した。このFHAドメインによる生育阻害を抑圧する変異の探索やFHAドメインと相互作用する因子の探索を行い、複数の変異株や相互作用因子を単離しつつある。 カンジダグラブラータのRPG転写因子として新たにMcm1a, Mcm1bを同定し、その標的分子をChIP-seqにより網羅的に同定した。また両因子の二重破壊株が致死となることから両者が生育に必須な機能を共有していることを明らかにした。 ヒト細胞のFKBP12遺伝子を破壊し、その遺伝子発現への影響をRNA-seqを用いて網羅的に調べた結果、RPGを含む多くの遺伝子の転写への影響が見いだされた。同時に行った他のFKBPタンパク質のKO細胞を用いた同解析でもFKBP12のKOと類似の遺伝子発現変動を示したことから、ある種のFKBPタンパク質が一群の遺伝子の転写に協調的に機能していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RPG転写因子に関して行った遺伝学的解析においては、生育が極めて悪い変異株(特にfhl1Δfpr1Δ二重破壊株)を用いると、高頻度で生育がよくなった株が出現するため、この株に起因する株を用いて遺伝学的解析を行うのに支障がある場合が多い。そのため、当初計画に記した、この二重破壊株で転写が落ちるRPS24B遺伝子のプロモーターに融合したレポーター遺伝子の発現が回復することで生育が回復する変異株の探索では目的とする変異の単離には至っていない。また各種RPG転写因子を組換えタンパク質として発現・精製し、試験管内転写系を構築して各因子の転写における機能を解明するという実験計画については、対象とするタンパク質の多くが100kDa近いサイズであるため、大腸菌ではほとんど発現せず、さらに新たに試した分裂酵母を宿主に用いた発現系でも大部分が分解産物としてしか得られないため、実験に使用するに至っていない。ヒト培養細胞を用いたFKBP12Aの機能解明については、RNA-seqによる解析からFKBP12の転写因子として本可能性が見出された一方で、FKBP12、その他のFKBPタンパク質の染色体上への結合を調べる実験については、ChIP-seqに用いるためにそれぞれのタンパク質のC末端に免沈用のタグを組み込んだ株の作製を完了し、現在ChIP-seqの実験系を立ち上げている段階である。 カンジダを用いた実験系では新たなRPG転写因子としてMcm1を同定し、その機能を明らかにしつつある。また出芽酵母を用いた研究ではFpr1と共に働くFhl1の機能解明が大きく進み、これまで信じられてきたRPG転写制御のモデルを大きく改訂する新たなモデルを構築し、現在その検証を行っている。このように本研究は申請当初の計画のいくつかは目標に達していない一方、予想以上に進展しているものもあり、総合的に見るとやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記載した、Fhl1のFHAドメインを介した生育抑制作用について、その生育抑制を抑圧する変異の探索、及びFHAドメインと相互作用する因子の探索を通してそのメカニズムの解明を目指す。前者については生育可能なifh1Δfhl1Δ二重破壊株にFhl1を発現させると生育不能になるところを、紫外線照射によりランダムに変異を導入することで生育可能になる株を単離する。後者については、FHAドメインをベイトにした酵母ツーハイブリッドスクリーニングを行い、目的のタンパク質の単離を目指す。 Fpr1のアラニンスキャンによる機能解析については、そのN末端領域内のいくつかのアミノ酸の変異によりDNAへの結合能、及びfhl1Δfpr1Δ二重破壊株の生育回復能が失われることを見いだした。加えてFpr1の安定性は損なわずにその機能(二重破壊株の生育回復能)が損なわれるアミノ酸残基が集中する領域を見いだした。これらのFpr1変異体の機能欠損を抑圧する変異株の探索を行い、Fpr1の重要な機能に関連する因子の同定を目指す。 カンジダグラブラータの新規転写因子Mcm1a/bについて、片方の遺伝子を破壊し、もう片方の遺伝子をTet抑制性プロモーターの制御下においた株を構築し、Doxycyclin添加により両因子の機能を一過的に失わせた際の遺伝子発現の変動をRNA-seqにより網羅的に調べることにより、これらの因子の標的遺伝子を明らかにするとともに、既知のRPG転写因子や基本転写因子群のRPGプロモーター結合に与える影響をChIP法により解析する。 ヒトのFKBP12を含む複数のFKBPファミリータンパク質について、それらが転写因子として働く可能性を、引き続きそれらの因子の遺伝子破壊の遺伝子発現への影響や、それらの因子の染色体DNAへの結合の有無を、RNA-seqやChIP-seq等の手法により検証する。
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