研究課題/領域番号 |
23K05184
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
山田 智 鳥取大学, 農学部, 教授 (80294346)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | アクアポニックス / 海水 / ティラピア / 塩生植物 / seawater / halophyte / aquaponics / dryland / salinity |
研究開始時の研究の概要 |
世界の人口を支えるためには食料生産の増大が急務である.乾燥地域における水資源の保全をしつつ食料生産を行うことは,持続可能な社会を目指す地球規模の問題である. そこで海水による陸上養殖廃液を用いるといった,塩分濃度が驚異的に高い場所でのアクアポニックスシステムを開発したい.海水による水耕栽培が可能となれば,水不足問題を解消し,高級な海水魚の陸上養殖と組み合わせたアクアポニックスによって,魚というタンパク源のみならず野菜に豊富なミネラルやビタミンを生産できる.また,陸上養殖が抱えるNやPの海への排出が赤潮を招く,空気中への脱窒が温室効果ガスとなる,といった問題の解決の糸口になる.
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研究実績の概要 |
海水を用いたアクアポニックスシステムの開発”を目指して、本年度は、研究課題1“海水を用いた塩生植物の生産可能性”および課題2“塩生植物は海水を用いた水産物養殖廃液中のNを十分に吸収することが可能か?”について、検討した。課題1については、2分の1に希釈した海水を用いて水産物(淡水魚;ティラピア。高密度でも飼育が可能であるために集約的なタンパク源の生産物として注目されている)を養殖した後の廃液を培養液として、アイスプラント、スアエダおよびシーアスパラガスの水耕栽培が可能であることがわかった。なお、アイスプラントでは、pHを弱酸性にすることと、標準培養液としては不足する元素を添加することにより成育が有意に大きくなったが、スアエダおよびシーアスパラガスではそれらの処理がなくても、標準培養液による栽培と比べて成育が小さくなることはなかった。すなわち後者2種については、養分に過不足がある海水を培養液としても、成育可能であるとが可能であるということである。さらに後者の2種については、より原液に近い海水を無処理で用いても水耕培養液として利用できる可能性を期待できることがわかった。最終の目標としては、海水を培養液とする塩生作物栽培を目指している。課題2については、同じ養殖廃液を用いてアイスプラントおよびスベリヒユを水耕栽培し、栽培前後の培養液中の硝酸態N濃度を調べた。この結果両種ともに培養液中のNを約80%吸収することがわかった。海水を用いたアクアポニックス廃液を海洋に放出する場合に、N放出が20%程度であることがわかった。海洋へのN放出をさらに少なくするような栽培装置と計画を打ち出す予定である。また、NだけてはなくPもまた富栄養化原因物質であるために、陸上での食料生産活動の後に、海洋に放出はしたくはない。本アクアポニックスによるNだけではなくPの吸収効率も高めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗は、概ね順調に進行していると考える。その理由は、当初計画に挙げた3つの研究課題のうち、2つが期待する結果に近いものを生み出しているからである。さらによい結果(課題1ではより多くの栽培適種の選定、課題2ではより高いN回収率)は、今後の課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に変更はない。しかし、詳細な設計については改良を加えるつもりである。課題1では、より多くの栽培適種の選定を狙うとしたが、その予備試験はすでに始めている。海水の塩分濃度に近いもので水耕栽培が可能である植物種も数種抽出している。これらについては、より確実な栽培試験を通して、新しい海水適種として提示する予定である。課題2では、Nに加えてより高いP回収効率を数値化して提示したい。課題3については、本報告書でその結果を記載していない。予備試験はすでに始めており、明確な結果(塩生植物の海水への適応戦略の洗い出し)を得てから、記載をする予定である。
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