研究課題/領域番号 |
23K05166
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
赤間 一仁 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (50252896)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | GABA / グルタミン酸脱炭酸酵素 / イネ / ゲノム編集 / 環境ストレス / カルモジュリン結合ドメイン |
研究開始時の研究の概要 |
植物は乾燥や高濃度の塩などにさらされると、細胞内のGABA濃度が急激に上昇します。興味深いことに、予めGABA処理した植物はこれらストレスに対して耐性を獲得します。植物でGABAの合成を触媒するグルタミン酸脱炭酸酵素 (GAD) はストレスに応答した細胞内カルシウムの上昇が引き金となり、その酵素活性が上昇することが分かっています。本研究では生体内でGABA合成量とその動態がどのように巧妙に調節されるのか、高活性のGADを発現するゲノム編集イネ、GADのプロモーターの調査などから総合的に解明します。この成果を発展させて、イネ組織・器官でGABAが高蓄積した、様々なストレスに強いイネを創出します。
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研究実績の概要 |
GABA合成に関わるグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)はイネでは5つの遺伝子族を形成し、組織器官や環境ストレスに対して異なる応答を示す。 イネGADをコードする遺伝子(GAD1, GAD3, GAD4)のカルモジュリン結合ドメイン(CaMBD)のコード領域をゲノム編集によって欠失させた変異系統GAD1#5, GAD3#8とこれらの交雑系統#78(GAD1#5xGAD3#8)、そしてGAD4#14-1を用いて環境ストレス試験を行った。Murashge & Skoog培地上で2週間育てた苗条を低温(4°C、5日間)、高塩 (160 mM NaCl、2日間)、乾燥(湿重量を25%減)、冠水(3日間)で処理して回復後に、土に移植して約18日間生育させた。 これらの処理によりGAD1, GAD3, GAD4の遺伝子はシュートでも根でも高度に発現が誘導され、GABA含量も野生型に比べて5倍以上も増加した(ストレス誘導前は野生型と比較して、2~3倍)。生存率を見ると、こららのストレス条件で、野生型日本晴はほとんどが枯死したのに対して、ゲノム編集イネでは高い生存率を示した。特に、GAD1とGAD3の交雑系統である#78は単独の系統に比べて、GABA含量がより高く、生存率もより高い傾向が見られた。このことから、CaMBDを欠いたゲノム編集イネではストレスにより、GAD1、GAD3、GAD4遺伝子の発現が高まり、同時にGAD酵素活性の上昇を伴った活性型GAD酵素により野生型に比べ、栄養組織でのGABA含量が増強され、それが複合的なストレス耐性をもたらしたものと考えられる。 内在性のGABA含量を増加させることで様々な環境ストレスに対して耐性のイネの創出はこれが最初の例である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本計画研究の最終的な目標はゲノム編集によりイネの特定の組織に高濃度のGABAを蓄積させ、複合ストレスに対して耐性を示すイネを創出することである。本研究ではゲノム編集により自己阻害ドメインであるカルモジュリン結合ドメイン (CaMBD)を欠失させたイネGAD1, GAD3, GAD4,そしてGAD1とGAD3の交雑系統を用いた。これらの系統を乾燥、冠水、高塩、低温のストレスにさらした結果、いずれの系統でも野生型に比べて、高濃度のGABAの蓄積が見られ、生存率は高い値を示した。知る限りでは内在性のGABA含量を高めることで複数の環境ストレスに対してイネが著しい耐性を示した例はこれが最初の事例である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度においてCaMBDを欠失したゲノム編集イネは細胞内GABA含量の増加により様々な環境ストレスに対して強い耐性を持つことが示された。今年度は以下の2点に絞って研究を進める。 1)GABAにより引き起こされる環境ストレス耐性分子機構の解明:ストレスに応答したGABA含量の増加がトリガーとなり、イネはどのようなメカニズムによって複合的な環境ストレス耐性形質を獲得したのか明らかにする。このためにRNA-seq解析からGABAが増強されたイネにおいて発現が高度に誘導される遺伝子群を同定し、その遺伝子産物(酵素、転写因子、HSPなど)のRNA・タンパク質レベルの解析を進める。 2)イネGADの自己阻害ドメインのファインマッピング:植物GADのC末端側に存在する約30アミノ酸残基であるCaMBDは構造的にはカルシウム/カルモジュリンが結合する領域であり、機能的には酵素活性を抑制する自己阻害ドメインである。イネGADのCaMBDの上流には約20アミノ酸残基のリンカー配列があり、保存されたGAD酵素本体と繋がっている。イネGADの自己阻害ドメインをより詳細に特定するためにこのリンカー部分を少しずつ欠失させた欠失GAD酵素シリーズを作製し、その酵素活性の比較分析を行う。
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