研究課題/領域番号 |
23K05170
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
高木 宏樹 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (80616467)
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研究分担者 |
西内 巧 金沢大学, 疾患モデル総合研究センター, 准教授 (20334790)
殿崎 薫 横浜市立大学, 理学部, 助教 (20749494)
伊藤 秀臣 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (70582295)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | アントシアニン / 光非依存的 / Brassica rapa / エピジェネティクス / 光『非』依存的なアントシアニン蓄積 / カブ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、カブの地下部で着色する原因を解き明かすことで、光『非』依存的なアントシアニン蓄積 (LIA; Light Independent Accumulation of anthocyanin) に関する分子メカニズムを解明する。多くの農作物の色を決定するアントシアニン系色素は、光刺激によって誘導される。それ故、農作物の生産現場では、多大な労力をかけた人為的光制御による着色が行われている。一方、カブ品種「アカマル」は、光刺激のない地下部で着色する。本研究により、「アカマル」のILA機構を解明できれば、光環境に影響を受けず、安定した着色形質を有する農作物の育種および栽培技術の開発が期待される。
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研究実績の概要 |
Brassica rapa に属するカブ品種「アカマル」は、光非依存的なアントシアニン蓄積 (LIA: Light Independent Anthocyanin) 機構を有し、地上部および地下部の両方においてアントシアニン系色素を蓄積する。これまでに、アカマルおよび非 LIA タイプのカブ品種「金沢青カブ」間の交雑後代における遺伝解析から、「アカマル」由来の劣性 LIA 原因遺伝子領域 qLIA7-A (染色体 A07:29.20-36.35 Mb) が同定された。本研究では、LIA 機構における qLIA7-A の機能解明を目的として、まず、「金沢青カブ」遺伝背景に qLIA7-A を導入した「NIL496」を育成した。「NIL496」は、地上部のみが着色し、LIA を示さず、qLIA7-A の効果は確認されなかった。しかし、「アカマル」および 「NIL496」 間の交雑 F1 世代は LIA を示し、LIA の発揮には、qLIA7-A のホモ接合性遺伝子型およびアカマル由来の優性遺伝子が必要であることが示唆された。一方、非 LIA タイプのカブ品種「日野菜」由来の qLIA7 (qLIA7-H) をアカマル遺伝背景に導入した「NIL11」を育成した。「NIL11」の個体間では、同質ゲノムを有するにも関わらず、LIA 表現型が分離し、LIA にはエピジェネティックな制御機構の関与が推察された。さらに、発現解析およびメチローム解析を行なった結果、LIA を示す個体の地下部では、アントシアニン生合成経路における正の転写因子 BrMyb2 が発現しており、第3エキソン由来 siRNA の発現および第2-3エキソン領域の高度 DNA メチル化が確認された。以上より、LIA 機構には、BrMyb2 におけるエピジェネティック修飾の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、「金沢青カブ」遺伝背景に qLIA7-A を導入した「NIL496」および「日野菜」由来の qLIA7-H を「アカマル」遺伝背景に導入した「NIL11」の育成に成功している。各NILは、それぞれ、全ゲノムシーケンスによる遺伝背景の確認を実施済みであり、正確性の高いゲノム情報が確定している。また、LIA におけるエピジェネティックな制御機構の確認するためのRNA-seqによる発現解析系、EM-seqによるメチローム解析系およびsmall RNA-seqによるsiRNAの発現解析系などの実験系を当該グループで確立した。以上より、研究の中心になる植物材料や重要な解析方法を確立済みであり、次年度以降の実験を予定通り行えるので、順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに育成された 2 種類のNIL(「金沢青カブ」遺伝背景に qLIA7-A を導入した「NIL496」および「日野菜」由来の qLIA7-H をアカマル遺伝背景に導入した「NIL11」)におけるエピアリルの遺伝率を調査する。現在、「NIL496」および「NIL11」では、自殖2回目および1回目の種子が採種されている。本年度は、さらに、2回の自殖を繰り返し、異なる世代間でLIAに関する表現型の分離、すなわち、エピアリルに支配される形質の出現率を調査する。 また、LIA 関与するエピジェネティックな制御機構の解明に向けて、「NIL11」を中心に、EM-seq によるメチローム解析および small RNA-seq による siRNA 発現解析を実施する。昨年度までのエピジェネティック解析は、LIA型としてF1:「NIL496」x「アカマル」および 非LIA型としてF1:「金沢青カブ」x「アカマル」の比較解析を中心に実施した。どちらのNILもqLIA7においてアカマルアリルホモ接合性で有すること以外は、同質ゲノムで有している。そのため、公平な比較解析が可能であると期待されたが、ゲノムのヘテロ接合度が高く、解析が複雑になってしまい、本来期待されるエピジェネティック修飾を検出できなかった可能性がある。本年度は、「日野菜」x「アカマル」間の交雑後代である「NIL11」、「アカマル」および「日野菜」間で同様の解析を実施し、エピジェネティックな修飾状態を調査する。さらに、オービトラップによるプロテオーム解析も実施して LIA に特異的なタンパク質の有無を調査する。
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