研究課題/領域番号 |
23K05157
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
石濱 伸明 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (60634805)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 植物免疫 / ケミカルバイオロジー / サリチル酸 / シグナル伝達 / N-hydroxypipecolic acid |
研究開始時の研究の概要 |
植物は、サリチル酸 (SA) 等の免疫シグナル分子の内在量を最適化することで、免疫と生育のバランスを調整する。UGT76B1は、SAを含む免疫シグナル分子を不活化する配糖化酵素であり、免疫応答の強度の調節において重要な役割を担う。しかしながら、植物が如何にしてUGT76B1量を調節するかは不明である。これまでに我々は、非ステロイド性抗炎症薬Tenoxicam (TNX) が植物免疫応答を阻害し、かつUGT76B1の転写を誘導することを見出した。本研究では、植物におけるTNXの作用点を基点として解析を進め、UGT76B1転写制御を介した植物の免疫シグナル分子の代謝調節機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
非ステロイド性抗炎症薬に属するTenoxicam (TNX) は、植物の免疫応答を阻害する作用を示す。これまでに、植物におけるTNXの標的としてCupinドメインを含むタンパク質CUPIN1およびそのホモログCUPIN1hを、生化学的なアプローチで同定した。また、シロイヌナズナcupin1/1h二重変異体では、植物病原細菌に対する耐病性が低下した。さらにcupin1/1h二重変異体では、植物の免疫シグナル分子であるサリチル酸 (SA) やN-hydroxypipecolic acid (NHP) を生物学的に不活性な配糖体に変換する酵素遺伝子UGT76B1の発現量が顕著に高まることも見出した。当該年度は、cupin1/1h二重変異体の耐病性が低下する表現型へのUGT76B1高発現の寄与を調べるために、cupin1/1h/ugt76b1三重変異体を作成した。cupin1/1h/ugt76b1三重変異体では、顕著な矮化、自発的な細胞死、および恒常的なSA応答のマーカー遺伝子PR1の高発現等の自己免疫の表現型が観察された。これより、cupin1/1h二重変異体の耐病性の低下に、UGT76B1の高発現が必須であることが示された。また、植物体内のSA配糖体量を調べ、cupin1/1h二重変異体は、野生型と比較してSA配糖体量が恒常的に増加することを明らかにした。以上の結果から、CUPIN1はSAを含む植物免疫シグナル分子の活性体量を調節する役割を持つと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り研究を進め、cupin1/1h二重変異体の表現型にUGT76B1の高発現が寄与すること、およびUGT76B1が高蓄積するcupin1/1h二重変異体でSA配糖体量が増加することを明らかにした。以上は、ともにCUPIN1/1hがUGT76B1の発現調節を介して植物体内の遊離SA量を制御するという仮説を支持する結果であった。また、所属研究所内の共同研究で、NHP量を測定することも可能になった。当初の計画に沿って研究を進められていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、植物免疫応答におけるCUPIN1/1hによるUGT76B1を介したSAおよびNHPの遊離体・配糖体バランス調節機構の解明に取り組む。cupin1/1h二重変異体やcupin1/1h/ugt76b1三重変異体におけるSA、SA配糖体、NHP、NHP配糖体をそれぞれ測定する。TNX処理葉でもこれら代謝物量を測定し、TNXがSAおよびNHP代謝に与える影響を明らかにする。cupin1/1h二重変異体とSA合成酵素変異体sid2あるいはNHP合成酵素変異体ald1との三重変異体を作成し、それぞれの耐病性に関する表現型を解析する。
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