研究課題/領域番号 |
23K05225
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39030:園芸科学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
小林 伸雄 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (00362426)
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研究分担者 |
中務 明 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (40304258)
門脇 正行 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (00379695)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | アントシアニン / エチレン / クロロフィル / 光合成 / MADS-box gene / Rhododendron / 離層形成 / 花色色素 / 老化ホルモン |
研究開始時の研究の概要 |
ツツジの古典園芸品種には、花色変化を伴いながら100日以上花冠が持続する「見染性(みそめしょう)」と呼ばれる特異な形質がある。本形質の育種活用とその機構解明は長期間の観賞性を有する花きの革新的な新品種育成につながるものである。本研究では、①ガク化花弁の持続性と花色色素合成に関する遺伝子、②緑化したガク化花弁における光合成の花持ちへの貢献度、③環境条件と老化ホルモンの花持ちへの影響について明らかにすることによって、ガク化花弁が長期間持続する生理的・遺伝的な機構を解明し、新たな花器形質を活用した新品種育成と栽培技術開発に適用することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究ではツツジにおける花弁のガク化変異形質「見染性(みそめしょう)」の育種活用と栽培技術開発のための基礎知見を得ることを目的にしており、令和5年度の研究成果は以下のとおりである。 「Ⅰ.ガク化花弁の持続性と花色色素合成に関する遺伝子解析」では、見染性品種と育成系統の開花期間中の花色変化の調査により、1)赤色―黄緑色―赤色、2)赤色の維持、3)薄赤色―黄緑色の3グループに分類することが出来た。アントシアニンおよびクロロフィル含量の分析から、赤色は花弁のアントシアニン蓄積、黄緑色は通常花の花弁にはほとんど含まれないクロロフィルの蓄積によることが明らかになった。遺伝子解析により、がく化花弁では分解酵素遺伝子発現が低いため、クロロフィル色素の蓄積が示唆された。 「Ⅱ.緑化したガク化花弁における光合成測定」では、見染性3品種のガク化花弁にはクロロフィルが存在するが、含量は葉と比較して非常に低いことを明らかにした。ガク化花弁の見かけの光合成速度は、開花直後の4月では負の値となったが、花弁が緑化した5月では光強度が高くなると葉および花弁の光合成速度は高くなる傾向を示した。中程度の光強度で葉の4割程度の光合成速度を示す品種も観察された。 「Ⅲ.老化ホルモン;エチレンの影響評価 」では、ツツジ通常花ではエチレン混合気の暴露により花冠基部に離層が形成され花冠が脱落するが、エチレン阻害剤STS処理により離層形成が阻止されることから、ツツジ花冠はエチレン感受性が確認された。一方、見染性のがく化花弁ではエチレン感受性が低く、離層は形成されないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「Ⅰ.ガク化花弁の持続性と花色色素合成に関する遺伝子解析」、「Ⅱ.緑化したガク化花弁における光合成測定」および「Ⅲ.老化ホルモン;エチレンの影響評価」の研究課題について当初の研究計画に沿っておおむね順当に進展している。ⅠおよびⅡの研究成果に関しては国際シンポジウムにおける発表予定である。また、育成した新品種系統については種苗登録や各地の生産者における栽培普及に関する取り組みも進めている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究実績を踏まえて、令和6年度以降の研究計画は以下のとおりである。 「Ⅰ.ガク化花弁の持続性と花色色素合成に関する遺伝子解析」では、ガク化花弁の花色変化パターンに応じた花弁の細胞組織構造の比較、カロテノイド色素含量の変動等を解析する。遺伝子解析では花色や器官の形成・維持に関連する遺伝子(①カロテノイドの合成・分解関連遺伝子、②花器官形態形成遺伝子(MADS-box遺伝子)、③葉や花の老化関連遺伝子)の発現解析を行い野生種の花弁と比較する。 「Ⅱ.緑化したガク化花弁における光合成測定」では、ガク化花弁における安定した光合成測定方法を確立し、光強度や生育、気温に対する光合成速度の変動等から、光合成特性を詳細に解析する。また、葉身と光合成能力を有するガク化花弁への炭素安定同位体(13C)の供与により、花弁やガクから他器官への光合成産物の転流や呼吸による消費を解析する方法を検討する。同化産物の転流が確認できれば、花弁およびガクのソースあるいはシンクとしての機能を評価する。 「Ⅲ.老化ホルモン;エチレンと環境条件の影響評価」では、切り枝および鉢植えを供試し、エチレンおよびエチレン阻害剤、また光条件がガク化花弁の花色変化や日持ちに及ぼす影響を評価する。また、全国各地域での試験栽培個体を用いて、気象条件や施肥条件等の環境要因が新品種系統の生育やガク化花弁の変化に及ぼす影響を評価する。 上記各課題の研究成果から、ガク化花弁の花色変化と持続性との関係性を検討し、花弁緑化をコントロールする栽培技術開発を目指す。
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