研究課題/領域番号 |
23K05181
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
谷口 郁也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (20370570)
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研究分担者 |
高山 和大 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 研究員 (90884982)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | チャ / 加水分解型タンニン / テオガリン / QTL解析 / RNA-seq / 量的形質遺伝子座 / 選抜マーカー |
研究開始時の研究の概要 |
チャ(Camellia sinensis)の近縁野生種タリエンシス(C. taliensis)は、成分特性が独特な興味深い育種素材である。特に、タンニン類は特徴的で、免疫系や認知機能に機能性があるとされるテオガリンやストリクチニンといった加水分解型タンニンを高含有する。しかし、タリエンシスは製茶品質や生育が劣っているため、チャの優良系統を複数世代戻し交雑し、加水分解型タンニン高含有チャ品種の選抜をすすめている。この戻し交雑育種を効率良くすすめるため、ゲノム情報を利用した加水分解型タンニンの選抜技術の開発をめざす。
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研究実績の概要 |
1. 加水分解型タンニン高含有に関与するゲノム領域の特定と選抜マーカー開発チャの加水分解型タンニン類高含有に関与するゲノム領域について、「茶中間母本農6号」(タリエンシスとチャのF1世代)と「おくはるか」(緑茶用品種)を交雑親とする分離集団(n=92)を用いてQTL解析を行った。すでに検出している第8染色体上の加水分解型タンニン類高含有QTLの領域内で組換えの起きている個体を獲得し、候補遺伝子領域の絞り込みが進展した。また、QTL解析の結果、第5染色体にもテオガリン含量に関与するQTLを検出した。第8染色体上のQTLはタリエンシス型のアリルが高含有性だが、第5染色体上のQTLではチャ型のアリルが高含有性を示し、またこれらの間にはエピスタシス効果が認められた。新たに見つかった第5染色体のQTLについては、遺伝的効果の詳細な解析が必要であると考えられた。 2.加水分解型タンニン高含有に関与する候補遺伝子の探索と機能解析 「さえあかり」(緑茶用品種)と「MK5601」を交雑親とする分離集団のうち加水分解型タンニン類含量に差がみられた個体と親品種に対してRNA-seq解析を実施した。加水分解型タンニン類高含有・低含有個体群間、親品種間での比較解析からそれぞれ発現変動遺伝子を抽出し、二群間で共通して発現変化が認められた遺伝子を候補遺伝子としてリストアップした。第8染色体上の絞り込んだQTL領域内には366個の遺伝子が存在するが、そのうち3個の候補遺伝子を見出した。この中に、タンニン類合成に関係する酵素活性を有する遺伝子は存在しなかったが、転写因子等が代謝を調節している可能性もあり、今後アンチセンスオリゴアッセイで機能を確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、まず、「茶中間母本農6号」(タリエンシスとチャのF1世代)と「おくはるか」(緑茶用品種)を交雑親とする分離集団を用いて行ったQTL解析により新たに第5染色体にQTLを見出し、すでに見出していた第8染色体のQTLとの間にはエピスタシスがあることを明らかにした。また、第8染色体のQTL領域については本年度の解析に用いた集団で新たな組み換え個体を獲得しており、これを用いてQTL領域の絞り込みを進展させることができた。一方、加水分解型タンニン高含有の原因遺伝子の候補探索については、「さえあかり」(緑茶用品種)と「MK5601」を交雑親とする分離集団を、加水分解含有量の高低によって2群に分けて実施したRNA-seq解析により第8染色体のQTL領域に候補遺伝子を3個見出した。これらの通り研究はおおむね計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
加水分解型タンニン高含有については第5染色体と第8染色体のQTLについて詳細マッピングを進めて領域を絞り込み、育種選抜に利用可能なDNAマーカーの開発を進める。また、これらのQTL領域のハプロタイプ構成と加水分解型タンニンやカテキン類の含有量との関係性を調査し、各QTLの機能を推定する。さらに、参照ゲノム情報やRNA-seq解析の情報を活用しつつ、アンチセンスオリゴアッセイを実施し、QTL領域に含まれる遺伝子から加水分解型タンニン高含有の原因となる遺伝子の候補を絞り込んでいく。
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