研究課題/領域番号 |
23K05224
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39030:園芸科学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
八幡 昌紀 静岡大学, 農学部, 准教授 (60420353)
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研究分担者 |
藤井 浩 静岡大学, 農学部, 客員教授 (00355398)
島田 武彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 研究領域長 (10355399)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | カンキツかいよう病 / DNAマーカー / QTL解析 / 病害抵抗性 / 属間雑種 / 温暖化 |
研究開始時の研究の概要 |
温暖化の進行により国内外でカンキツかいよう病の被害が深刻化し、抵抗性品種の開発が急務となっている。これまでキンカンが真性抵抗性を持つことが明らかになったが、戻し交雑に要する育種年限やキンカンの付随形質の除去などの困難さから抵抗性育種は進んでいない。本研究では、キンカンのカンキツかいよう病真性抵抗性をカンキツ育種に利用するためのMAS基盤の確立を目的に、キンカンと罹病性のレモンとの正逆交雑実生集団を用いて、遺伝統計学的手法によるキンカンの真性抵抗性に関わる遺伝子座の解明と,ゲノム情報とバイオフォマティクス技術を用いたカンキツ育種で汎用的に適用可能な真性抵抗性選抜DNAマーカーの開発を行う。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、現在国内外を問わず被害が深刻化しているカンキツかいよう病の抵抗性品種の開発をするために、カンキツかいよう病に対して真性抵抗性を有するナガキンカンと罹病性のマイヤーレモンとの正逆交雑実生集団を用いて遺伝統計解析を行い、キンカンの真性抵抗性に関与するゲノム領域の同定と細胞質の関与の解明を行う。さらに、真性抵抗性選抜DNAマーカーとキンカン対立遺伝子識別マーカーを開発し、キンカンの真性抵抗性をカンキツに導入するためのMarker Assisted Selection(MAS)基盤の確立することである。 研究1年目の令和5年度では、研究材料である真性抵抗性のナガキンカンと罹病性のマイヤーレモンとの正逆交雑と、その正逆交雑から得られた実生集団における効率的な真性抵抗性の評価技術(接種後の菌数の増殖を定量PCR法で数量化する手法)の開発するために、葉へのかいよう病菌接種後の菌数の増殖測定を行った。 ナガキンカンとマイヤーレモンとの正逆交雑では、マイヤーレモンにナガキンカンを交配した時、全く着果せず、雑種後代を得ることはできなかった。一方、ナガキンカンにマイヤーレモンを交配した時、着果率は極めて低かったものの、収穫した交配果実から発芽能力を有する完全種子がいくつか得られた。次に、ナガキンカンとマイヤーレモンの成葉にかいよう病菌接種し、葉中の菌数の増殖測定を行った結果、両種ともにカンキツかいよう病以外の病原菌の発生が認められ、正確な菌数のデータを獲得できなかった。また、対立遺伝子の優性効果を判定するために遺伝子領域を対立遺伝子ごとにフェージングするソフトウエアの開発を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究1年目では、キンカンとカンキツとの正逆交雑実生集団の連鎖地図の作成に必要な材料育成のために、真性抵抗性のナガキンカンと罹病性のマイヤーレモンとの正逆交雑と、その正逆交雑から得られた実生集団における効率的な真性抵抗性の評価技術の開発するために、ナガキンカンとマイヤーレモンの葉へのかいよう病菌接種後の菌数の増殖測定を行った。 真性抵抗性のナガキンカンと罹病性のマイヤーレモンとの正逆交雑では、種子親にマイヤーレモンを用い、ナガキンカンの花粉を交配したところ、全く着果は認められず、雑種後代を得ることはできなかった。一方、その逆交雑であるナガキンカンにマイヤーレモンを交配したところ、着果率は極めて低かったが、いくつかの実生を育成することができた。 次に、効率的な真性抵抗性の評価技術の開発するために、7月から8月にかけてナガキンカンとマイヤーレモンの成葉にかいよう病菌接種し、葉中の菌数の増殖測定を行った。既存の報告では、カンキツかいよう病の罹病性品種では、葉中における菌数は接種後8日以降から急激に増加するのに対し、真正抵抗性を示すナガキンカンでは、接種後3日から5日までは増加するがそれ以降減少に転じる。一方、今年度の実験結果では、菌数増減のパターンが既存の報告と異なった。罹病性のマイヤーレモンでは、既存の報告と同様に菌数の急増が認められたものの、そのタイミングが接種後3日からと早く、カンキツかいよう病菌以外の菌の発生が認められた。真正抵抗性のナガキンカンでは、カンキツかいよう病菌以外の菌の発生が認められ、菌数カウントができなかった。 また、キンカンの真性抵抗性遺伝子の対立遺伝子の優性効果を判定するためにはアレル間多型の検出が必要となるため、既存のロングリードデータをサンプルとして遺伝子領域を対立遺伝子ごとにフェージングするソフトウエアの開発を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究1年目では、カンキツかいよう病抵抗性遺伝子の連鎖地図の作成に必要なナガキンカンとマイヤーレモンとの正逆交雑実生集団の育成を試みたが、得られた実生はわずかであった。また、ナガキンカンとマイヤーレモンの葉へのかいよう病菌接種後の菌数の増殖測定を行ったが、既存の報告のように菌数のカウントができず、正逆交雑実生集団における抵抗性の有無を評価するための技術開発に繋げることができなかった。 本研究の今後の推進方策としては、研究2年目の令和6年度においても引き続き、ナガキンカンとマイヤーレモンとの正逆交雑を行うが、他のキンカン種も含め交配組み合わせを増やし、実生集団の育成を試みる。また、接種後の菌数の増殖を定量PCR法で数量化する評価技術の開発では、カンキツかいよう病以外の病原体のコンタミが原因により、正確な菌数を測定することができず、定量PCR法による菌数解析も行うことができなかったため、接種条件(栽培条件や接種時期)を変えて再度ナガキンカンとマイヤーレモンにおいて菌数調査を行い、接種後の菌数の増殖を定量PCR法で数量化する評価技術の開発を目指す。 また、真性抵抗性をもつナガキンカンと、キンカンとメキシカンライムの交雑種と推定されている罹病性のナガバキンカン、およびナガバキンカンの片親であるメキシカンライムについて受託解析によりロングリード(PacBio hifi)を取得し、得られたリードを利用して遺伝子領域のフェージングを行い、キンカン抵抗性遺伝子に関する既報(Fu et al. 2024.)の情報と組み合わせて,真性抵抗性対立遺伝子候補を推定する。これらの遺伝子フェージング情報と公開ゲノムデータ(マンダリン、ブンタン、レモン)をレファレンスとする各ロングリードを組み合わせた構造変異解析を将来のマーカー開発に利用するためデータベース化する。
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