• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

リンゴのゲノム編集実用化のためのプロトプラストからの個体再生系の確立

研究課題

研究課題/領域番号 23K05220
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分39030:園芸科学関連
研究機関岩手大学

研究代表者

小森 貞男  岩手大学, 農学部, 教授 (00333758)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワードリンゴ / 果樹 / 培養 / ゲノム編集 / 成長点 / カルス / プロトプラスト / 形質転換
研究開始時の研究の概要

リンゴではAgrobacterium法による形質転換系が確立されているが、日本国内ではカルタヘナ法により遺伝子組換え植物の栽培は規制されており、形質転換植物の産業への利用は今後も困難と考えられる。一方、1~数塩基の挿入や欠損の場合はカルタヘナ法の制約を受けず、一部のゲノム編集個体は遺伝子組換え形質転換体として扱われない。ゲノム編集技術は従来のAgrobacterium法とは異なり、遺伝子導入の痕跡を残さずに遺伝子の改変が可能な技術で国民が受け入れ可能な技術として育種への応用が期待されている。本研究では、リンゴで効率的にゲノム編集個体を作出できる技術体系を構築し、リンゴ育種に資する。

研究実績の概要

リンゴにおいてプロトプラストからの再分化系を確立することはゲノム編集の育種への実用化のみならず、様々な遺伝子やタンパク質等の機能解析のためにも有用である。ゲノム編集においてはキメラ解除の必要が無い等の利点があるが、リンゴでプロトプラストからの個体再生に成功した事例は数例で、そのいくつかは親品種と遺伝子型の異なる実生を用いた実験系である。本実験では、ゲノム編集の実用化を目指して親品種と同じ遺伝子型の組織に由来するプロトプラストを用いるが、再分化能が高いとされる発芽実生のプロトプラストも実験系の確立のために用いる。親品種と遺伝子型が同じで再分化能が高い組織としては成長点と胚心細胞が挙げられる。これまでの研究結果から、通常の培養条件(室温25℃、16時間日長)で増殖した個体の成長点を用いてもカルスからのシュート形成は困難であることが判明している。そこで、シュート増殖の際に暗黒処理を行うことでカルスからのシュート誘導に成功したが、シュート誘導に最適な暗黒処理期間の検討は不十分なままである。一方、珠心細胞からのシュート誘導では受粉後30~50日後の果実から胚珠を取り出すことが有効で、低温処理も効果的であることが判明しており、カルスからのシュート再生にも成功しているが、シュート再分化率が低いままである。これらのシュート再分化能を有するカルスからプロトプラストを単離し、カルスを増殖し、シュートを再分化させるためには酵素処理による細胞壁の除去条件の検討やアルギン酸等による細胞の保護方法、カルスの選抜基準等、解決すべき課題は多い。
また、プロトプラスト以外の形質転換やパーティクルガンによるゲノム編集においては、キメラ解除が重要な課題となっており、本研究ではモデルケースとして形質転換によって作出したゲノム編集個体のキメラ解除方法についても検討する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、①培養で維持しているリンゴ品種‘ふじ’を用いてシュート増殖の際に暗黒処理期間の検討、②再分化能が高いとされるリンゴ属植物Malus prunifolia‘マルバカイドウ’のin vitroでの増殖、③実生からのプロトプラスト作出に用いる交雑種子の獲得を行った。その他、④Agrobacterium法による遺伝子組換え経由のゲノム編集個体を用いたキメラ解除方法の検討を行った。
①培養で維持している‘ふじ’(培養時期が異なる2系統)を暗黒条件下で3~5カ月間、増殖培地(1001培地)で増殖し、成長点を切り出し、Caboniら(2000)のカルス誘導培地で20日間暗黒で培養後、Saito and Suzuki(1999)のシュート誘導培地で1カ月ごとに継代しシュート再分化率を3カ月間調査した。その結果、3カ月目のシュート再分化率に有意な差は認められなかったが増殖培地での暗黒処理期間が3カ月の場合のシュート再分化率が最も高い結果となった。再分化率は約40%だった。今後、カルス誘導培地の暗黒処理期間の検討も必要であるが、プロトプラスト化する場合の再分化能の高いカルスは増殖培地で暗黒処理を3週間行うことが適当と推察された。
②‘マルバカイドウ’の休眠枝を水挿しで発芽させ、in vitro条件化で増殖した。今後、増殖培地での暗黒処理を経て成長点を切り出し、カルス誘導後にプロトプラスト実験に供試する。
③交雑により同一組み合わせの種子を多数獲得した。発芽後プロトプラスト実験に供試する。
④Agrobacterium法による遺伝子組換え経由のゲノム編集個体を用いてキメラ解除方法の検討を行った。CRISPUR/Cas9の構造が組み込まれた形質転換個体は葉切片を再分化させることで高効率でキメラ解除が可能となり、新たな変異も誘発されることが確認された。

今後の研究の推進方策

今年度①および②については、‘ふじ’および‘マルバカイドウ’の成長点に由来するカルスからプロトプラストを単離するための条件を設定し、シュート再分化実験を行う。③では、芽生え直後の実生からのプロトプラストを単離し、シュート再分化実験を行う。いずれの実験においてもプロトプラストからの安定的なシュート誘導には困難が予想されるため、プロトプラスト単離後のアルギン酸包埋方法、カルス誘導培地、シュート誘導手順等の実験のステップごとに確実な条件設定を試みる必要がある。また、プロトプラスト以外の方法で効率的にゲノム編集を行うための方策を④その他の実験として用意している。具体的には、パーティクルガンを用いてRNPを導入し一過的発現によってゲノム編集を実現する方法を改良して、効率よくゲノム編集個体を獲得するための培養条件の設定およびキメラ解除方法の確立を試みる。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Release of chimeras and efficient selection of mutants by CRISPR/Cas9-mediated gene editing in apple.2023

    • 著者名/発表者名
      Li, F., N. Kawato, H. Sato, Y. Kawaharada, M. Henmi, A. Shinoda, T. Hasunuma, C. Nishitani, Y. Osakabe, K. Osakabe, M. Wada, N. Tanaka, M. Watanabe, C. Zhang, S. Deng and S. Komori.
    • 雑誌名

      Scientia Horticulturae

      巻: 316 ページ: 112011-112011

    • DOI

      10.1016/j.scienta.2023.112011

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] ‘ふじ’の形質転換に適したカナマイシン濃度の検討.2023

    • 著者名/発表者名
      前田恵花,李 芙蓉,佐藤晴香,川原田泰之,渡邉 学,小森貞男
    • 学会等名
      園芸学会東北支部令和5年度大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi