研究課題/領域番号 |
23K05167
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松島 良 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (80403476)
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研究分担者 |
藤田 直子 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (90315599)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 澱粉 / 胚乳 / オオムギ / 突然変異体 / 遺伝的相互作用 / 変異体 / アミロペクチン |
研究開始時の研究の概要 |
澱粉粒とは、植物細胞内で合成された澱粉が形成する粒子のことである。澱粉粒の形は澱粉の消化性、糊化特性、精製効率、加工特性に影響するため、澱粉の産業利用時における重要形質である。複数の澱粉生合成関連遺伝子間の相互作用が、澱粉粒の形の決定に重要な役割を果たしていると考えられているが、その全容は不明である。本研究ではオオムギを用いて、澱粉生合成関連遺伝子の多重変異体系統群を作出し、変異間の遺伝的相互作用が澱粉粒の形と澱粉特性にどのように影響するのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
澱粉は主食としてだけでなく、糖化製品、食品添加物、工業製品などの加工製品としても利用される重要物質である。澱粉粒とは、植物細胞内で合成された澱粉が形成する粒子のことである。澱粉粒の形は澱粉の消化性、糊化特性、精製効率、加工特性に影響する。本研究ではオオムギを用いて、澱粉生合成関連遺伝子の変異間の遺伝的相互作用が澱粉粒の形と澱粉特性にどのように影響するのかを明らかにする。研究代表者は、これまでに澱粉粒の形を簡便に観察できる方法を開発しており、この方法を用いて澱粉粒の形に異常を示す突然変異体を単離した。オオムギはもともと1つの粒子から構成させる単粒型澱粉粒を発達させる。得られた変異体の中には、複粒型 (複数の粒子が集合して1つの澱粉粒を構成するタイプ)の澱粉粒を発達させる変異体や野生型よりも巨大化した澱粉粒を発達させる変異体が含まれていた。前者は、澱粉生合成関連遺伝子の1つであるISOAMYLASE1 (HvISA1)に変異を持つhvisa1変異体で、後者は炭水化物結合ドメイン(CBM48)を持つタンパク質FLOURY ENDOSPERM6 (HvFLO6)に変異を持つhvflo6変異体であった。hvisa1 hvflo6二重変異体の穀粒では澱粉量が減少する一方で、単糖類(グルコース、フルクトース)、二糖類(スクロース、マルトース)ならびに植物性グリコーゲンが単独変異体よりも高蓄積していた。分散分析の結果、観察された昂進効果は単なる相加効果ではなく、変異間の相乗効果によることが示唆された。このことは、hvisa1変異とhvflo6変異の間で遺伝的相互作用が存在し、その結果二重変異体では単独変異体よりも表現型が昂進されたことを意味する。さらに、細長い澱粉粒を発達させる突然変異体の単離を行い、その原因遺伝子が澱粉枝付け酵素(BE)の1つであることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、これまでに澱粉粒の形を簡便に観察できる方法を開発している (Matsushima et al. 2010)。この方法では多試料の澱粉粒の観察が可能であり、澱粉粒の形に異常を示す突然変異体のスクリーニングに有用である。開発当初はイネを用いて突然変異体の探索を行なっていたが、本研究ではオオムギを用いて突然変異体の探索を行なっている。オオムギ、コムギに代表されるムギ類では、他のイネ科植物では観察されない特徴的な二峰性のサイズ分布を示す単粒型澱粉粒が形成される。イネとオオムギではもともとの澱粉粒の形状が大きく異なるため、ムギ類特異的な澱粉粒形成機構の存在が予想される。現在までのスクリーニングにより、もともと単粒型澱粉粒を発達させるオオムギで複粒型澱粉粒を発達させるhvisa1変異体、巨大化した澱粉粒を発達させるhvflo6変異体、細長い澱粉粒を発達させる変異体や不定形の澱粉粒を発達させる変異体も単離できている。hvisa1変異体とhvflo6変異体に関しては、二重変異体の解析から変異間の遺伝的相互作用についての新知見を得て論文発表を行った (Matsushima et al 2023)。論文発表の過程で、ばらつきの大きいデータの再現性を確認するために、当初消耗品費として計上した実験試薬の追加購入が必要になったため研究費の配分変更を行なった。当初購入予定であった実験機器については、他グループからの借用することができたため購入を見送ったが、研究の進捗に支障は無かった。hvisa1変異体とhvflo6変異体以外の変異体についても原因遺伝子の同定は済んでおり、変異の塩基置換を検出できるDNAマーカーも作成済みである。これらの材料をもとに、現在単離している4つの変異体間の二重、三重、四重変異体の作出に取り組んでいる。おおむね計画通りの進捗だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、既に論文発表を行なったhvisa1変異体とhvflo6変異体以外の2つの変異体の解析を進める。これらはどちらも澱粉生合成関連遺伝子に変異を有している。1つ目は細長い澱粉粒を発達させる変異体で、澱粉枝付け酵素(Starch Branching Enzyme, BE)に変異を有している。2つ目は不定形の澱粉粒を発達させる変異体で、澱粉合成酵素(Starch Synthase, SS)に変異を有している。これらの変異体と、hvisa1変異体ならびにhvflo6変異体と組み合わせた二重、三重変異体が作出済みであり、これらの解析を進める。特に澱粉特性の評価(グルコース鎖長分布解析、消化性、糊化特性)を行う。また、澱粉を特異的に染色する蛍光フルオロセインと共焦点走査型レーザー顕微鏡を用いて、澱粉粒の形状解析を行い、変異が多重化すると澱粉粒の形状がどのように変化するのかについて明らかにする計画である。
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