研究課題/領域番号 |
23K05227
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39030:園芸科学関連
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
後藤 文之 佐賀大学, 農学部附属アグリ創生教育研究センター, 教授 (20371510)
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研究分担者 |
西田 翔 佐賀大学, 農学部, 准教授 (40647781)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 有機 / 養液栽培 / 畜産系廃棄物 / 菌叢解析 / 硝化 |
研究開始時の研究の概要 |
養液栽培は、施設園芸の有力な技術の一つであるが、今日の肥料価格の高騰、肥料製造時の温室効果ガス排出問題の表出等により、化学合成ではない新たな肥料源の開発が求められている。これまでに新たな肥料源として有機物を活用した有機養液栽培が提案されているが、本格的な普及には至っていない。その原因として、栽培者にとって、微生物による有機物の分解過程の煩雑さや養液維持の難しさがあると考えられる。本研究では、この問題を解決すべく、畜産系廃棄物を主な肥料源とした有機養液栽培において、①安定した液肥原体の作成法を明らかにし、②液肥原体の保存安定性を評価し、③植物栽培中の有機物の定期添加の最適な方法を解明していく。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、畜産系廃棄物(フェザー、骨粉、鶏糞など)を対象として、有機養液栽培のスタート段階である液肥原液が植物の成長にとって最適となるように、その組成を解明するとともに、その後の栽培を効率的に行う技術を開発することである。具体的な本研究の到達目標は、①有機物の分解行程中の微生物の制御を確実に行うようにするとともに最終産物である硝酸等の肥料成分を蓄積できるようにすること、②作成できた液肥原液を長期保存できること、③さらに植物栽培時に有機物の定期添加を行うが、その際の最適な添加量を植物の生長解析を基にして判断できるようなスキームを確立すること、である。 2023年度は、 畜産系廃棄物は、原料の組み合わせによって様々な肥料組成を構築できることから、養液栽培で最も栽培されているレタスを対象として、レタスの成長に適した肥料の組み合わせの特定を目指した。その結果、畜産系廃棄物のみでは、主要成分である、P、K、N、Ca、Mgの最適割合を保つことが難しいことが分かったため、植物性の廃棄物である、米ぬか、わら灰、油かす等組み合わせることにより、最適化を試みた。その結果、骨粉と綿花油粕を混合培養し、わら灰をpH調整剤として活用することによって、レタスの培養に適している1/2濃度の園芸試験場処方(以下、1/2園試処方)培養液とほぼ同等の組成を持つ液肥原液を作成できることが分かった。一方、 FeやZnなどの微量成分は、ICP解析の結果、液肥原液中には微量しか含まれていないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、栽培に適した液肥原液の作成を目的として、①硝酸イオン濃度を指標として、液肥原液に用いる肥料源の選定、②培養液の至適pHの検討、③栽培に適した液肥原液組成の構築、④栽培時の液肥原液の希釈率の決定、を目標とした。 ①:予備実験により、畜産系廃棄物だけでは、植物栽培に最適な養分組成を構築できないことが判明したことから、畜産系廃棄物に加え、植物性廃棄物である、菜種油粕、米ぬか、わら灰、綿花油粕も検討した。その結果、培養後の硝酸イオン濃度や硝化速度から骨粉や菜種油粕など5種類の廃棄物が肥料源として適していることが分かった。②:①で有望であった、骨粉、菜種油粕、鶏糞を用いて培養を行った。その結果、鶏糞試験区ではスムーズに硝化が進んでいた。しかし骨粉と菜種油粕の試験区では①の実験結果の2倍以上の亜硝酸イオンが検出されたにも関わらず、硝酸イオン濃度は低い結果となった。その原因として、アンモニアから亜硝酸への移行する際のpHの急激な変化が硝化速度に負の影響を及ぼしていると考えられた。そこで、骨粉試験区においてpH=7.5以上に保ち培養したところ、高い硝酸イオンが検出された。③:植物栽培に適する養分組成の液肥原液を作成するため、綿花油かすと骨粉を混合培養し、pH調整にわら灰を使用した。その結果、微量成分以外では1/2園試処方とほぼ同等程度の肥料成分が含まれることが確認された。④:植物の栽培に適する濃度にするためにはどの程度の希釈が必要かを調べるために、③の組成で培養した液肥原液を用いて、培養液濃度が0.5、5、10、50 %となるよう希釈し培養を行った。その結果、希釈率5 %以上で培養液中の硝酸イオン濃度が1/2園試処方培養液と同程度となった。 以上から、骨粉と綿花油粕を用いて一定の割合・添加方法で培養することで、1/2園試処方と同程度の成分を含む液肥原液を作成できることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、 最初に、液肥原液中の微量要素不足の問題を解決するために、Feなどの微量要素を含む廃棄物の探索を進める。一方、2023年度に1/2園試処方培養液と同程度の成分を含むことが確認された液肥原液の有用性を明らかにするために、市販の微量要素肥料を添加した液肥原液を用いてレタス栽培を行い、無機肥料で養液栽培したレタスと比較することによって、生育量や葉数などの形態的特徴を明らかにするとともに、ビタミンCや糖などの栄養素について検討していく。 また、液肥原液を保存する際に、どの程度の期間であれば、内容物を変化させずに安定的に保管できるのかを明らかにしていく。具体的には、種々の条件下で内容物(イオン濃度)の変化を調査するとともに、菌叢の経時変化をアンプリコンシークエンス解析によって調べる。さらに、保存した液肥原液を実際に栽培に供試し、どのくらいの保存期間であれば問題なく使用できるのかを把握する。
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